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世界各地でのCSRにかかわるさまざまな動きを紹介します。
CSRフラッシュ Vol. 3 (2009年6月)


CSRの分野で先行するアジア
ある豪州企業が新たに発表した報告書によれば、企業の社会的責任の分野でアジアが率先して主導権を握り始めているという。5月25日にライフワース・コンサルティング社(Lifeworth Consulting)が発行した「責任ある企業の分野で東洋にめぐってきた順番:企業責任の年次レビュー(The Eastern Turn in Responsible Enterprise: A Yearly Review of Corporate Responsibility)」は、 CSRのトレンドについてまとめられた8冊目となる年次グローバルレビューである。同レビューの執筆者たちは、世界的な金融危機によって中東、アジア、そしてアジア太平洋(オーストラリアとニュージランドを除く)へと力関係が移行しており、さらにこれと平行してこれらの地域では社会的アントレプレナーシップ(起業家精神)がパワーシフトに対応する形で台頭してきていると主張している。

この報告書では、「アジアは環境管理システムとサステナビリティレポート(持続可能性報告書)の分野でリーダーとなりつつある・・・そして、責任ある企業と金融をテーマとするジャーナリストたちの間でもアジアに対する学究的な関心が高まっている」と述べられている。さらに、こうしたアジアの台頭がどのような政策的意味合いをもたらし、アジアが重要な議題として今後どの程度浮上してくるかについても考察を加えている。そして、報告書は「アジア各国の企業の責任ある企業に対する多様な考え方は、世界中の商慣行に次第に影響を及ぼすようになるだろう」と結論づけている。


シェル社(Shell)がサロ=ウィワ裁判で和解金の支払いに応じる
大企業による人権侵害の申し立てをめぐる世界でも最も長期に及んだ訴訟事件の一つが終結した。著名なナイジェリア人作家、詩人、そして活動家であったケン・サロ=ウィワの絞首刑にかかわったとする巨大石油会社のロイヤル・ダッチ・シェル社(Royal Dutch Shell)に対する訴訟は、6月8日にニューヨークで和解による解決に至った。シェル社はサロ=ウィワの口を封じるために前ナイジェリア政権の支援を求め、虐待に参加した兵士たちに報酬を支払ったと原告側は主張していた。

しかしながら、シェル社は1,550万米ドルの和解金の支払は、同社が過ちを認めたことを意味するものではないとしている。マルコム・ブラインディッド(Malcolm Brinded)採掘・生産担当エグゼクティブディレクターは「シェルは一貫してこの申し立てが虚偽であるという姿勢をとってきました」と述べている。「シェルは今回発生した暴力的な事件に一切関与していませんが、オゴニランドで起こった悲劇的な事件の展開をかんがみて、(シェル社と原告団の間の)信頼醸成のための資金、そして原告団と彼らが代表する土地に対する温情ある支払いのための資金として和解金を支払うことを決定致しました」というのが同社の見解である。


慈善団体は合併によりさらに役立つ存在に
英国のニュー・フィランソロピー・キャピタル(New Philanthropy Capital:NPC)・グループが実施した調査では、いくつかの慈善団体が同様の志をもつ他の慈善団体と合併した場合、その恩恵を受ける人々がより多くの成果を獲得し得る可能性があることが示唆された。支援の対象であるコミュニティにとって、お役所仕事の重複による損失を削減することのほうが、追加寄付金を受けるよりも多くの価値を生む可能性があるという。「合併が最終的には慈善団体の段階的縮小を招くとしても、それが慈善団体の公益目的をより効果的に果たすための方法であるかを検討することは受託者の役割の一つであるはずだ」と報告書は論じている。ただし、この調査では景気低迷を受けて合併を検討している英国の慈善団体は全体のわずか3%に過ぎないことも明らかになっており、合併に向けた道程は厳しいといえる。

フォード社(Ford)の環境にやさしいポリウレタンフォーム素材で運転手、同乗者、そして会社も快適に
フォード社は、同社が製造する自動車をより環境に配慮したサステイナビリティの高いものにする新技術を発表した――しかも意外なことにこの技術は燃費とはまったく関係がない。フォード社の研究者たちは、車両の座席クッション、シートバック、肘掛け、そしてヘッドレストに大豆を原料とするポリウレタンフォームを利用するというこの画期的な発明の特許を申請中である。フォード社の研究者たちは、標準的な石油を原料とするポリオールの40%を大豆由来の原料と置き換える化学的手法を考案したとしている。

同社の2010年モデルには、さまざまな度合いのポスト工業系糸、ペットボトルを原料とするスエードのような素材、クロムを含有しないレザー、そして人工黒檀といった原料を使った座席ファブリックを備えた新車が登場している。


モーリシャスがCSR関連の支出を義務づけ
6月2日、アフリカの島国であるモーリシャスは2009年予算の目標を「貧困撲滅」とすることを決定した。モーリシャスの総理府によれば、グローバル危機の影響に歯止めをかけるため、社会的プログラムに4,700万米ドルが計上されている。またこれは世界初の試みに違いないが、同府は「すべての黒字企業はその利益の2%を政府が承認するCSR活動に費やすか、もしくは 同額を貧困との闘いに利用される資金に振り替えることを義務づける」と宣言している。


GEがグリーンな利益を獲得
米国の大手総合電機メーカー、ゼネラルエレクトリック社(General Electric)の最新の「エコマジネーション(Ecomagination)」レポートでは、一連の省エネ製品が牽引役となり、同社の2008年の収益が前年比21%増の170億米ドルとなったことが発表された。2005年には17種類であったエコマジネーション製品は現在では80種類を超え、同社のより環境に優しい技術への投資は2005年の7.5億米ドルから2008年には14億米ドル超にまで増加している。