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『サハラを走る。~7日間、245日キロ!サバイバルマラソンへの挑戦。』

著者/ 赤坂 剛史 (アトリエ・レトリック 本体1,400円+税)

7日間、245キロ、55時間12分13秒、平均時速4.44キロの挑戦。

アドベンチャーロングトレイルレース、通称ウルトラマラソンを知っているだろうか?フルマラソンの42,195kmに対して、海外では250kmレベルの長距離を約1週間かけて1日ごとのステージを設けて挑戦するレースが開催されており、サハリ、アカタマ、ゴビの三大砂漠レース、そして南極マラソンなどが有名だ。本書は、“極地ランナー”として知られる赤坂剛史氏が、初めて “ウルトラマラソン”を体験した2008年3月のサハリ(砂漠)マラソン7日間の挑戦を振り返ったものだ。

参加者801名(うち日本人参加者は10名)が全245キロを、1日目は31.6キロ、2日目は38キロと1日のゴールを重ねて7日間で踏破する、そう聞くと、まずは“過酷なレース”、“自分との戦い”というフレーズが頭に浮かぶ。事実、著者は早くも2日目に靴擦れで両足裏の皮が全てはがれて激痛に襲われる。また、1日の走行距離が最長の40キロとなる3日目には、脱水症状で生まれて初めて「死」を意識し、パニック状態になりながら無我夢中で砂漠を進む。

しかし、過酷なレースを通じて赤坂氏の心に浮かぶのは、大手橋梁メーカーに勤める“サラリーマンランナー”の自分が目の前の広大なサハリ砂漠に到達するまでの道のり、家族、仲間、会社の同僚、大会スタッフへの感謝だ。そして、著者はレースの目的が競争や順位ではないことにも気づき始める。
「砂漠は必ずしも絶望的な環境ではない。….諦めさえしなければ人は必ずゴールに辿り着けるのだ。順位など関係ない。完走することが重要なのだ。」と。

  赤坂剛史さん

仲間たちが気づかせてくれた、「走ることは人生と同じ」。

本書では、著者が体験するサバイバルマラソンの具体的な様子とともに、レースを通じて知り合った人々と絆が生まれる過程も魅力的だ。

著者がテントを共有する日本人の仲間たち—-ドイツ在住のエンジニアの三宅さん、ノルウエー在住の研究者の澤村さん、9ヶ月後のアースマラソンを控えて練習のために参加したタレントの間寛平さん。女性2人組の「クミちゃん」と「ノリちゃん」、視覚障害者であるフランス人のディディエ、カナダ人のフォトジャーナリストであるマーク。一般のフルマラソン等では選手は互いにタイムや順位を競うライバルとなりがちだ。しかし、サハラレースの選手たちは、満身創痍になりながら、国や人種を超えて互いに声を掛け合い、助け合いながら1日のゴールを目指す。そして、いつしか毎日、日が暮れても最終ランナーがゴールに到着するのを待ち、拍手で迎えるようになる。

特にレースのメインとなる4日目、75.5キロを2日間ノンストップで走るオーバーナイトステージで、著者はドイツ人のユーゲン言葉をきっかけに、レースの本質、そして人生の意味を改めて考えることとなる。脇目もふらずにペースを維持しようとする赤坂氏にユーゲンはこう諭す、「俺たちにはたくさんの時間があるじゃないか。…こんな雄大な景色は2度とみることができないかもしれないんだ。もっとゆっくり見ていこうぜ」。

その日、1日の最後にゴールする最高齢の日本人女性「ノリちゃん」の姿を目にした著者は、「ゴールが遅いということは、逆に心が豊かになることではないだろうか。」と思い至る、「いろいろな『走り方』があって良い、….『走る』ことは人生と同じ」なのだと。

日本初のアドベンチャーロングトレイルレース開催へ

本書のエピローグで「サハラマラソンは人生を変えるマラソンだ」と赤坂氏は述懐する。サハラマラソンを完走した後、赤坂氏は2009年にアタカママラソン、2010年にはゴビマラソンと、世界の三大砂漠250キロマラソンを完走、ついに2010年には南極マラソンを完走した。「サハラに挑戦しようと決心した当初、まさかこれほど自分が自分の人生を楽しめる人間になれるとも思っていなかった。」という赤坂氏だが、“極地ランナー”としての経験を極め、現在は、応援される側から、応援する側へと軸足を移しつつある。

2014年には自らが実行委員長となって石川県の白山麓エリアで日本初のアドベンチャーロングトレイルレース「白山ジオトレイル」(7日間、250km)を開催。主催者となればレースの参加者とは比べ物にならないエネルギーが必要だが、そこには自分自身の人生を変えるキッカケとなったレースを、一人でも多くの人に体験してほしいという思いがある。何よりも伝えたいことの一つは、著者が本書でも言う「人は苦しいことや辛いことを多く経験してこそ、楽しいことを楽しいと思えるようになるのだ。そして、そう思えるようになっていく過程で人は自分ひとりでは生きていけないことを知る」ことだろう。

本書には雄大なサハラ砂漠の自然、そして現地の人々の温かい声援と交流の様子も描かれている。厳しい世界情勢に悲観的となりがちな今、大地と人間のシンプルな力強さを再認識する意味でも本書を手に取って欲しい。


◆赤坂剛史さん講演「南極マラソンから学んだこと」 2015年2月22日(日)13:30~16:00

神戸ポートピアホテル 南館B1F「ダイヤモンドの間」(入場無料、事前申込要)
※申込みはE-mailまたはFAXで、神戸のじぎくライオンズクラブ事務局へ。
E-mail:kobenojigiku@samurai-lc.co.jp
Fax. 078-331-3083


◆日本唯一のアドベンチャーロングトレイルレース「白山ジオトレイル」を今年も開催。
[2015年8月22日(土)~28日(金)]

http://www.hakusangeotrail.com/
主催:白山ジオトレイル実行委員会/名誉顧問:片山右京/実行委員長:赤坂剛史
(ホームページから申込みが出来ます)


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