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Home > 識者に聞く > Tuvalu Overview代表 遠藤 秀一

 この日は日陰でも34度はある猛暑日。真っ白な砂の照り返しを受けながら行う植林事業は、とにかく暑い。約1時間をかけて600本の植林を終えた頃には、全員が汗びっしょりだ。
「10年後には立派に育って、砂をがっちりつかむ大きな木になって欲しいね」「来年どのくらい大きくなったか見に来ようかな」
 自らの手で植えたマングローブの未来の姿に思いを馳せる。
 植林を終えるとフナファーラ村の人々が一生懸命つくってくれたお昼ご飯が振る舞われた。ツバル人の食事によるもてなしは本当に素晴らしい。自給自足で椰子の殻や皮だけを燃料にしてつくったとは思えないほど、豊かな食事が目の前にドーンと運ばれてきた。ロブスターを筆頭にした魚介類、ブレッドフルーツやタロイモなど、どれを食べても日本人の口に良くあう料理だ。
 Tuvalu Overviewのスタッフから、お米と小麦粉以外は全部この島で獲れたもの、という説明を受けながら、自然の豊かさとその自然を巧みに使いこなすツバル人の伝統的な自給自足の技に改めて感心をする。日本での自分たちの生活を振り返えらざるを得ない。山も土地もあるのに、日本の自給率はなぜ低いのだろうか? ツバルの自給自足の暮らしと私たちの化石燃料に依存した暮らし。いったいどちらが豊かなのだろうか? どちらが幸せなのだろうか?
 ツバルのおばちゃんと目があうと「カイ マロシ(沢山お食べなさい)」と満面の笑みを浮かべてくれる。食事を準備してくれた島の人々は、ツバル料理にがっつく日本人の様子を嬉しそうに眺めていた。


海岸浸食が進む島

 昼食後、それぞれに休憩を取った後はボートに戻り、次の目的地バサフア島に向かった。この島は次に消えてしまうかもしれないと心配されている海岸浸食被害のシンボルのような存在の島だ。
 島の周囲は澄み切った海の中に無数の珊瑚の森が広がる。だが、目の前にちょこんと残されたバサフア島は、椰子の木が両手で数えられるほどしか生えていない。その上、島の手前のラグーン側は大きく浸食され、数本の若い椰子の木が今にも流されそうになるほど傾き、その葉を波が洗っている。
 島の人たちはあと数十年でなくなってしまうだろうという。フナフチ環礁は、バサフア島などの小さな島々が輪形に並んで、環礁になっている。一つひとつが海岸浸食で失われてしまうと、最後には環礁が、そして国がなくなってしまう可能性もあるのだ。沈むよりも早く、浸食によってなくなってしまうかもしれないのだ。