企業とNGO/NPO

~地域と連携した実践的BCP(事業継続計画)~いつか来る災害に備えて、避難所のあり方を探る

日本財団 次の災害に備える企画実行委員会

〔ワークショップ2日目:想定 震災から10日後〕

震災発生から10日目の避難所。
ある程度の落ち着きの中で、帰宅者が出る一方、新たな避難者も加わっている。

シナリオA:備えが不十分だった避難所の10日後

朝7時半。朝食と役割カードが配布され、「朝食が終わったら、生活スペースの清掃活動を行ってください」という指示から1日がスタート。朝食は、バナナ、パン、おにぎりなど。電気ポットでお湯が沸かされ、お茶もでるようになった。

デスクに並べられたバナナやおにぎりで朝食

〔シナリオAに設定された2つのゴール〕
①前日の就寝場所の解体と清掃作業が行われる
②班体制をつくり、避難者全体のニーズを集める

一晩お世話になった就寝スペースであとかたづけも始まった

突然、外部から避難者が現れ、「20人分の朝食を分けてほしい」と要求する。物資の把握ができておらず、なかなか結論が出ない。たらいまわし状態が続き、再訪を依頼して帰ってもらうことに。

4つの班がつくられ清掃活動が開始。疲れもあってか、参加者の動きはややにぶい印象だ。段ボールでつくった簡易ベッドやパーテーションの取り外しが行われた。掃除機が掛けられ、ゴミの後片付けも。

班長はメンバーである班員の健康状態を把握するとともに、一人ひとりのニーズを再確認。「妻を介護している」「作業の分担が不公平だ」「一時帰宅したい」「洗濯がしたい」「酒がほしい」などの要望が次々と出される。

その間にも外部から様々な支援団体がやってくる。「子どもの学習支援をしている団体ですが、なにか困っていることはないですか」と、次々に訪れる支援の申し出とニーズとの調整に、班長の時間がとられ、避難者の一人ひとりのニーズ把握が進まない。ホイッスルが鳴り、2日目のシナリオAが終了。

シナリオB:準備が行き届いた避難所の10日後

引き続き、班体制の構築が進められ、避難所の自治の確立を目指す。委員長、副委員長、施設管理責任者、行政責任者のほか、食糧班、物資班、衛生班、救護班、情報班、総務班などに役割が分けられる。

だが、リーダーを決めるのも簡単ではない、ケガや病気の者も多く、一時帰宅者もいるからだ。決められた班の責任者には黄色のバンダナが配られ、リーダーが一目でわかるようになった。

訓練2日目、救護班や衛生班などの役割分担が貼り出され、共有

役割分担も進み、ようやく避難所にも秩序が。グループ分けで、要望もスムーズにあげられる

役割分担が終わり、外部からのアセスメント班と面談が。避難者からあげられた要望が班長から伝えられ、2日目のシナリオBが終了した。

2日間のシナリオが終了後、参加者と見学者が一堂に会し、それぞれが意見を交換した。

○2日目の振り返り
村野淳子さん(大分県社会福祉協議会)

本日のシナリオA.Bとも災害から10日目ですから、避難所の基本的なスケジュールがあってしかるべきです。生活を共同で行うわけですから、最低限のルールづくりは欠かせません。また、外部からの訪問者がいきなり来るという設定でしたが、避難所生活の平穏を保つ意味でも受付などを設け、生活者の間を通らせない配慮が欠かせません。また、情報は内部向けのものと外部向けのものに分け、外から来る方にも内部のルールが分るような貼り出しが必要です。10日目になると感染症などが心配です。衛生面の配慮についても重視すべきで、手洗い、うがい、消毒も徹底したいところです。

参加者からは、「リーダーの重要性に気付いた」「情報共有の大切さを知った」「声の小さな人への配慮が足りなかった」「紙やペンの必要性を痛感」など真剣な声が相次いだ。

東日本大震災では、約1,200カ所の避難所がつくられたものの、うち3割に当たる400カ所は「パチンコ店の2階」「ショッピング場」「お寺」など急ごしらえの避難所が多く、地域ごとの対応に大きな差が生じたとされる。

まとめに立ったつぎプロ代表の川北秀人さんは、「自分の会社だけのBCP(事業継続計画)では意味がありません。従業員が地域の避難所に入ることも考慮し、地域ぐるみの連携協力が不可欠です」と語った。つぎプロでは次の災害に備えるため、企業や行政の参加を得て、実践的な避難所運営マニュアルの提言や被災者支援の仕組みづくりに取り組む予定です。

「次の災害に備える企画実行委員会(つぎプロ)」代表の川北秀人さん

●日本財団と次の災害に備える企画実行委員会へのお問い合わせ

http://www.nippon-foundation.or.jp/
日本財団 東日本大震災復興支援チーム
担当:橋本
TEL:03-6229-5333
FAX:03-6229-5177

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