識者に聞く

CSRの普及と実践を目指して、(新)CSR検定始まる

株式会社オルタナ代表の森摂さんに聞く

2008年3月に始まった「サステナビリティCSR検定」に代わり、このほど、「(新)CSR検定」が実施されることになった。CSRに携わる人には興味深い検定名だが、これまでの「CSR検定」とどう違うのか、その目的や意義、そして受験者のメリットなどを聞いた。(CSRマガジン仙台スタッフ 藤森有紀)

3級公式勉強会で問題解説をするオルタナ代表の森摂氏(仙台会場にて)

(新)CSR検定3級とは?

(新)CSR検定の目的

「(新)CSR検定」は、企業社会責任フォーラム、株式会社オルタナ、公益財団法人日本財団が共催で実施する検定で、今年3月8日初めて3級の試験が行われる。これまでの「サステナビリティCSR検定」を大幅に刷新した目的は、より多くの人にCSRを理解してもらい、検定合格者が社会の中でCSRの価値を広め、社会や人を変えていくことにあるという。

2007年から環境やCSRをテーマにした情報誌「オルタナ」を発行している株式会社オルタナの森摂・代表取締役編集長は、(新)CSR検定の主催者として「これから必ず“CSR検定合格”の社会的な意味が高まってくるはず」と言う。なぜなら、「多くの従業員がCSRを理解し、事業を通して顧客や消費者、引いては社会に満足を与えられれば、その企業が社会からの信頼を得られ、未来の顧客を創造できるから」に他ならない。そのためにも、CSR検定を従業員の意識向上に役立てて欲しいと言う。

級別を導入し、広く社会を巻き込む

新しい検定では、これまでと異なり、『級』が取り入れられる。3月に実施される3級は初級に当たり、CSRの敷居を低くして、多くの人にCSRを広めたいとの主催者の思いで設けられた。その為、検定内容はCSRの基礎知識をはじめ、その重要性や、社会的意義を問う問題が出題される。

検定合格者へのフォロー

(新)CSR検定サポート事務局は、これまで以上に、合格者に対するフォローも強化するそうだ。各地で検定合格者同士が情報交換をしたり、交流したりすることで、CSRの考え方を社会に広めていくことを視野に入れている。CSRは一人ではなかなか実践が難しい事も多いが、志を同じくする仲間がこの検定を機に繋がりを作り、ムーブメントを起こすことが期待されている。

第1回 (新)CSR検定3級試験の概要

【日時】2015年3月8日(日)10:00~11:20(試験時間80分)
※試験会場によっては、10:15または10:30スタート

【会場】札幌市、仙台市、さいたま市、東京都(2会場)、横浜市、長野市、名古屋市、三重市、大阪市、福岡市、熊本市

【問題数と合格ライン】 40問(選択式)、80%以上正解で合格

【受検料】個人4,320円、団体3,780円、中・高・大学生3,240円(いずれも税込み)

【申込みフォーム】下記フォームより申込み(2015年2月25日締切り)

https://docs.google.com/forms/d/1Z8-ueQNh_FICKlTdi6AKSl0bK_LEf6Z3moFSzcGjrhw/viewform

【お問合せ】CSR検定委員会(株式会社オルタナ内)
Email: kentei@alterna.co.jp Tel. 03-6407-0266

(新)CSR検定3級の公式テキストを読もう!

検定を受けるなら、是非読んでおきたい本がある。その名も「(新)CSR検定3級 公式テキスト」(発行:株式会社オルタナ、発売:ウィズワークス株式会社1,512円、A5判・112ページ)。
テキストは4章から成っており、各章に6~12の項目が載っているのだが、いずれも見開き2ページで完結するので、ちょっとした時間にどこからでも読めて、忙しい人にもぴったりだ。また、それぞれの項目は別々の執筆者(いずれもCSRの専門家43人)が担当しているので、偏りがなく、幅広い知識や事例が網羅されている。実際の検定試験ではこの公式テキストに載っている43の項目から40問が出題されるので、受検予定者は必読だ。

では、内容を見てみよう。

<第1章>CSRの歴史と社会的背景

CSRは近年になって海外からもたらされた考え方のように捉える向きもあるが、実は日本には安土桃山時代からこうした考え方が存在したという事実や、誰もが知る世界的企業がCSRの概念を持たなかったためにどのような社会的制裁を受けることになったかなど、トリビア的なものから世界の動きまで、幅広い内容になっている。

<第2章>社会の中での企業の役割

“コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ”と言うからには、やはり、企業と社会の関わりについて知っておきたいところ。この章では、企業は社会に於いてどんな存在であるべきか、企業が社会から求められているものは何なのかなど、企業人として日々の活動の中でも踏まえておきたい考え方が述べられている。また、社会、とりわけ日本にはどんな社会課題があるのかにも触れている。こうした課題を知り、企業の力を使って解決する事が、CSRの神髄とも言えるのだ。

<第3章>社会や地域と共に働くということ

企業人として忙しく働いていると、社会との繋がりや社会貢献に手が回らないという人もいるかもしれない。しかし、企業活動は本来、社会や消費者のためにあるのだから、社会と無関係で仕事はできない。ではどうしたら社会と繋がりながら働けるのか?そのヒントとして、NPOとの協働やワーク・ライフ・バランス、プロボノなどが紹介されている。こうした選択肢のどれかに、自分ができる働き方があるかもしれない。

<第4章>必須キーワード

人は、言葉を知り、その概念を理解することで、課題や現象を明確に把握することができる。そしてその結果、自分の意識や行動が変わることがあるだろう。この本では、そうした変化を期待して、CSRで使われる12の言葉を取り上げ解説している。“言葉は何となく知っている”という人も、改めてチェックしておきたいキーワードばかりだ。

公式勉強会に参加しよう!

検定受検前には、公式勉強会で学ぶ機会がある。検定の主催者でもある森摂氏が、想定問題集を使って解りやすく説明してくれる。例えば、適切な文を選択する設問では、正解だけでなく、不正解の選択肢はどこがどう不適切なのか、その背景、それにまつわる実例、そして公式テキストの何ページに関連記述があるかまで解説してくれるので、非常に解り易い。この想定問題集はインターネットからダウンロードもできるので、是非活用してほしい。

(新)CSR検定3級試験 想定問題と解説
●2015年の公式勉強会の予定 http://www.alterna.co.jp/14418 

勉強会に参加して

日本人は社会的モラルの高い人が多いと言われている。その為、例えば決められたゴミの分別などはきちんとでき、他国の環境問題担当者が視察に来る程だ。一方で、他者の為に、という精神はもしかしたらまだ諸外国を見習わなければならない部分も多いかもしれない。他者に満足を与えることがCSRの根本的な考え方だとすれば、日本はまだまだこの分野では“伸び代”があるし、日本人の真面目さや高い倫理観をもってすれば、CSRの更なる普及はそれほど遠いことではないと思える。この新CSR検定をきっかけに、一人ひとりが「他者のために何ができるのか」を考えていけたら、社会的課題を少しづつ解決できるのではないだろうか。(2015年2月)


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