国内企業最前線

ネット上にお茶の間を再現し、リアルなコミュニケーションへとつなぐ家族専用SNS「wellnote(ウェルノート)」とは?

ウェルスタイル株式会社の谷生 芳彦 社長に聞く

フェイスブックやラインなどソーシャルメディアの国内利用者数は5,000万人超と言われる。友人の写真やつぶやきから “気配”を感じてつながる、そんなソーシャルメディアのメリットを家族のコミュニケーションにこそ活かしたい。ウェルスタイル株式会社の谷生芳彦(たにおよしひこ)社長に家族専用SNS「wellnote(ウェルノート)」について、開発のキッカケとなった幼少時代の原体験、東日本大震災後に感じた使命感とともに聞いた。

「wellnote(ウェルノート)」開発の根底にある思い

Q.2011年リリースの「wellnote(ウェルノート)」は、家族間のコミュニケーションに特化したSNSアプリですが、社長ご自身の幼少時の思いが開発の一つのきっかけとか。

ウェルスタイル株式会社 谷生 芳彦 社長

谷生:当社の「wellnote(ウェルノート)」は海外発ではなく、完全に独自の発想で生まれたアプリです。投資銀行であるゴールドマンサックスから独立し、2010年6月にウエルスタイル株式会社を設立、基幹事業として2011年7月に新しい家庭内コミュニケーションツール「wellnote(ウェルノート)」をリリースしました。発案のきっかけはおっしゃるとおり幼少時の経験と時代の流れ、大きく二つあります。

私は実家が神戸の田舎町ですが、母親が病気がちで片道数時間かけて京都の病院まで通っていました。親が泊りがけで病院に通う間、残された当時小学校低学年の私の心には子どもながらに「もう少し家庭と医療従事者の距離が近ければ良いのに」という気持ちがずっとあり、それが「wellnote(ウェルノート)」を生み出したきっかけの一つです。

開発に至るもう一つの理由は、SNSが日本に導入された当初から、SNSのメリットを家族間にこそ活かすべきではないか、「離れて住む家族にこそコミュニケーションが必要」ではないかと考えたからです。SNSの場合、直接に話をせずとも、友人のつぶやきや写真から何となく元気だと確認できる、毎日の“気配”を感じることができるのが特徴です。

離れて暮らす家族は電話1本するにも時間帯を気兼ねしたり疎遠になりがちです。SNSを通じて直接話さずとも「なんとなく元気」だと確認できる、こちらの家族や孫の様子も知らせることもできる、常に“家族の気配”を感じるクローズドな家族に特化したSNSがあれば、さらにそこに医療従事者もつながることができれば、社会にもっと幸せな家族が増えるんじゃないか、そう考えました。

例えば、成人病予備軍が急増していますが、離れて暮らす糖尿病の親御さんが(家族専用の限られた人に情報共有するアプリですから)毎日の血糖値を「wellnote(ウェルノート)」に記録いただくと、子どもたちも毎日データを見ることができますし、気になれば「最近、少し高めだから気を付けて。そろそろ病院行った方が良いよ」と連絡する、普段から“気配”を感じることで、逆にリアルなコミュニケーションも生まれやすくなります。

「wellnote(ウェルノート)」は離れて暮らす家族や親戚など、クローズドなコミュニケーション専用に開発された無料のSNSアプリ。スマートフォンからもパソコンからも利用できる。



“リアルなお茶の間”をネット上に再現したい

Q.当初から「医療従事者ともつながる」SNSが念頭にあったということですが、医師、栄養管理士などからの情報提供も行われるそうですね。

谷生:家族の健康を管理する「ファミリーケア」機能の一環として、先ほど申し上げように家族の健康情報を記録する、母子手帳機能でこども成長記録をシェアするといった機能と合わせて、お医者さんたちからリアルタイムで情報が届く「健康レシピ」も好評いただいています。例えば、今年の夏の水分の取り方、風疹が流行っていますが予防策はといった風に、その時々にタイムリーな情報があがり、家族で情報をシェアすることができます。

また「ファミリーニュース」欄では、調剤薬局事業を展開する総合メディカル、ベビー用品やチャイルド用品を販売するアカチャンホンポ、教育出版の老舗である株式会社学研ホールディングス、その他様々な出版社と連携し、厳選された雑誌記事をリアルタイムに配信しています。これは、家庭にあるマガジンラックみたいなイメージです。

昔、家族が集まる居間には、家庭の医学本や百科事典があって、父親や母親が読む雑誌が置かれて、「この本おもしろいの?」「ここが痛いけど調べてみようか」などと家族がコミュニケーションするきっかけとなりました。同じように「wellnote(ウェルノート)」は“リアルなお茶の間”をネット上に再現すること“を目指しています。先ほどネット上で健康情報を共有することが両親に連絡するきっかけにもなるとお話しましたが、祖父母の皆さんが子どもの教育情報をシェアして「最近は子どもにこんなことが必要なんだね」と関連用品を購入してあげるなど、またそこでもリアルなコミュニケーションが生まれます。

Q.家族の“気配”を感じるのは何といっても写真。家族写真を蓄積しながらシェアできる「ファミリーアルバム」は家族専用アプリならではの機能として大好評だそうですね。

谷生:「wellnote(ウェルノート)」を実際にスタートして、祖父母の皆さんがお孫さんの情報を知りたい、または毎日成長する子どもの様子を両親に見せたいというニーズが非常に高いと改めて分かりました。一般的なSNSは不特定多数向けですから、子どもの写真を公開することに抵抗がある方も多いですが、「wellnote(ウェルノート)」でしたら家族や親戚しかご覧になりません。

