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司会 続いて芦田さんに報告をお願いします。芦田さんは東京都の中にあって、長年路上生活者の支援対策に取り組んできました。第一線の動きを熟知しています。

 

実態に合わない国の基準

芦田真吾

(東京都福祉保健局障害者施策推進部長)
ホームレスの定義は、法律では「公園や河川等で日常生活を営んでいる者」という限定的な書き方がされています。ホームレス支援の現場では、この定義はあまり意味をなしません。東京都はホームレス対策の法律ができる以前からホームレス対策に取り組んできました。住居がないということであればホームレス対策の対象としてきました。ホームレスの実態をつかむため94年から毎年2回調査しています。これまで一番多かったのは98年の5,800人でした。2004年ごろから減少が続いていましたが、2008年は2,300人と約半分ほどになりました。このほか多摩川の河川敷など国が管理している地域も加えますと、3,428人となっています。全国では15,759人といわれています。そのうち、東京都と大阪府で全体のほぼ半数を占めています。

ホームレス問題というのは極めて都市に特化した問題です。5年ごとにホームレスの皆さんの面接なども行っていますが、長期化が進んでいます。年齢層も平均が58.9歳と高齢化が進行しています。緊急一時保護センター入所時の年齢構成を2007年と2009年度で比較しますと、60歳以上が25%→19%なのに対し、49歳以下が33%→44%となっています。若年層の増加がリーマンショック以降の特徴といえます。

地域社会との軋轢の中で

現在、雇い止めなどで職を失った若年の非正規雇用の労働者がホームレス対策の対象になってきています。東京都の場合、公園や河川などに住むホームレスは本人自身が問題を抱えているのと、地域社会との軋轢が随所に生じています。ホームレスを見る都民の目は厳しさを増しています。批判がわれわれに寄せられるケースも少なくありません。

○東京都の対策の経過
  • 94年から対策をスタート
  • 95年に最初の調査(国は2003年)
  • 98年2月に新宿西口広場のテント村が火災にあうという事件がありました。400人ほどのホームレスが住んでいましたが、4人が焼け死ぬという結果になりました。そのような痛ましい事件の後で対策が打たれるようになりました。
○ホームレス対策の予算
  • 現在 東京で27億円 国で31億円
    民主党の子ども手当ての1/1000にすぎません。

制度上は、地方自治体が行った対策の50%は国が補助するというルールになっていますが、東京都に国が補助しているのは20%ほどです。国の補助基準が現場の状況に合っていないので、このように状況になっています。これについては国に改善の要望を行っていますが、一向に改善されていません。
>>日仏ホームレス対策最前線[2]に続く

※このレポートは2009年10月20日に東京・上智大学で開かれたシンポジウムを要約して報告しています。文責はCSRマガジン編集部にあります。