「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第9回】eco検定合格者のさらなるステップアップに向けて

当シリーズではこれまで(公社)日本技術士会「登録持続可能な社会推進センター」の皆さんとの協働で、今の日本で科学技術を知る意義、科学技術エコリーダー公式テキスト<科学技術>内容を紹介してきました。今回はeco検定(環境社会検定試験)を主催運営する東京商工会議所人材能力開発部 霜崎敏一課長に話を伺いました。

東京商工会議所人材能力開発部検定センター 検定事業推進担当課長 霜崎敏一氏 

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全国で約17万人に達するエコピープル(eco検定合格者)

Q. 2006年に開始以来、eco検定受験者は全国約30万人、主婦、学生、子どもにまで広がっています。なぜ東京商工会議所がこうした検定試験を始めたのでしょうか?

霜崎:商工会議所とは何かを改めて申し上げますと、「商工会議所は、その地区内における商工業の総合的な改善発展を図るとともに、社会一般の福祉の増進に資することを目的する(商工会議所法第6条)」団体です。企業を支援する一環として、人材育成は重要テーマであり、古くから各商工会議所が検定試験に取り組んできました。日本商工会議所の日商簿記などご存じのものも多いと思います。もともと大企業に限らず中小企業を含む商工業の発展を後押しするのが存在意義ですから、昔は計算尺検定や記録式電卓検定など、その時代に必要とされた技能検定を実施したこともありました。

eco検定の発足にあたっては、やはり2005年の京都議定書発効が大きな契機だったと思います。これにより多くの企業において環境問題の関心が高まり、環境知識・マインドの高い人材の育成におけるニーズが高まりました。しかしながら、当時は環境に関する総合的な知識習得を促す有効なツールがほとんどない状況でしたので、商工会議所がアクションをおこしたわけです。

ご存じのように、今や企業活動において環境問題を切り離すことは考えられません。環境知識の習得が社員に必須となる中、2006年にeco検定をスタートして以降、おかげさまで、多くの企業や学校に導入いただけるまでになりました。

Q. eco検定の合格者(2013年2月現在、全国約18万人)は、エコピープルと特別な呼び方をされています。堅苦しさのない、個人もかかわりやすい雰囲気がありますね。

霜崎:eco検定は「地球規模で考えて、足元から行動しよう(Think globally, Act locally)」の理念に基づき、「人づくりから地球環境を変える」ために、3つの考え方「環境と経済の両立」「人と組織の連携」「企業人と生活者の区分なく環境の知識を習得してもらいたい」の促進を目指しています。

そもそも環境問題は企業、個人の分け隔てなく関係する問題ですから、当会議所では企業、個人双方を支援していきたいと考えています。企業の方も家に帰れば一個人です。実際、eco検定奨励する会社にお勤めの旦那様の影響で、奥様も検定にチャレンジし合格されたという事例も良く耳にします。


受験者職種No.1は営業・販売

Q. CSR(企業の社会的責任)担当者が受講受験されるケースも多いでしょうね。

霜崎:会社として環境問題に取り組む際に、CSRの主要テーマとしてCSR担当者が旗振り役となるケースは多いと思います。まずCSR担当者からeco検定に目を向けていただき、その後に会社全体が環境意識を高める方策の一つとしてeco検定を利用いただくのが理想的だと思います。近年はCSRへの具体的取組み成果として、事業活動報告書やCSRレポートで、エコ検定合格者人数を報告したいとご連絡いただく企業も増えています。

また、現在では、職種別で一番多い受験者は「営業・販売」の方となっており、受験者の裾野が広がってきたなという実感があります。ある企業からは、以前は営業の皆さんが自社の環境対応商品・サービスについて客先でパンフレットを棒読みするだけだった。しかしeco検定を通じて環境知識を高めることで商品・サービスの良さを的確に深く説明できるようになったというお話を伺ったことがあります。

Q. 震災前後で環境問題への意識変化は感じられますか?

霜崎:個人レベルでエネルギー問題に関心を高めたと同時に、企業サイドには少しマイナス面もあるように感じます。ご存じのように、震災前は日本企業全体がCO2削減に取り組む意欲が強かったのですが、震災後は原発事故の影響でエネルギー不足、さらに景気低迷による先行きへの懸念があります。極端に言うと、CO2が出ても電気を作り、経済活動を活発化しなくてはというマインドがあるように思います。難しいところです。

Q. CSR活動については中小企業では実践が難しいというお話も聞きますが、eco検定は中小企業の皆さんにも活用されています。

霜崎:会社の規模を問わず、従業員数10~30人でも環境問題に取り組む動きは明らかにあります。かえって、規模が小さな会社の方が社長のトップダウンで環境貢献活動をスピーディに展開することができますし、従業員の発案でとてもユニークな活動を行っている中小企業も多くあります。

私が以前に担当していた板橋地区では、中小企業の経営者が、地元の小中学校にゴーヤ等の苗木を植える「緑のカーテン応援団」という取組みを自主的に行っていらっしゃいました。地元の小中学校には皆さんのお子さんが通っている社長さんもいらっしゃいますし、地元密着の視点でむしろ自然体でCSR活動に取り組みやすいのではないででしょうか。

Q. 合格者の中には小学生もいるそうですが、子どもたちへの環境教育にeco検定を活用いただくという視点もあるのですか?

霜崎:子ども向けということは全く意識していません。私見ですが、むしろ、小中学校の先生方にeco検定に挑戦いただけたらと考えています。お忙しいようであれば、公式テキストを読んでいただくだけでも構いません。先生方が環境に対する正しい知識を身に着けていただいて、教室でお話いただく、それによって子どもたちが環境問題に興味を持ち、将来的にeco検定の受験につながれば素晴らしいことだなと思います。商工会議所というと企業、経済活動というイメージが強いのですが、わが国の将来を背負ってもらう子どもたちのために、教育現場の皆さんとも連携できないか模索しているところです。

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