「ファミリーアルバム」機能では、アップロードした過去からの写真を全て蓄積し、離れた家族でも一冊の家族アルバムを眺めるように画像を共有できます。今のシニア世代は会社などでPCに慣れている方が多いですが、ITに疎い祖父母の皆さんも「ファミリーアルバム」機能で孫の写真を見るために一生懸命勉強されて使いこなすという話も伺います。

「写真はプリントで欲しい」というシニア世代も多い。無料の「ファミリーアルバム」機能に加えて、毎月30枚までプリントして指定した住所に送付する「ウエルノートプリント」サービスも好評だ(送付先1件、月額525円)。

「ファミリーアルバム」機能を運営するなかで気づいたのは、皆さんの共有写真の多くが、子どもたちの“学びの記録”だということです。幼稚園でこんな絵が描けるようになったよ、こんな字や文章を書けるようになったよ、全て子どもたちがいかに日々成長したかを示す“学びの記録”なんですね。“健康”と並んで“子どもの教育・学習”は家族間で非常に関心が高い共通テーマです。

「wellnote(ウェルノート)」はスタート当初から“家族の健康”をテーマに機能を充実させてきましたので、現在は“子どもの教育・学習”に関する情報提供やサポートに力を入れています。2013年6月の株式会社学研ホールディングスとの業務提携もその一環です。

もちろん、ネット上での“リアルなお茶の間の再現”を目指すうえで「wellnote(ウェルノート)」を活用いただくテーマは非常に幅広いと感じていますが、しばらくの間は“健康”と“教育”に力をいれていく予定です。


新しいライフスタイルを創り、幸せな家族を増やす

Q.2011年の東日本大震災は「wellnote(ウェルノート)」開発の真っ最中に生じたとのことですが?

谷生:私は神戸出身で1995年の阪神・淡路大震災も経験しましたが、東日本大震災は結果的に「wellnote(ウェルノート)」の意義を再確認する出来事でした。

皆さんも経験されたように、東日本大震災の際には固定・携帯電話がつながりにくく、SNSでつながっていた友人の安否は確認はできても、肝心の家族とはすぐに連絡がとれなかった方も多いと思います。また、被災地では病院や薬が不足しましたが、一般的に離れている両親や家族が毎日どんな薬を飲んでいるのか分かりません。

いざという時も家族とSNSでつながっていれば安否を確認しやすいのはもちろん、必要な薬や医療もすぐにサポートできるのではないか。震災を通じて、普段から家族との絆を保つ重要性、今の社会に「wellnote(ウェルノート)」が必要とされているとの思いを改めて強くしました。

2012年にはNPO法人ファザーリング・ジャパンの震災分離家族ケアプロジェクト「FJパパエイド募金」の仕組みに「wellnote(ウェルノート)」を提供しました。同法人は震災後に津波や放射能の影響で母親と子供たちだけが地元を離れるなど、離れ離れになる家族が増えたことから、「wellnote(ウェルノート)」を提供して家族のコミュニケーションをサポートするとともに、ファザーリング・ジャパン会員である医療従事者から健康情報を提供する仕組みです。

Q.改めてウエルスタイル株式会社がめざすところを教えてください。

谷生:ウエルスタイルは“新しいライフスタイルを創造する会社”でありたいと考えています。何のために新しいライフスタイルを創造するのかといえば、それは“幸せな家族を増やすため”、究極的には人々の幸せに貢献することが、企業の使命ではないかと思います。

日本では核家族化が進み、家族間のコミュニケーションが減りつつあります。ネットによるコミュニケーションは“リアルなコミュニケーション”の対局にあると思われがちです。しかし「wellnote(ウェルノート)」で気軽に家族の日常を感じることで「今日も元気で良かった」と安心する、さらに健康情報や関心事を共有することは実際の会話のきっかけになります。SNSがリアルな家族のコミュニケーションを生む、まさしく“新しいライフスタイルの創造”が“幸せな家族を増やす”と感じています。かつてゴールドマンサックスに勤務した時代に、投資銀行業務を通じて社会が変わる瞬間を実感することがありました。今、「wellnote(ウェルノート)」を展開しながら、社会に新しいライフスタイルが根付きつつあることを実感する毎日です。

高齢化社会の日本では“家族がいながらの孤立化”が社会問題となりつつあります。例えば孤立化を防ぐツールとして「wellnote(ウェルノート)」を活用できないか、家族専用SNS「wellnote(ウェルノート)」はさまざまな切り口で社会課題の解決に貢献できるのではないかとも考えています。

日本発の「wellnote(ウェルノート)」ですが、家族の想いは世界共通です。将来の海外展開も視野に入れつつ「wellnote(ウェルノート)」で世界に幸せな家族を増やす、当社の経営理念「人々のつながりをより深め、人々の健康生活を支援するインフラの創造を通じて、人々の幸せに貢献する」を実現していきたいと思います。(2013年9月)

●ウェルスタイル株式会社

http://www.wellstyle.co.jp/
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-11-2 アイオス広尾4階
Tel: 03-6721-6456
E-mail: info@wellstyle.co.jp

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