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Home > 識者に聞く > Tuvalu Overview代表 遠藤 秀一

10年で海岸線が20mも水没した島

 次に向かったのは、テプカ島。ここではシュノーケリングなどをして思い思いに穏やかなラグーンを楽しむことができた。海の中は枝を広げた枝珊瑚が広がり、色とりどりの魚で溢れている。しかし、テプカを出発するときに、シュノーケリングをした反対側の海岸線をボートで横切るとこの島の別な顔を知ることになる。
 テプカ島も大規模な被害を受けていた。テプカ島は、ここ10年で20mも海岸線が短くなっていたのだ。海の中の溢れんばかりの珊瑚を見たあとだけに、浸食で破壊されたとは思えない。やはり、これは海面上昇の被害なのだ。だれもが複雑な思いで帰路についた。
 

ゴミで埋まった島の先端

 3日目はフォンガファレ島を北から南まで見学した。参加者たちはスクールバスに乗って、一路島の北端を目指す。目指すといっても南北15㎞もない小さな島。程なくして到着した北端は驚くばかりのゴミの山だった。海面上昇による塩害で主食のタロイモが栽培できなくなったことや、首都の島に人口が集中して自給自足が成り立たなくなったことで、首都の島に住む人々は消費社会に急激に侵されていた。輸入食料品が増え、缶、瓶、ペットボトル、プラスティックやビニールなど自然に戻らないゴミが増え、島の端っこのゴミ捨て場は悲惨な状態になっていた。スタッフの説明では、山積みになっているゴミの総量は東京のとある区が一日に出す量程度しかないという。その説明を聞いてまた驚かされた。
 私たち日本人は、毎日大量にゴミを廃棄しながら生きているのだ……ツバルに来ると本当にいろいろなことに気づかされる。

 その後、日本のODAによる援助でできたばかりの小型の港湾施設、病院、発電所、脱塩装置などを見ながら宿泊場所に戻る。
 夜はツバル人のお宅で夕食をいただけるということで、楽しみにして集まった参加者たちだが、土に穴を掘ってつくるローカルオーブンを開いたときに、一同ギョッとしてしまった。オーブンの中には見覚えのある大きさの子豚が良い色に焼けて横たわっていた。これはさっき滑走路脇の豚小屋で殺された子豚だな……その子豚が食卓に運ばれ、デンと真ん中におかれたとき、参加者たちは手をあわせ、心からの「いただきます」をつぶやいた。
 翌日は教会のミサを見学したり、釣りのオプショナルツアーに参加したり、そのほかにも工夫を凝らしたワークショップなどが準備されていた。楽しくも刺激的な5泊6日の滞在はあっという間に終わりを迎えた。