月商売上70万ウォン、 将来の夢は会社経営! 2. 苦労の連続から新たな希望へ
<実践で学びながら運営>
<CS(顧客満足度向上)の難しさ> 難しいのは、お客様から電話などで問い合わせがあった場合だ。まだ学生で声が幼く感じるせいか、顧客から軽視されるケースもままある。そういうお客様にはクーポンを付けてメールを送り、再購入してくれた際に、おまけのプレゼントを同封して喜んでいただく。 ショッピングモールを運営するのに最も難しい点は?と聞くと「時間不足」「寝不足」との答えが返ってきた。他の学生と比べて、学校の勉強とネットショップ運営という「二足のわらじ」なので、いつも時間が足りない。寝る時間を削るしかないので、毎日寝不足だ。それでも売り上げが伸び、お客様とのやりとりが楽しいと時間が経つのをすぐ忘れ、夜遅くまで仕事をするのが日常となっている。
最初はネットの写真もキレイではなく、運営も下手だったので、月刊売上が10万ウォン(約8千円)ぐらいだったが、現在は1カ月で70万ウォン(約5万円)ぐらい。今年の売上目標は1000万ウォン(約80万円)である。 |
インタビューの最後に洪校長は、一昨年自殺し国民たちに大きな衝撃を与えた韓国のトップ女優チェ・ジンシルが実は校長の教え子であったことを話してくれた。当時、校長は体育教師で、普通の高校生だったチェさんは放課後よく洪先生のところに来て「先生、早くバレーボールしよう!」とせがんだそうだ。とても可愛らしい生徒だったが、当時は今のように熱血先生ではなかった洪先生とチェさんは単に普通の教師と生徒として接していただけだった。
ところがある時、 「普通の教師から普通の校長になっていた」洪校長に転機が訪れた。
偶然ディズニーランド創始者であるウォルト・ディズニーの記事を読んだのだ。
ディズニーランドを訪れる多くのアミューズメントパーク関係者に、ウォルト・ディズニーは求められるままに、参考資料をどんどん与えていたという。
ディズニー関係者が「重要情報をどんどん分け与えていたら、すぐに真似されて、結局ディズニー固有のノウハウがなくなって、顧客を奪われてしまいますよ」というと、ウォルト・ディズニーは、こう言ったと書かれていた。
「彼らにすべての資料を与えても唯一真似できないものがあるのさ」
「それはね。子供を愛する心だよ!」
このやり取りを読んだ洪校長は大きなショックを受けて、深く自分に問いただした。
「自分の周囲には貧しい学生が沢山いる。心に傷を負った子供たちも沢山いる。自分は教師として彼らを本当に愛する心を持っているのか?」と。
その瞬間から洪校長は180度変わった。 学生の目線で、学生が自立する道を模索し、今日のソンイルe-ビジネス高校を作り上げたのだった。
「今ならチェ・ジンジルにもっと深い愛情で接することができる。当時の私は義務として教えるだけで、愛がなかったんですよ!」と洪校長は悔やむ。その後悔から彼女の葬儀に出席できなかったと、話す校長の目は潤んでいた。
「実は私も彼女の大ファンです!」と言いたかったが、言うと私の目からも涙がこぼれ落ちそうでその言葉を飲みこんでしまった。
取材を終えて、校庭を見て回った時、可愛い笑い声でグラウンドを走っている20数年前の彼女の姿が浮かんできた。私は高い空を見上げながら心の中でそっとつぶやいた。
「チェ・ジンシルさん、あなたを心から愛せなかった校長が、今あなたの後輩たちに愛情をたっぷり注ぎ、彼女たちが自立できるように立派に育てていますよ!これから校長の愛で育まれたあなたの後輩たちが世界に羽ばたいていく姿を見守ってくださいね」と。
申 美花(シン ミファ)氏 1986年文科省奨学生として来日。慶應義塾大学商学博士。立正大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科非常勤講師などを兼任。著書は共著として『Live from Seoul』、『日本企業の経営革新―事業再構築のマネジメント』など。日本と韓国企業における経営全般でのコンサルティング事業にも長年の経験を有する。現在、SBI大学院大学准教授。 Email: |