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いま、こんな旅がシニアや女性を元気にしてくれる。

クラブツーリズムに見る、新しい旅のかたち 

あこがれの山に登る。夢に見た風景に出合う。初めての味に舌鼓を打つ。きょうも大勢の人々が、思い思いの旅を楽しんでいる。なかでも元気なのはシニアと女性たち。旅をとおして旺盛な好奇心を満たし、充実した日々の糧にする――さあ、秋の行楽シーズン真っ盛り。

山旅を楽しむ(写真提供:クラブツーリズム)

テーマ性をもった旅に人気が

Q.先日、貴社の「秋から始める登山教室」の座学に参加したところ、日曜日の午後にも関わらず180名が参加するという盛況ぶりでした。最近はどんな旅が人気なのでしょうか。

クラブツーリズム広報担当 田中貴さん

田中:日本百名山の影響もあり、「山旅」は根強い人気があります。本格的な山旅だけでなく、世界遺産となった「富士山すそ野ぐるり一周ウォーク」も人気です。富士山のすそ野約153㎞を17回、1年かけて回るという旅ですが、ご自分の体力に合わせて繰り返し参加できる手軽な旅といえるでしょう。これまでに5,000名を上回る方がゴールしています。

「歴史街道あるき旅」も人気です。東海道五十三次を30回に分けて2年半かけて旅をするといった企画もあります。日帰りから始めて、バスツアーと順次レベルを上げ、東京・日本橋から京都・三条大橋までを旅します。

このほか、写真撮影、巡礼の旅、花めぐり、スケッチの旅なども根強い人気があります。人気の旅の多くは、ひとつのテーマ性を持ち、同好の士との絆を深められる旅となっています。共通する趣味の方と友達になり、次の機会もご一緒するといったケースも見られます。

クラブツーリズム広報担当 青木之(ゆき)さん

青木:もうひとつの傾向として、“ひとり旅”があります。お客様に聞くとひとり旅ツアーは、「好きな時間に、好きなところに行けること」という答えがトップでした。友人などとの調整が不要ですから。

私どもの旅のパンフレットにも「ひとり旅」をうたったものが数多く登場しています。パートナーがいても時には「ひとり旅」をと希望される方もいますし、現在は“おひとりさま”を謳歌するという方もいます。通常、お宿は1室複数名でのご宿泊が基本ですが、このツアーはおひとり参加限定ですから、1室1名様でのご宿泊で誰にも気兼ねがいりません。“ひとりの贅沢”をうたったワンランク上の旅も静かな広がりを見せています。

「ひとり旅」でアンコールワットへ(写真提供:クラブツーリズム)

Q.お話を聞くと一昔前と大きく異なる印象ですね。わが国は少子高齢化といわれますが、旅に出かけると元気な高齢者や女性にたくさん出会います。

田中:クラブツーリズムはメディアを使った旅行の販売を1980年にスタートしました。当時はまだ団体旅行華やかなりし頃で、会社の慰安旅行などもさかんに行われていました。ただ、その一方で個人旅行のニーズも高まりつつありました。家庭の主婦の方を含めた女性の皆さん、あるいはシニアの皆さんからは、バスを使った気軽な旅がしたいといった声もたくさん頂戴していました。

アンケートを行うと、「一人でも気軽に参加できる旅の企画を……」というお声はその当時からありました。旅行会社が対応できていなかったのです。

私どもは1995年に「クラブツーリズム宣言」を行い、旅を通して、出会い、感動、学び、健康、やすらぎの種をまき、 はつらつたる喜びに満ちた社会を花開かせていく、ことを使命として確認しました。おなじみのクラブツーリズムのロゴもそこで採用されました。

いまもクラブツーリズムの旅は60〜70代が中心で、ほぼ6割が女性、4割が男性という比率です。

最近では、「どこで、誰と、何を、どのように楽しむか」といった“目的志向型”、同じ趣味・嗜好の方同士の仲間づくりもできる「テーマ旅行」が大きな潮流になっています。シニアの方にとって「旅行」は生活を豊かにする手段のひとつになっています。


「節約したくないもの」のトップは「旅行」

Q.旅行は健康を維持するためにも大切な生きがいというシニアの方が多いとか。

青木:私どもが消費税導入前に行った「旅行とシニアライフに関いる意識調査」では、シニアの方々の旅への熱い思いが伝わってきます。

消費税導入後も「節約したくないもの」をたずねたところ、トップは「旅行のお金」という項目でした。シニアの回答者の72.3%の方が「旅行のお金」だけは「節約したくない」と答えてくださっています。

私どもが企画している「バリアフリー旅行」での話ですが、ご高齢のお客様が旅行に参加するために、一生懸命にリハビリに専念し、要介護のレベルが5から2に下がったというケースがあります。もともと私どもの旅行に定期的に参加されていたお客様で、旅がその方の生きがいだったのでしょう。

私どもの山旅のスタッフたちも「山旅」は高齢者の健康を応援しており、これは一種の社会貢献にも通じることだと使命感をもって取り組んでいます。ちなみに、クラブツーリズムは登山・ハイキングなどの「山旅」で21年の実績があります。

