CSRフラッシュ

給食が、エベレストに向かわせた!ネパール人女性登山家が公共広告に登場

ACジャパンによる国連WFP「学校給食プログラム」の新広告キャンペーン始まる

2008年5月に17歳でエベレスト登頂を果たしたニムドマ・シェルパさん。彼女の夢を育てたのは、国連WFP(世界食糧計画)が進める学校給食支援でした。このほど新公共広告の発表会が都内であり、来日したニムドマ・シェルパさんがお話ししました。

エベレスト登頂時の写真を掲げる 登山家ニムドマ・シェルパさん©ACジャパン

食べられるから、学べる。学べるから、夢がふくらむ。

保田: 日本へようこそ。公共広告の撮影の舞台となった学校はニムドマさんが学んだ母校ではなかったそうですね。ニムドマさんの母校は似たような環境だったのでしょうか。

ニムドマ: 私の学校は過疎地の村にあり、広告に登場した学校とはずいぶん環境が違っています。机や椅子もなく、雨が降ったら雨漏りがするといったひどい状況でした。

保田: ニムドマさんが育った家庭の様子についてもお聞かせいただけますか。

ニムドマ: 私の家はヒマラヤ渓谷の奥深くにあり、近隣の住民の多くが農業に依存しています。交通事情も悪く、病院もなく、食料を備蓄する環境もありませんでした。食料がないときには家畜のえさのようなものを食べることもありました。

保田: 兄弟姉妹は何人ですか。

ニムドマ: 兄が二人、姉が二人、そして妹と私の合計6人です。

保田: ご両親はどのような仕事をされていたのでしょうか。

ニムドマ: 農業をしていて、主にトウモロコシや小麦、大豆、じゃがいもなどを植えていました。家畜としてニワトリや牛も飼っていました。

スペシャルトークでお話をするニムドマ・シェルパさん(右)と進行役の保田由布子さん(WFP日本事務所広報官)



給食が食べられるから学校へ

保田: 通っていた村の学校で4歳から7歳まで国連WFPの学校給食を受けられたそうですね。どのような給食でしたか。

ニムドマ: 学校には勉強に行くというよりも、給食が食べられるから通っていたようなものです。友達と遊べるのはもちろん楽しみの1つでした。まだ小さかったので教育は大切なものだということは考えておらず、学校に行けば“甘い、おいしいもの”が食べられる、という思いだけでした。

保田: “おいしいもの”というのは具体的にはどのような給食だったのでしょうか。

ニムドマ: ハルワ(おかゆのような食事)と呼ばれるもので、たんぱく質やビタミンやミネラルが豊富に含まれています。甘くておいしくて非常に味わい深いものでした。生まれてから食べたものの中で一番おいしいと感じていました。


姉たちが教えてくれた教育の大切さ

保田: 学校に通っているうちに学習に対する意識の変化が生まれ、目的も変わっていったのでしょうか。

ニムドマ: 最初は給食が目当てでしたが、姉たちが一生懸命勉強しているのを見て、教育というものが大切なものだと分かるようになり、勉強にも次第に興味を持つようになりました。上の学校にも行きたいと思うようになりました。

保田: お兄さんの援助もあって、首都カトマンズの学校に行かれるわけですね。エベレストに登る女性の登山隊がメンバーを探していると知ったのはその直後ですか。登山の経験が全くなかったのに応募したそうですね。

ニムドマ: 私は小さいころから冒険が大好きでした。ネパールでは女性は常に遅れた立場にあるのですが、自分としては、あるいは国のために、なにか挑戦してみたいという漠然とした思いがありました。しかし、何をしたらよいか分かりませんでした。エベレスト登山隊の女性チームがメンバーを募集していると聞いて、これこそ自分の挑戦する道だと思うようになりました。そこですぐにこの登山隊の隊長を訪ねました。


エベレスト登山隊に応募する

保田: すごい度胸ですね。登山経験がなくても大丈夫だったのですか。

ニムドマ: 私は当時16歳でした。隊長がいうにはトレーニングに参加して合格すれば隊員に選ばれるということでしたので、トレーニングに参加しました。5500メートルの高地に連れていかれ、岩登りや雪山の訓練を受け、装備に対する知識についても学びました。私の努力に隊長も喜んでくれ、合格して隊員になることができました。

保田: エベレストへの登頂はいかがでしたか。

ニムドマ: 世界の最高地点に到達できたということは信じられませんでした。つらかったトレーニングの経験などすべての苦労を忘れさせてくれました。頂上では一番初めに母のことを思い浮かべました。すぐに母に電話したい気持ちでした。強く願えば、いつか必ずかなうと思いました(会場から大きな拍手)。


女性たちの願いをかなえる社会に

保田: 登頂の後、ニムドマさんはネパール国内の150を超える小学校を訪問して、ご自身の体験を教師や父兄、そして子どもたちに伝えているそうですが、どんなお話をされるのですか。

ニムドマ: ネパールは男中心の社会です。女性が何かしたいと考えても教育の機会さえ与えられません。しかし女性も夢を持っています。女性たちが何かしたいと考えたときに、実現できる社会にしたいと話しています。

保田: ニムドマさんの話を聞いた人たちの反応はいかがですか。

ニムドマ: 私自身の経験をお話しすると、親御さんたちからも「女の子であっても、教育を受け、機会を得ることができれば、夢がかなえられる」のだと好意的に受け止めてくれます。

登山家ニムドマ・シェルパさんとネパールの子どもたち ©Mayumi.R



ただいま世界の7大陸の最高峰に挑戦中

保田: 次の夢があるそうですね。教えてくださいますか。

ニムドマ: 現在、7人の女性登山家のチームに所属しています。7大陸の最高峰に登頂するという計画です。このチームは、女性問題、環境問題、教育問題も掲げて活動を行っています。私自身、将来は社会福祉の道に進みたいと考えていますが、いまは国際的な登山ガイドになるためにトレーニング中です。

保田: 7大陸のうち、これまでにいくつ制覇しているのでしょうか。

ニムドマ: 4つを制覇しました。あと3つ残っています。残りの3つは2014年から2015年に掛けて登る予定です。

保田: 日本の皆さんにもメッセージがありましたら。

ニムドマ: 日本には初めて訪問しました。私は国連WFPの学校給食プログラムによって今日の成功を手にすることができました。日本には貧困や飢餓に苦しむ子どもたちは少ないかもしれませんが、世界には貧困や飢餓に苦しむ子どもたちが大勢います。今後とも国連WFPをとおして子どもたちへの支援をよろしくお願いします。

会場で国連WFP協会安藤宏基会長(左から二人目)をはじめ関係者の皆さんと記念撮影するニムドマ・シェルパさん(右から二人目)



●ニムドマ・シェルパさん

登山家。1991年5月19日ネパール生まれ、22歳。国連WFPの学校給食支援を受け、エベレスト登頂という夢を17歳のときに達成する。現在は世界7大陸最高峰登頂を目指す女性のチーム「7 summits Women Team」に属し、活動中。


●公益社団法人ACジャパン ウェブサイト(ニムドマさんが登場する国連WFPの公共広告がご覧いただけます)

http://www.ad-c.or.jp/campaign/support/02/

●お問い合わせ

国連WFP

http://ja.wfp.org/

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