「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第6回】科学技術を学ぼう④

~公式テキストから~「環境リスクとリスクマネジメント」「技術者のモラル」「環境と経済」

科学技術の面白さと重要性を知っていただく「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ第3回から第7回までは、5回に分けてエコリーダー公式テキスト<科学技術>の内容についてご紹介します。第6回の今回は環境リスクと科学者に求められるモラルと役割、食糧問題や貧困問題を解決する科学技術と環境ビジネスについて(公社)日本技術士会登録「持続可能な社会推進センター」会員の船越 元氏(株式会社 大建設計 札幌事務所 技術部長)が解説します。

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第9章 環境リスクとリスクマネジメント

~企業・組織、そして国・世界の単位で不可欠となったリスクマネジメント

1.環境リスク

船越 元 氏

船越:現代社会では有害性を有する様々な化学物質が利用されており、大気や水、食品などを経て人の健康に影響を与えたり、廃棄物の投棄や化学物質貯蔵タンク等からの漏洩などによる地下水や土壌汚染など、生態系への直接的影響の拡大が懸念されています。また、地球規模での自然環境改変や温室効果ガス排出、フロンによるオゾン層破壊など、環境保全にとっての間接的障害の拡大も明らかとなり、これら直接的・間接的要因を包括して『環境リスク』と言います。
環境汚染の未然防止や化学物質等による環境負荷を低減していくためには、環境リスクを正しく評価し、その結果に基づいて適切な対策を講じていくことが重要です。


2.リスクマネジメントとは

環境対策におけるリスクマネジメントとは、環境保全上の障害要因となる環境リスクを早期に算定し必要な対策を講じることであり、それを実効性あるものにするためには、下図のようなPDCAサイクルによってスパイラルアップさせていくことが求められます。

リスクマネジメント維持のための体制・仕組み

しかし、リスクマネジメントの重要性が強調される一方、以下のような課題も指摘されています。

★問題把握が経験的で、問題が明らかになってから対応を検討する傾向がある。
★発生確率の小さいリスクに対し、想定被害が大きくても対応を軽視する傾向がある。
★対応が小さな組織単位で検討され、優先順位や重要性を組織全体として検討するシステムになっていない傾向がある。
★組織内の評価・検討結果を外部に情報公開するシステムになっていない傾向がある。

地球規模の環境問題、原子力利用、エネルギー問題、大規模自然災害など、潜在的脅威が巨大化するなか、個々の企業・組織としてのリスクマネジメントだけでなく、国や世界としてのリスクマネジメントがますます重要になっています。

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