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くらしと、電気と、原発のこと非電化の夕べ
非電化工房代表 藤村靖之さん電気を使わない非電化冷蔵庫などの考案で知られる工学博士の藤村靖之さんを囲む「非電化の夕べ」チャリティー講演会が5日夜都内で開催された。参加者は口コミなどで集まった101人。栃木県那須町で、非電化工房を主催する藤村さんの震災後の暮らしぶりにも話が及んだ。
1.良いビジネス
煎りたて、焼きたて、淹れたてのコーヒが飲める珈琲焙煎器。一杯の珈琲を淹れるまでに25分も掛かります。6年前に私がつくり、ホームページの片隅でしか紹介しなかった珈琲焙煎器がこれまでに8,500台も売れました。1分1秒を競って生きてきた時代の反省からか、「手足を使い、技を磨く」という考え、プロセスを楽しむゆとりが社会に戻ってきたのかもしれません。
2.科学×平和
科学は暴走します。
3.おとなの力でこどもを守る
ありえない原発の絶対安全をおとなたちが勝手につくりました。おとなたちが起した原発事故からこどもたちを守ることこそおとなの責任です。私の住む那須からも26家族が九州などに逃げました。これから10年~20年と生き続けなければならないこどもたちをしっかり守らないといけません。
4.こどもの守りかた
チェルノブイリ原発事故でいまなお苦しむベラルーシの対応が参考になります。こどもたちが食べるもの、飲むものは、そのつど放射線量を測っています。内部被爆からこどもたちを守るためです。これなら大丈夫というものだけこどもたちに与えます。国家予算の1割がいまも使われています。
こどもたちを放射線被爆から守るには、①空気中からの外部被爆 ②空気による内部被爆 ③土からの外部被爆 ④土からの内部被爆 ⑤水、野菜、食物からの内部被爆──の5つの足し算と、そこからオーバーした部分の引き算が必要です。
5. 星空の冷蔵庫
モンゴルの遊牧民に困っていることを尋ねたら一番目が冷蔵庫でした。羊の肉や乳を主食にしている彼らは、1頭の羊が一家の2週間分くらいの食料になるのですが、夏には肉が腐るため2~4日しかもちません。電気がなくても冷蔵庫ができるという私の話が届いて、2003年から非電化プロジェクトが始まりました。ゲルの北側に穴を掘り、木製の箱をはめ込み、箱の内部の側面と底面には水を充填したペットボトルを並べます。この水が保冷剤の役割を果たします。昼間の気温が30℃まで上がっても、冷蔵庫内は4℃を保つことができました。
モンゴルは日本の3倍ほどの面積をもつ国ですが、日本の使用済み核燃料の最終処分場になろうとしています。
6. 節電とマインドセット
マインドセットとは“心の枠組み”のこと。長野県では3.11以後、エアコンの売れ行きが4倍に伸びています。もちろん省エネ型のエアコンです。自分が損をしても省エネをというワナにはまっていませんか。エコロジーだと思っていることがエコノミーに利用されているのです。電気に依存しない社会、ライフスタイルに転換しないといけません。
7. 豊かで幸せな生活
世界で1週間に生まれる化学物質は10万種類にも及びます。いまの世の中、アクセルペダルしかついていないのです。私たちは大量消費から脱却しないといけません。
私のところには「節電の仕方を教えてください」という話がひんぱんに寄せられますが、これってダイエットの仕方を教えてほしいというのと同じです。太っている人は、食いしん坊で怠け者である場合が多いですね。身体を痛めつけるのは長続きしないかも知れません。でも〈快適・便利・スピード〉のすべてを満たす生活は見直さないといけません。
家庭の照明だけで、原発10基分といわれています。いままでのように部屋全体をぎんぎんぎらぎら明るくする必要はないと思います。ほどほどの快適と便利さを愉しむ工夫が求められています。
【藤村靖之氏プロフィール】
電気を使わない非電化冷蔵庫を考案。モンゴルやナイジェリアなど
電気インフラの進んでいない国に技術提供を行っている発明家。
非電化工房サイト:http://www.hidenka.net/jtop.htm
非電化工房、発明工房、発明起業塾などを主宰、科学技術庁長官賞、
発明功労賞などを受賞している。
※本原稿は、8月5日に行われた「藤村靖之の非電化の夕べ」を主催者であるロハスガーデン(ガーデンラボ(株))の協力を得て一部を紹介したものです。文責はあくまでも当編集部にあります。
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