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●猛烈な反対を押し切った日本への進出

スピーディーに変わる韓国内のIT環境に適切に対応し、「ネモコマース」社を韓国のトップ企業にまで押し上げた技術ノウハウは充分にグローバル市場に通用する、その自信から、日本市場への参入を決定した同社だが、しかし当初は日本進出に対して社員たちの猛烈な反対があった。

反対派の理由は、マーケット・シェアのトップの座にある同社の事業には韓国内で需要が高く、まだまだ成長が期待される一方で、日本進出は未知の世界であり、不安が大きいことだった。

熾烈な論争が生じた2009年3月の役員会で、丁淳岩社長は日本進出の必要性を強く訴えて、役員を懸命に説得した。なぜグローバルな市場に向けたサービスを準備しなければいけないのか、今でなければ競合に立ち遅れてしまうなど、多角的に議論を積み重ねた。

特に丁社長が強く主張したのは「すでにIT業界における大企業、中小企業等の垣根はなくなっている。ダイナミックに変化する事業環境において、一つの方向性のみならず海外に進出することで多角的に自分たちのビジネスモデルが正しいかどうかを検証しなければならない。そこから得られたノウハウによって新たなビジネスチャンスを広げることができる」ことだった。

役員の同意を得た後、丁社長は全社員を集めて日本進出への意義を伝えた。
まだ日本ではインターネットショッピングモールの連動ソリューションがビジネスモデルとしてしっかり定着していないこと、今のタイミングを逃すと二度と日本市場の攻略は難しいことを強く主張した。

社内は、日本進出に積極的なグループと、時期尚早と反対する消極的グループに分かれて毎日のように熱い論争が繰り広げられた。丁社長は、両グループを行き来しながらビジネスモデルとサービスの方式について韓国と日本との相違点を説明しつつ、必ず成功できると説いてまわった。 このように日本進出に消極的な社員たちを社長自らが説得し、最終的には全社員からの共感が得られたのである。

全社員が「何が何でも日本へ進出する」という目標を共有した後は、日本のインターネットショッピングモールに詳しい専門家を招いて研究会を開くほか、日本でのサービスを進める方法やスタートに伴う問題点について社員全員が徹底的に分析、研究することとなった。


●日・韓のIT環境の違いを乗り越えて日本向けサービス「EC店長」をスタート

2010年7月から日本でスタートする同社のショッピングモール連動ソリューションは、日本国内向けブランド名を「EC店長」(www.ec-tencho.jp)として、イデアキューブ株式会社(株式会社ネクシズの子会社)との提携を通じて展開している。

「EC店長」は国内の楽天、ヤフーショッピングなどのショッピングモールを分析し、ASP方式(注5)で提供される。商品販売者はショッピングモールに投入する人員、時間などを効率的に節減でき、競争力を上げる大きなチャンスになることが予想される。

(注5)ASP(Application Service Provider,アプリケーションサービスおよび提供する側): ソフトウェア基盤のサービス及びソリューションを中央データセンターから通信網を通して顧客に配布し、管理するサービス及び事業主のこと。


韓国内ショッピングモールの連動ソリューションである
ショップリンカーの日本ブランドは「EC店長」
(www.ec-tencho.jp


なぜ、日本には類似のソリューションサービスがないのだろうか。
ショップリンカーの大きな特徴は、通常ネットショップを管理する販売管理者が行う多くの作業―――各モールの商品登録、情報修正、注文情報取込、注文処理、仕入先管理、CS/返品処理、在庫管理、宅配伝票管理、API連動ーーーを全てワンクリックで解決できる点にある。 しかし、現在のところ日本で同様のサービスをトータル方式で提供する類似サービスの例はほとんどなく、機能の一部を提供しているケースが多い。ネットを運営する販売者にとっては、一部ずつのサービスを複数の企業に依頼するため、追加費用がかかり、また管理も煩雑となる。 このように日本企業が提供するサービスに比べて、ネモコマース社のサービスはより高品質であり、利用しやすい価格であれば、十分競争力で優位に立てるはずである。

しかしながら、実際に日本でサービスを展開しようとした同社は、韓国でのシステムがそのまま適用できず、繰り返し事前テストを行うことを余儀なくされた。理由は、オープンマーケットである韓国では単一の機能で通用したソリューションが、クローズドマーケットである日本では、楽天、ヤフーなどそれぞれのシステムが異なり、簡単には適用できなかったからである。

このように韓国と日本ではサービスを提供する環境が大きく異なるため、同社は試行錯誤を重ね、1年半という準備期間を費やし、2010年7月から本格的に日本国内向けのサービスをスタートしている。

日本でEC店長がスタートし成功を収めれば今度は中国とアメリカへの進出を予定している。ショップリンカーのソリューションは各国の環境に合うようにカストマイジングが可能であるため、それぞれの国のe-コマースマーケットに合わせたサービスが提供できると予想している。