CSRフラッシュ
東北の若手漁師がめざす“真にカッコ良くて、稼げるフィッシャーマン”
一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン設立東日本大震災から3年半、宮城県沿岸部の若手漁師・水産加工者等が地域の垣根を越えて立ち上げた一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン。2014年8月27日、都内で開催された設立発表会から、彼らが目指す新しい水産業の復興を聞いた。
震災後に生まれた浜同士の交流
全てのキッカケは311だったと宮城県塩釜市で漁を営む共同代表理事の赤間俊介さんは語る。「東日本大震災後、様々な方との出会いがあった、その一つが東日本の食の復興を応援いただく東の食の会であり、震災後の勉強会等を通じて今回のメンバーが出会いました。」
漁師は一人ひとりが一国一城の主、従来は同じ浜でも互いが連携することは少なく、ましてや同じ宮城県内の三陸沖の漁師が会う機会もなかった。「震災後に宮城県内の担い手同士が交流を重ねるなか、自分と同じように一人で頑張っている担い手がいるんだと、仕事上の悩みを互いがアドバイスし合い、これからの水産業を語り合う」なかで、今回の一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン設立に至った。
4つの事業と一つの夢
具体的なフィッシャーマン・ジャパンの取組みについて、同じく共同代表理事である石巻市の若手漁師 阿部勝太さんは、4つの柱として営業、催事、商品開発、水産業のIT化を掲げた。「営業面では国内外の様々な方とコラボレーションしながら水産業の魅力を伝え、可能性を広げていきたい。その一つとして秋からは㈱ABC Cooking Studio様のご協力で、全国131店舗で東北の食材の魅力を伝える料理教室も始まります。」
一方で地場食材の魅力を伝える大きなキッカケとなるのが消費者との直接の対話と考える彼らは、震災後、月に1度、石巻市で朝市を開くなど、積極的に催事に出店するなど消費者との交流の機会を増やし、今後も加速化したいという。また、消費者の声を生産現場に活かし、漁師にしかできない商品開発、漁師の顔が見える商材、小さな浜の名前がブランド化できるが商品・サービス開発にも取り組むつもりだ。
また、従来は個人の漁師や水産加工業者が苦手としていたITを積極的に取り入れることで、「生産現場と飲食店や量販店など販売現場を結ぶ活動が出来たら」と考えている。
夢は未来の担い手を育てていくこと
しかし何よりも、フィッシャーマン・ジャパンの一番の夢は若い担い手を育て、浜を活性化することだと阿部さんは言う。「以前から水産業の担い手不足が問題となっていましたが、正直、さらに震災後、水産業を離れざるを得なかった人もいます。若い担い手を育て、地域で漁師になる子どもたちを育てていきたいし、離れた人たちが、もう一度水産業に携われるようにできたら。」
そのためには、赤間さんは、まずは自分たちが成功事例を示さなければならないと語った。「”カッコ良い漁師”が何かと言えば、まず自信を持って自分が漁師だと言えること。つまり、きちんと稼いで水産業で食べていける、自分たちがモデルケースとなることで、自分の子どもも含めて、若い担い手や水産業に携わる人間を増やしていきたい。」
近年は行政も農林水産業の担い手育成に力をいれているが、農業に比べて「水産業の登竜門は分かりづらかった。実際、自分たちは親から怒鳴られながら育てられたわけで。でも、今は全漁連等で新たに水産業に携わりたい人への窓口も設けていますし、自分たちも現場の受け入れ先として機能していきたい。(赤間さん)」また、既に行ってきた小学校の課外授業として子どもたちの漁業体験など、子どもたちに水産業を身近に感じてもらう取り組みにも力をいれていくつもりだ。
フィッシャーマン・ジャパンは初年度から2年目にかけて6,000万円から1億円の売上目標を掲げている。「有難いことに、全国からフィッシャーマン・ジャパンに参加したいという声を頂いています。まずは今のメンバーで宮城県でのビジネス実績を挙げる事が何より大切だと思っているので、社団法人としては一般の方々には準会員、またファンクラブ「CLUB MERMAN」への参加を通じて応援いただきつつ、同じ志を持つ全国の水産業に関わる皆さんとは適宜つながって互いのビジネスの可能性を広げていきたいです。」と赤間さんは力強く今後への決意を示した。
フィッシャーマン・ジャパン ホームページでは、メンバー各人の思いや漁の様子、またYahooサイトと連携したショッピングサイト、ファンクラブ「CLUB MERMAN」も設けられている
●一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン
http://fishermanjapan.com/
宮城県石巻市大街道西1-7-20
TEL:0225-98-7071 FAX:0225-90-4579
[お問い合わせは全て下記のメールまで]
info@fishermanjapan.com
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