CSRフラッシュ

帰還も転居も困難な、福島自主避難者に相談を呼びかける!

「避難の協同センター」の取り組みから

福島第一原発事故で避難区域外からの避難を余儀なくされた自主避難者に対する住宅支援が2017年3月で打ち切られる。だが、避難者の多くは、福島への帰還に迷い、4月以降の住まいの確保もままならない状況が続く。原発事故避難者の支援を行う「避難の協同センター」では、避難者の困りごとの相談に対応している。

「行政は自主避難者に寄り添ってほしい」と訴える代表世話人の一人、松本徳子さん 松本さんは福島県郡山市から神奈川県に避難している

「行政は自主避難者に寄り添ってほしい」と訴える代表世話人の一人、松本徳子さん
松本さんは福島県郡山市から神奈川県に避難している

住宅無償提供の打ち切りが迫っている!
帰還か転居か、原発事故自主避難者の悩みは深い

東日本大震災と福島第一原発の事故からもうすぐ6年が経過しようとしています。東北各地の被災地で復興事業が進む一方、福島第一原発事故の収束はいまだに先が見えません。

福島第一原発事故で避難区域以外から避難を余儀なくされた自主避難者の多くは、災害救助法に基づいて「みなし仮設(借り上げ民間住宅や公営住宅など)」に入居していますが、住宅無償提供の期限が今年の3月末に迫っています。

1月10日から2月10日までの期間、福島県と避難先自治体が避難者一人ひとりに戸別訪問を行いました。その結果、まだ相当数の避難者が、4月以降どこに住むか決まっていないと答えています。

3月末で打ち切りの対象となる県外自主避難者の数は12,363世帯。単純に1家族3人で計算すると、37,000人もの方が影響を受けます。これまでの調査で接触できた世帯数のうち2回目の調査では約32.4%が「入居する住宅が確定している」と答えたものの、「ある程度(45.5%)」と「未確定(22.1%)」を含めると約67.6%が確定していない状況です。

福島県と避難先自治体の調査は夕方5時までとなっているため、約25%の避難者と接触できていません。避難者の中には、母子避難や自宅ローンを抱えたまま避難生活を続けている方も多く、生活費の確保に長時間労働などを余儀なくされている家庭が多いのも実態です。


避難者が置かれた個々の事情にもっと配慮を

2月21日に参議院議員会館で行われた「避難の協同センター」の記者会見では、都道府県で自主避難者への受入れにかなりの温度差が見られることも明らかとなりました。

参議院議員会館で行われた「避難の協同センター」の記者会見

参議院議員会館で行われた「避難の協同センター」の記者会見

北海道、山形県、京都府、愛媛県などが4月以降も公営住宅の無償提供の延長を決めたほか、民間賃貸入居者に対し半額の家賃補助を決定した沖縄県の取り組みなど一定の前進も報告されました。

しかし、全国最多の自主避難者世帯数717世帯を数える東京都では、都営住宅の優先入居枠として300戸の募集をしたものの、現時点で166戸が確定しただけとなっています。

東京都の都営住宅に応募できる収入要件は21万4千円以下。世帯要件は➀一人親世帯 ➁60歳以上世帯 ③18歳未満の子供3人以上 ④小学校入学前の子供2人以上 ⑤身障者となっているため、今後の入居者数の増加はかなり厳しいものとなっています。

その後、東京都では雇用促進住宅や国家公務員住宅において現段階で転居できない方々への継続入居を認める方向性が打ち出されました。ただ、国家公務員住宅は2年間の限定付き、雇用促進住宅は家賃の3倍の収入条件となっています。「避難の協同センター」の調査では、国家公務員住宅の場合、駐車場や諸費用まで含めると8万円を超える負担になる場合もあり、原発事故自主避難者には高いハードルとなっています。

なお、「避難の協同センター」では、東京都をはじめ神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、茨城県などとも協議を進め、➀自主避難者に対する家賃や転居費用などの支援 ➁公営住宅への入居要件の撤廃または緩和 ③民間賃貸住宅の継続入居に対する自治体のサポート ④小さい子供がいる母子避難家庭への配慮などを引き続き求めていきます。

福島県田村市から東京都に避難している熊本美弥子さん

福島県田村市から東京都に避難している
熊本美弥子さん


南相馬市から神奈川県に避難している村田弘さん

南相馬市から神奈川県に避難している
村田弘さん


困りごとがあったら「避難の協同センター」に相談を

「避難の協同センター」に寄せられている相談事例からいくつか代表的な事例を紹介しましょう。

Aさん:生活困窮状態にあり、生活保護を受給中だが、民間賃貸への避難で、生活保護の住宅扶助手当を上回る家賃となるため、福島県の民間賃貸家賃補助(1年目で最大3万円、2年目で2万円、三年目でゼロ)を申請しようとしたが、生活保護の収入認定基準を上回るため補助申請を断られた。

Bさん:雇用促進住宅に避難しているが、母子避難であったが離婚調停中。本人も病気療養中で傷病手当を受給しているが、子供の進学もあり、あと1〜2年は現在住んでいる雇用促進住宅に住みたい。離婚が正式に確定していないため、夫の収入も加味して計算されるため、収入要件を超えてしまう。

Cさん:本人と高校生の息子、26歳の娘と8歳の孫と一緒に住んでいたが、2世帯のため分かれる必要があると指示される。仕方なく娘と孫の名義で申し込んだが、本人と息子の住まいが見つからず、今後見つかったとしても二重の生活で負担が増え、息子が高校に通えなくなる可能性も。なんとか同居入居を認めてほしい。

避難者からは、「住宅確保」のほか、「所得/生計」「就学」「健康」「就労状況」「放射能への不安」など多くの相談が寄せられています。

「避難の協同センター」では、各都道府県との交渉を今後も粘り強く進める一方、相談ダイヤルを開設、各種相談会を開催して自治体支援の枠から外れ、住まいが決まらない方々への個別支援なども続けています。


「避難の協同センター」相談ダイヤル

TEL: 070-3185-0311
福島自主避難5

国際環境NGO FoE Japan

〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986
Web:http://www.FoEJapan.org


<関連記事>

福島自主避難ネットワーク「てとて」メンバーが語ること [前半]
今こそ再生可能エネルギーに支援を~国連環境計画・金融イニシアチブ 特別顧問 末吉 竹二郎さんの講演から
日本人がずっと使ってきた「のし袋」の秘密が本に~著者である折形師 齋藤和胡さんの出版記念会から
東日本大震災の経験を全国に―➁福島の地で、行政、企業、NPOの協働・連携を進める
自転車のルール もう一度、学びませんか?
エンターテイメントBBQで、国際交流と復興支援!
若手漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」の担い手育成
植物由来のセルロースナノファイバーに、注目と期待集まる!エコプロダクツ2016の出展から
クールな未来を選ぶのは私たち
みんなで屋根上ソーラーをつくろう!~日本初・体験型施工DiOがついに実現
市民の力で、自然エネルギーの“地産地消”を進める
こがねい市民発電と一緒に考える、かしこい電気の選び方・作り方
私たちにできること~竹下景子さんと知花くららさんが国連WFPの活動を語る
日本の子どもの貧困率は先進国でも上位~阿部彩氏に聞く
クルマ優先の社会を見直そう「モビリティウイーク&カーフリーデ-2016」が開催
市民の力で、自然エネルギーの“地産地消”を進めるNPO法人こだいらソーラーの太陽光発電所見学会
パリ協定は“地球のがけっぷち”を救えるか⁈~COP21のパリ合意が意味するもの

トップへ
TOPへ戻る