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韓国現地レポート
〜小さなグローバル企業。韓国中小企業の強さの秘密とは〜
第3回 番外編:高校生CEOを育成する「ソンイルe-ビジネス高校」
取材・原稿:申 美花(シン ミファ)氏


前回、連動ソリューションビジネスで韓国市場シェアNO.1企業を紹介したが、今回は企業ではなく、IT立国韓国ならではのe-ビジネスを専門に教える高校を紹介したい。
e-ビジネス専門高校というと「効率主義」の学校に聞こえるが、そこには、愛情に飢えた子どもたちを助けたいという校長の熱い思いがあった。



e-ビジネス高校の設立背景について熱く語る
洪炳勳(ホン・ビョンフン)校長

左から、学生CEOの李珉英さん、筆者、南亨周さん

貧しい家庭の高校生に光を!

現在、韓国にはe-ビジネス高校が7校もある。その中でも高校生CEOを11人も抱えている、今最も脚光を浴びているソンイルe-ビジネス高校を今回は訪問した。

以前はソンイル女子商業高校だったソンイルe-ビジネス高校は全高生徒744名中48%が低所得者層の家庭の出身で、国から生活費の一部支援を受けている。また305名が片親の家庭か、家庭の事情で施設から通って来る学生で、そうした生徒たちには給食が無料で提供されている。

洪炳勳(ホン・ビョンフン)校長室には大きな飴箱がある。誰でも入れるようにドアを開けっ放しにした校長室には、しょっちゅう学生たちが訪ね、飴をもらいながら、いろいろな悩みを校長先生に打ち明ける。

「我が家は一部屋6人暮らしでいつも親が喧嘩しているので早く帰りたくありません」
「家に帰っても父はいないし母は働きに行って夜も遅く、一人で寂しいのであまり家に帰りたくありません。図書館で遅くまで勉強できるようにしてください」

多くの学生との会話を通じて、校長は、「彼女たちが家族から愛されていない」現実に大きなショックを受けた。経済的に貧しい家庭のせいで、彼女たちの心がズタズタに傷つけられている。

「どうすれば学生たちが幸せになれるのか。学生たちに喜んでもらえるのか」と 悩んだ校長は、まず毎朝7時から学校の校門に立って一人ひとりの名前を呼びながら学生たちに挨拶した。その行動に最初はびっくりして戸惑う学生もいたが、徐々に“自分が愛されている”ことを感じ、笑顔で近づいてくるようになったという。

「こんなに可愛い子どもたちが何とか経済的に早く自立できる道はないのか」と校長は必死に考えた。そして「一人創造企業家の育成」の近道は、e-ビジネス高校になることだと考えたのである。そこで2007年に同校を国が定める「特性化高校」として申請し、2008年にはソウル市から「特性化高校」に指定された。


プロを育成するカリキュラム

最初に校長は先生たちを集め、e-ビジネス高校になるために「とにかく教師が変わらなければならない」と強く訴えた。当然のことながら、どの教師もe-ビジネスに精通しているわけがない。まずは外部の専門家のコンサルティングを受けながら、一緒にカリキュラム作りを始めた。

今まで教えた科目が突然なくなり、全く新しい教育--- e-ビジネス---を始めるにも、まずは自分自身が学ばないことには学生たちを指導できない。教師たちは戸惑いながらも、各種のe-ビジネス研修に参加し、専門家から徹底的に勉強した。
毎日、夜の10時ぐらいまで教師全員が教材づくりに奮闘し、徐々に「e-ビジネスの教師」としての準備を進めていった。
当然、他の高校よりも何倍も苦労が多いことに、不満を口にする教師たちもいた。 そうした教師たちに向けて、洪校長は「教師が変わらないと学生も絶対変わらない!」と熱く説得したのだった。


ソンイルe-ビジネス高校は、入学すると3つの学科から好きな科を選んで、そこに所属しながら3年間勉強する。各学科のテーマは以下のとおりだ。