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NPOが出版で子ども支援を訴える

2018年の世相を表す漢字は「災(わざわい)」。今年も紛争や災害が人々を襲い、甚大な被害をもたらした。12月に開催されたCOP24に期待を寄せた方々も多いと思われるが、今世紀末の温度上昇を「1.5度未満」にするという目標にさえ、大人たちの迷走が続いている。このほど子どもたちの支援を続ける2つの団体「チャンス・フォー・チルドレン」と国境なき子どもたち(KnK)が相次いで出版を行った。“希望”につながる取り組みにせ期待を寄せたい。[2018年12月31日公開]

チャンス・フォー・チルドレンが支援する学習塾で。©Natsuki Yasuda

チャンス・フォー・チルドレンが支援する学習塾で。
©Natsuki Yasuda


PART1:
子どもたちに教育支援を続ける「チャンス・フォー・チルドレン」が
「学ぶ」を深掘るウェブマガジン『スタディ通信』を創刊

2011年から、経済的困難を抱える子どもたちに、塾や習い事・体験活動等で利用できる「スタディクーポン」を提供し、教育格差を解消する取り組みを続けてきた公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン。2017年には、「スタディクーポン・イニシアティブ」を発足し、地方自治体との協働プロジェクトも開始するなど、スタディクーポンの取り組みは全国で政策としても広がりを見せています。

Book Review2

チャンス・フォー・チルドレンがこうした取り組みを始めたきっかけは、『お金が理由で学ぶチャンスを得られない子どもをなくしたい』というシンプルなもの。ところが最近では教育格差の問題はさらに深刻さを増しています。

発足から10年目を迎えるにあたって、「学ぶことは、誰にとってももっと楽しいこと、ワクワクすることであってほしい」との願いを込めて、未来を担う子どもたちの可能性を探るため、『スタディ通信』というウェブマガジンをつくりました。

設立時からチャンス・フォー・チルドレンを率いてきた代表理事の今井 悠介さん(上の写真左)は、『いま「学ぶ」とは何なのか?一緒に考えていけたら嬉しいです』と語ってくれました。

ロゴデザイン:中屋辰平氏

ロゴデザイン:中屋辰平氏

『スタディ通信』のコンセプト:“「学ぶ」を深掘るウェブマガジン”

「学ぶ」を深掘るということは、これまで自明視してきた「学ぶ」を疑うということでもあります。時代が移り変わっていく、そして本当に多様な子どもたち、大人たちが同じ社会の中で暮らしていく。その中で“「学ぶ」とは一体何なのか?” この問いにさまざまな角度から向き合っていくのが「学ぶ」を深掘るウェブマガジンの役割だと抱負を述べています。

©Rintaro Kume

©Rintaro Kume

お問合せ先: 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 東京事務局
URL:https://cfc.or.jp/
TEL:03-3681-2258(平日10時~19時)


PART 2 :
「国境なき子どもたち(KnK)」が出版
『私は13歳、シリア難民。 故郷が戦場になった子どもたち』

カンボジアやベトナムなど世界15か国(地域)でストリートチルドレンや恵まれない子どもたちを支援する特定非営利活動法人国境なき子どもたち(KnK)。このほど、ヨルダン派遣員らを中心に、シリア難民の子どもたちの現状を伝える書籍『わたしは13歳、シリア難民。――故郷が戦場になった子どもたち』を出版しました。

シリア紛争が始まって7年。故郷を追われたシリアの人々は、国内外で1,100万人にも上るといわれています。2013年以降、KnKは隣国ヨルダンに逃れてきたシリア難民の子どもたちに対し、難民キャンプで初めての学校を立ち上げるなど教育支援を継続しています。

この書籍では、KnKスタッフが出会ったシリア難民とその子どもたちが、教育の機会を得ることで、「将来は英語の先生になるの(12歳女子)」「医者になって命を救いたい(13歳女子)」「ラッパーになって自分の思いを表現する(14歳男子)」とそれぞれの夢や願いを語る部分が印象的です。

なお、『わたしは13歳、シリア難民。――故郷が戦場になった子どもたち』の表紙の帯にはジャーナリストでニュースキャスターの堀潤さんが以下のような推薦文を寄せています。

『子どもたちの笑顔と悲しみに国境はない。
「国境なき子どもたち(KnK)」が一人ひとりの物語を届けてくれた。
「シリア難民」という言葉に体温を感じさせる一冊』と寄せています。

日本の皆さまにご参加いただける支援方法も紹介しています。ぜひご一読ください。

日本の皆さまにご参加いただける支援方法も紹介しています。
ぜひご一読ください。

わたしは13歳、シリア難民。――故郷が戦場になった子どもたち

- もくじ -
第1章 私たちがヨルダンで出会ったシリア難民の子どもたち
第2章 なぜ、美しいシリアは、がれきの都市になってしまったの
第3章 難民キャンプで暮らすってどういうこと?
第4章 キャンプの外に移り住んだ難民
第5章 子どもたちが安心して学べる場をつくるために
第6章 シリアの子どもたちが見る夢
第7章 私たちにできること

●A5版並製/136ページ
定価=本体1,400円+税 発売=合同出版
JANコード/ISBNコード:9784772613576

お問合せ先:認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)
URL:www.knk.or.jp
TEL:03-6279-1126(平日10時~18時)



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