CSRフラッシュ

エコ技術の“21世紀枠”競う

エコプロダクツ2014から注目出展をレポート

16回目を数えたエコプロダクツ2014。3日間の入場者数は16万1,647人(主催者発表)となった。747社・団体にのぼる出展者のブースの中から、地球の未来に貢献しそうな注目プロダクツを紹介したい。

I. 今年も集まった、地球を勇気づける技術・サービスの数々

トヨタ自動車

世界初の量産型燃料電池自動車「MIRAI」

水素と空気中の酸素の化学反応によって発電して走るという「MIRAI」。世界初の量産型燃料電池自動車の実車に誰もが足を止めた。燃料電池や水素タンク等のユニットも展示され、迫力満点だ。別会場で行われたエコカー乗車体験会でも、「MIRAI」はダントツの人気で午前の部、午後の部とも予約で満杯だった。「MIRAI」の試乗車から降りてきた中年男性に感想を聞くと、「とにかく静か」という声が返ってきた。

世界初の量産型燃料電池自動車「MIRAI」

「MIRAI」搭載される水素タンク

「MIRAI」に搭載される燃料電池

旭化成グループ

薬品を使わず、環境にやさしい殺菌を行う「深紫外LED」

旭化成グループ では、水質の検査や管理などに用いられる分析・計測機器向けの「深紫外LED」を出展。深紫外LEDは、長寿命かつ世界トップクラスの高い発光出力を持ち、殺菌に最も効果的な波長を発光できる。飲料水や食品、空気など幅広い分野で手軽な殺菌効果が期待される。発光ダイオードを殺菌に使うという発想がすごい。

薄い紫色部分が「深紫外LED」

東芝グループ

世界最高効率1.5%を達成した「人工光合成」技術

太陽光エネルギーからメタノールなどの原料となる一酸化炭素を作り出す世界最高効率1.5%を達成した「人工光合成」技術をはじめ防災システムやクリーンルーム技術を活用した植物工場など、地球温暖化の緩和と適応につながる製品群を紹介した。

クリーンルーム生まれの東芝の野菜

パナソニック

光触媒粒子による水浄化技術

新構造の光触媒粒子を考案・合成し、これを水中に分散して高速処理が可能な水浄化技術を開発した。従来の固定型光触媒に比べ最大100倍の反応速度で、地下水などに含まれるヒ素や六価クロムなどの有害金属や難分解性有機物を無毒化する。従来の光触媒粒子では困難とされた処理水中からの使用済み光触媒の回収と再利用もできる。太陽光を利用した小規模の独立型水浄化装置が可能となり、新興国での安全で低コストの飲料水確保が期待される。

担当者が仕組みを説明してくれた

NECグループ

自然災害のリスク管理

温暖化への適応につながる自然災害のリスク管理や救助活動支援のソリューション、水資源の漏水監視や浄水対応などが可能に。家庭用蓄電システム、エネルギークラウドなどを出展。

富士通グループ

気候変動に適応するICTを提案

ICT(情報通信技術)がさまざまな分野のノウハウ、暗黙知の見える化に貢献し、たとえば気候変動に左右されない農業の実現が可能になる。スーパーコンピュータを活用したシミュレーションによる災害の予知・予測、防災などの社会課題の解決も。人、車両、道路インフラなどさまざまな場所に設置されたセンサー情報を分析することで、都市防災・減災にも役立つ。ビックデータを活用した、安心・安全な上水・上下水道事業への取り組みも紹介。

三菱電機グループ

「省エネ、創エネ、制エネ(エネルギー制御)技術」

「ビル・工場の省エネゾーン」では、自社工場における省エネ機器の導入効果や現場改善のノウハウなど省エネ推進に役立つ情報を提供。「くらし・社会の環境技術ゾーン」では、三菱自動車アウトランダーPHEVに搭載される同社の電動パワーステアリング用モーター・コントローラーの効果の実車による体感、家電14製品と連携するホームエネルギーマネジメントシステム「三菱HEMS」を展示。

AGCグラスプロダクツ

窓ガラスに後付けできるLow-Eガラス「アトッチ」

今あるガラスに室内側から省エネ性能の高いLow-Eガラス(熱の放射を防ぐ特殊な金属膜をコーティングしたガラス)を貼りつける画期的な工法。ビルや商業施設などに多く見られる開閉できないはめ殺しの窓(FIX窓)などの省エネリフォームに最適。 施工コスト、ランニングコスト、年間空調エネルギーコストの削減に貢献する。

八洲電機

再生可能エネルギー活用「小規模高効率発電システム」

永久磁石発電機を有する発電装置で回転速度が変動しても出力電圧を一定に保つことが可能に。風速で変化する小規模風力発電、水量で変動するマイクロ水力発電の発電効率の大幅向上が見込める。既存技術は、変動で生じるエネルギーをダミー抵抗器で消費させて出力電圧の一定化を図ってきたが、このシステムではエネルギーを無駄に消費せず、ダミー抵抗器も不要となり、システムの簡素化、低コスト化を実現している。

京都紋付

黒く染め直して、もう一度着る「PANDA BLACK」

着なくなった服を黒く染め直して、もう一度着るリウェアプロジェクト。服のリユースを通じて、限られた地球の資源を大切に使うライフスタイルを応援するもの。創業以来100年間、京黒紋付染で「黒を極めること」に専念してきたが、PANDA BLACKではこの伝統技術を用いて、着なくなった衣類を丁寧に黒染めし、再生している。リウェアプロジェクトは国際環境保護団体WWFが提案している。


II. 2014年エコプロダクツ大賞から、エコプロダクツ部門の3社を紹介

[経済産業大臣賞]

