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Be the CEO Project (全校生徒社長づくりプロジェクト)

年2回、夏休みと冬休みに全校生徒を対象に実施する大変ユニークなプロジェクトがある。未来のCEO(最高経営責任者=社長)を発掘する「全校生徒社長づくり」プロジェクトだ。1-2年生全員が参加して4〜6名ずつのチームを作り、各チーム1名の担当教師が指導する。学生たちは事業計画書を作成し、実際に品物の仕入れから販売まですべてのプロセスを体験する。それによって、学生の実務能力を向上させながら、実際のe-ビジネスにおけるCEOとしての素養を育てるプログラムである。

チーム毎に自分達が「何を売って利益を出すか」と知恵を絞る。オンライン上でもオフライン上でも販売はできる。あるチームは、可愛い植木鉢を卸業者から大量に購入し、街中で自分たちの店の名前を大きく掲げた「手作り屋台」で販売する。学校前の屋台でトッポッキという韓国の伝統料理を作って販売するケースもある。

売るアイテムが決まったら、購買・マーケティング・販売まで自分たちが行い、最終的に収支決算を行い、損益を算出する。その結果を休み明けに全校生徒の前でプレゼンテーションし、校長から選ばれた優秀なチームには、賞金として金賞50万ウォン(約4万円)、銀賞10万ウォン(約8千円)、銅賞5万ウォン(約4千円)が与えられる。

夏休みに開催された第1回の「全校生徒社長づくり」プロジェクトには524名が参加し、売上6,913,000ウォン(約530,000円)、利益2,367,000ウォン(約180,000円)であった。
第2回の冬休みのコンテストには174名が参加し、売上5,530,000ウォン(約420,000円)、利益1,804,386円(約130,000円)の実績を上げている。

このイベントは、かなり盛り上がるらしい。
どのようなお店を作ればよいのか、最初のうち学生だけではなかなかアイデアが浮かばず、先生にアイデアを求めたりするが、あくまで自分たちが議論してチームで最終的な結論を出さなければならない。
洪校長も、第1回のプレゼンテーションを実際に行うまではどうなるか心配したが、あまりにも立派な出来にびっくりしたという。
最初は不安そうだった学生たちも、実際に全校生徒の前でプレゼンするまでの経験を通じて自信を持ち、その後、実際にショッピングモールに自分の店を作る学生も多い。

洪校長が全校生徒に配っているダイアリーを見せてくれた。
毎日学生たちが書くものだが、まず「本日の目標」、そして、「今日やるべき優先事項」を書く。「今日の時間管理」には、何と朝4時から夜12時まで時間ごとの行動を記すようになっている。さらには「本日よくできた点と改善点」、最後に「今日のお金の出納」まで記入しなければならない。これらを全部生徒一人一人が毎日記載しないとならないのだ。


ベンチマーキングするところが後を絶たない

現在、ソンイルe-ビジネス高校の噂を聞いて、全国の高校がカリキュラムなどを応用したいと、洪校長のもとを訪れる。私がインタビューした日の午後にも、地方の高校の校長がソンイルe-ビジネス高校の学校運営方針についてベンチマーキング(優れた実践例を学ぶ)したいと予約が入っていた。

来校する他校に求められるたびに、洪校長はカリキュラムなどの資料を無償で渡してしまう。
同校の先生たちからは「この資料は私たちのノウハウです。資料をそのまま渡したら、すぐ他校に追いつかれてしまう。あげない方が良いのでは?」と良く言われるらしい。
しかし、そのたびに洪校長は答える。「私たちのカリキュラムや運営の仕方を学びたい人たちには、教えればよい。そうしなければ、逆に私たちは水たまりのように腐ってしまう。先駆者は常に新しいものを創造し、自ら変化しなければ滅びてしまう」と。

ある時、思いもよらないことがあった。
2009年11月に南アフリカのPietermaritzburg市長と市の校長の団体20名がソンイルe-ビジネス高校を訪れたのだ。e-ビジネス高校のカリキュラムを知った市長が、南アフリカの貧しい子供たちが自立する道はこれしかないと判断し、Pietermaritzburg市内の校長らと一緒に韓国を訪問し、学生たちとも交流を深めた。実際に、学生CEOたちと面談した市長は大変感激し、南アフリカに戻ったら子供たちの自立のために力を注ぎたいので、ぜひ協力してほしいと洪校長と固く握手を交わしたそうだ。



南アフリカPietermaritzburg市長(マンデラ大統領の孫)とソンイルe-ビジネス高校の学生たち