勇壮な山の風景を楽しむ登山者たち(富山・立山。写真提供:クラブツーリズム)

Q.高齢者 や女性のお客様が中心となると、“安心・安全”の確保も大きな課題ですね。

田中:「山旅」は、自然のふところで気象の変化など自然との折り合いをつけて楽しむ旅です。なによりも“安心・安全”を第一に、事前の準備や装備も重要です。

私どもの「山旅」には通常の添乗員のほか、一部のツアーを除いて講師や山岳ガイドまたは地元在住の案内人が同行していますが、慢心だけはないようにしなければなりません。なお、私どもの山旅では気象の変化によって柔軟にコース変更を行う旨、お客様に事前にご理解をいただいています。

Q.ガイドさんや添乗員さんのお話が出ましたが、旅を楽しくしてくれる大きな要素のひとつです。クラブツーリズムでは社員の皆さんにどのような教育を行っているのでしょうか。

田中:旅行業はまさに“人の要素”が大きな産業です。新卒で採用し、一人前の添乗員(TD:ツアーディレクター)に育成するには長い時間がかかります。

私どもではお客様とのコミュニケーションを第一に、有為な人材を採用してきましたが、女性が7割近くを占めています。産休や育休もなくてはならない制度となっています。そうした経験を経た社員たちが再び職場に復帰し、大きな力を発揮しています。


お客様がプロの添乗員に

Q.お客様自身が添乗業務を担う仕組みもあるそうですね。

田中:私どもの添乗員の中には、通常の添乗員以外にフェローフレンドリースタッフ(FFS)というクラブツーリズム専属の添乗員がいます。全国300万世帯の「旅の友」会員の方々の中から、「私も添乗してみたい!」という方々を募り、資格を取得いただいた上で、ご自身の余暇を利用して添乗業務をしていただくというものです。現在、700名の方が登録されています。

得意な専門分野をもつ方が多く、持ち前の旅好きと豊富な人生経験に裏打ちされた案内が、お客様の信頼につながっています。

Q.貴社の旅には「東北の復興支援ツアー」「ボランティアツアー」などユニークなものもあります。本業が社会貢献とつながった取り組みだと思うのですが、こうした企画はいつごろから始まったものでしょうか。

スタッフ(FFS)というクラブツーリズム専属の添乗員がいます。全国300万世帯の「旅の友」会員の方々の中から、「私も添乗してみたい!」という方々を募り、資格を取得いただいた上で、ご自身の余暇を利用して添乗業務をしていただくというものです。現在、700名の方が登録されています。

青木:2011年3月の東日本大地震発生の直後から「旅行会社にできる復興支援はなにか」を考えてきました。そうして生まれたのが「東北の復興支援ツアー」です。東北にお客様をお連れすることで被災地の復興支援につながる、と考え、現地の受入れ状況を確認しながらいまもツアーを継続しています。

最初は、被害の比較的少なかった青森や山形のコースから始め、最近では津波の被害があった地域にも広げています。参加されたお客様からは、「気持ちの部分で被災者の方に寄り添うことができた」や「この災害を風化させてはいけない」など、前向きなご意見を頂戴しています。

Q.旅と聞くだけでわくわくするのですが、今後の旅に対するクラブツーリズムの抱負をお聞かせください。

スタッフ(FFS)というクラブツーリズム専属の添乗員がいます。全国300万世帯の「旅の友」会員の方々の中から、「私も添乗してみたい!」という方々を募り、資格を取得いただいた上で、ご自身の余暇を利用して添乗業務をしていただくというものです。現在、700名の方が登録されています。

青木:先ほど触れた「旅行とシニアライフに関いる意識調査」に戻ると、旅行好きのシニアは、実年齢よりも6.31歳も若く見られ、8割以上が「充実した日々を送り」「年齢の割に元気」という調査結果があります。

旅がお好きだということは、好奇心が旺盛なだけでなく、日々の過ごし方も充実し、それだけ元気なのだと思います。シニアの方々を応援する旅の企画に力を入れていきたいと思います。

田中:2020年には東京オリンピックが開催されます。すでに海外から大勢のお客様が日本に見えられていますが、私どもでは日本国内のお客様と海外のお客様が同じ旅をご一緒に楽しめるバスツアーに力を入れています。

たとえば、りんご、ぶどう、いちごなどの日本の果物は、海外でもブランドとして評価されていますが、そのブランドの果物を“りんご狩り”“ぶどう狩り”“いちご狩り”といった形で収穫を実体験するツアーは海外の方には珍しいようです。

クラブツーリズムには、「旅を通して、出会い、感動、学び、健康、やすらぎの種をまき、はつらつたる喜びに満ちた社会を花開かせていく」という企業理念があります。これからも旅をとおしてお客様の生活がより豊かになるよう応援を惜しみません。(2014年10月)

●クラブツーリズム株式会社

http://www.club-t.com/

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