富士ゼロックス

カラー・オンデマンド・パブリッシングシステム「Versant™ 2100 Press」

必要な印刷物を、必要なタイミングで、必要な量だけ、必要な形で印刷するカラーオンデマンド印刷機。新開発の小型ベルトロール定着器を搭載し、小型・低コスト・軽量化で優れたパフォーマンスを発揮する。独自の部品再使用システムによるリユース・リサイクルを徹底している。少数部数を高速で印刷し、用紙の削減につなげる。

Versant™ 2100 Press

[国土交通大臣賞]

マツダ

小排気量クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D1.5」

マツダブースでは、「2014-15 日本カー・オブ・ザ・イヤー」受賞した新型「マツダ デミオ」とともにデミオに搭載したディーゼルエンジン「SKYACTIV-D1.5」を展示。同エンジンは、ハイブリット車並みの燃費を達成し、同時に高価なNOx後処理装置を使うことなく、NOxやススの発生量を低減し、クリーンディゼル市場の拡大に貢献するものと期待されている。

「SKYACTIV-D1.5」エンジンとデミオ

[環境大臣賞]

味の素

「ほんだし®」用包装材料に関する環境負荷低減に向けた取り組み

主力商品「ほんだし®」の包装設計見直しが以下の3点で評価された。

  1. ほんだし®「60g瓶」:サトウキビの廃糖蜜などバイオマス素材を活用したキャップ、シュリンク(瓶の装飾ラベル)の脱石油原料化。
  2. ほんだし®「120g箱」、「450g箱」:高機能樹脂を用い包装仕様を合理化、包材使用量大幅削減。
  3. ほんだし®「小袋20袋入箱」:パレット積付け方式変更による在庫スペース、物流効率の改善。


III. キーワードは“ゼロ”、次世代技術で成長と環境保護を両立

山本良一エコプロダクツ2014実行委員長(東京都市大学特任教授)

気候変動が異変の引き金に

エコプロダクツ2014の開催時、南米リマではCOP20が開催されています。来年12月にパリで開催されるCOP21で最終決定される2020年以降の温暖化防止に向けた枠組みづくりが目的ですが、現時点(12月11日)で難航しています。

昨年11月、フィリピンを襲ったスーパー台風で7,300名もの尊い命が奪われました。今年1月にはアメリカが大寒波に見舞われました。2月にはロンドンのテームズ川で大洪水です。日本でも2月に東京で大雪が降ったかと思うと、5月に三鷹市周辺でひょうが降りました。夏の北京市で41.5℃という最高気温を記録しています。ほかにもバルカン半島の大洪水などさまざまな異変が地球を襲っています。今年はおそらく全世界の平均気温が過去最高になると言われています。

ヨーロッパの人工衛星の観測によると、いま北極と南極で年間4,500億トンもの氷床が解けていることが分かりました。私たちはこうした自然界の異変を黒船来航に匹敵する脅威ととらえなければなりません。幕末に黒船が来航したとき、われわれ日本人はこれにいかに立ち向かうか、さまざまな知恵を出しました。

臨界点の到来に歯止めを

いま私たちは平均気温の上昇という非常事態の真っただ中にあります。加えて生物多様性の喪失、資源の枯渇化、人口の増大などの問題とどう向き合うかが問われています。

COP20では平均気温の上昇を産業革命前から2℃以内に抑えることが課題となっています。プライス・ウォーター・ハウス・クーパースの一番新しいレポートによれば、2℃以内に抑えるためには、年率6.2%ずつCO2 を削減していかなければいけないとしています。

京都議定書は15年かけて5.2%という削減目標でした。それも先進国だけの目標です。いま私たちが直面しているのは、先進国も途上国も新興国もないのです。みんなが一体となって年率6.2%ずつ削減しないといけないわけです。それをやらないと30年くらいで地球の平均気温は2℃を突破します。

この問題を解決するため、最近英国やインドネシアなど7カ国の有識者が「ニュークライメート・エコノミー」という報告書をまとめました。これからの15年間で社会インフラに90兆ドル(1ドル10円とすれば9,000兆円)を投資しなければならないと訴えています。問題はそのお金をどうやって集めるかにあります。

炭素税で新しい投資を

私個人はグローバル・カーボーン・タックス(炭素税)しかないのではないかと考えています。世界一律にCO2の排出者から炭素税を取り、各国の人口比で割り算して戻すという方法が一番よいと思います。世界全体で炭素税が実現すれば年間600兆円くらいの大規模な投資を、エコプロダクツ展に出品されているような技術・サービスに投資できます。地球を救えるのは革命的な技術・サービスなのです。

最近、世界の著名な80名の宗教者・倫理学者・神学者が共同で声明を発表しました。化石燃料関係の会社の株はすべて売り払い、太陽光、風力など再生可能エネルギーの会社の株式を買いなさいとメッセージを出しています。

人類全体がそこまで追い詰められているのです。資本市場においてもグリーン・エコノミック・グロースに向けた転換が起ころうとしています。グリーン経済で成長する方向に転換しなければ、国際競争で後れを取ってしまうというわけです。

持続可能な社会に向けたキーワードは「ゼロ」の実現です。温暖化ガスの排出をゼロにする、「ゼロエミッション」や廃棄物をすべて再利用する「ゼロ・ウェイス」も欠かせません。貧困をなくす「ゼロポバティー」や紛争をなくす「ゼロコンフリクト」にもつながります。(2014年12月)

※このコメントは、12月11日のエコプロダクツ2014階催時の山本良一実行委員長のごあいさつを当編集部で編集・再構成しました。文責は当編集部にあります。

■詳しい情報は、エコプロダクツ2014

http://eco-pro.com/eco2014/

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