識者に聞く

子どもたちを性の商品化から守れ!

NPOが啓発マンガ『ブルー・ハート』を発刊

人身取引被害者サポートセンター ライトハウス(代表・藤原志帆子、東京)は、このほど子どもを性の商品化から守るための啓発マンガ『ブルー・ハート』を発刊した。性被害者の低年齢化とともに、子どもたちに直接訴えかける大切さを痛感し、1年がかりで発刊にこぎつけたもの。ライトハウスのPR・広報担当、瀬川さんに経緯を聞いた。

「BLUE HEART~ブルー・ハート~」表紙+裏表紙

「BLUE HEART~ブルー・ハート~」表紙+裏表紙

子どもたちの身近にある性被害の危険性

Q マンガによる啓発を思いつかれたのはどのようなきっかけからですか。

瀬川:JKビジネスというのをご存じですか。女子高校生を商品化するもので、「JKおさんぽ」は女子高校生とお散歩してデート気分を味わえるというものですが、実態は売買春の温床になりかねないほど危うい側面があると言われています。女子高校生の間ではアルバイト感覚で広がっています。

啓発マンガ2

また最近では、中学生や小学生が着エロやジュニアアイドルなど性の商品化の対象となっています。

18歳未満の児童の性的搾取被害は年間5,000件以上にものぼり、児童ポルノ事犯の検挙数は右肩上がりとなっています。ボーイフレンドなど近しい間柄の人間によるリベンジポルノ犯罪被害も広がっています。

このような深刻化する子どもの性の商品化を食い止めるためには、子ども自身が自分の身を守るための知識や智慧を身につけ、周りの大人たちも子どもが隣り合わせの危険を知ることで、被害を未然に防ぐことができると思い、マンガを制作いたしました。

Q 家庭や学校の対応も後手に回っているという印象ですが。

瀬川:家庭で買い与えたスマホやゲーム機が落とし穴になるケースも少なくありません。こうした機器を、ネットに潜む危険を教えずに、子どもたちに買い与えている大人の責任も問題視しなければなりません。

また、学校の先生方もスマホを介して子どもたちがどのような被害に遭う危険があるか等について、なかなか現状を把握できていない状況があります。

私たちのこれまでの経験では、ごくありふれた子どもたちが、ふとしたことから被害者になったり、加害者になったりしています。ある特定の子どもたちの問題ではなく、誰にでも起こりうる問題であることを社会で広く共有していくことが大切です。

Q ライトハウスには実際に相談は寄せられているのでしょうか。

瀬川:ライトハウスは、人身取引被害者のための相談窓口を運営しています。私たちに寄せられた相談のほとんどは、第三者からの通報です。子ども自身が私たちのホットラインに相談するケースは極めて稀です。

その理由の一つに、性被害の話はなかなか自分から人に話しづらいことがあると思います。また、このような話をできる大人が周りにいない場合が多くあるのではと思っています。このマンガを読んだ子どもたちが、安心して相談できる大人の存在を知ってくれたら、また、大人たちが、子どもたちにとってそんな存在となれるように、このマンガを通して学んでいただけたら嬉しいです。

Q タイトル『BLUE HEART~ブルー・ハート~』に込められた思いとはどのようなものですか。

瀬川:「BLUE HEART~ブルー・ハート~」とは、被害に遭う、あるいは被害に遭った子どもたちの悲しみや孤独を表しています。私たちは、そんな被害者の心に共感し寄り添うという思いを込めました。と同時に、子どもたちを搾取する加害者や、子どもの性の商品化を見て見ぬふりする傍観者の冷徹な心を許さない、という意志を表しています。

一人でも多くの子どもたちに、そして大人たちに

Q マンガはどのような内容ですか。

瀬川:実話に基づいた3部構成のストーリーとなっています。第1話は「簡単で高収入なバイトのはずが…」と題して、JKビジネスに誘われた女子高生のお話です。第2話 は「親切だったお兄さんがいきなり…」と題し、児童ポルノ被害に遭った男子中学生のお話です。そして第3話は「軽はずみに送った写真で脅され…」と題し、女子高生のリベンジポルノをテーマにしています。

○第1話「簡単で高収入なバイトのはずが…」から

○第1話「簡単で高収入なバイトのはずが…」から

企画にあたっては、ライトハウスがこれまで出会った若者の被害事例をもとに、東京、岐阜、北海道、児童養護施設などの高校生の意見や感想を集め、若者の生の声をマンガに反映するようにしました。子どもたちの目線で、分かりやすく、かつリアルに描かれています。

○第3話「軽はずみに送った写真で脅され…」から

○第3話「軽はずみに送った写真で脅され…」から

Q プロジェクトに参加してくれた高校生たちの感想はいかがでしたか。

瀬川:ある高校生の男子は、「怖い内容だったけど、真実と現実が強く伝わってきた」と語っています。また、別の高校生は、「学校で配布される“相談ダイヤルカード”の大切さを実感した」とも述べています。もう一人の女子高生は、「弟が性被害に遭っていたこともあって…。男の子にも読んでもらいたい」と語っています。

Q 男子生徒が被害に遭うケースもあるのですね。

瀬川:男子が被害に遭うケースもかなり見られます。男の子の場合、女の子以上に声を上げにくいので、誰にも話せずに苦しい思いをしている男の子も多いはずです。

○第2話「親切だったお兄さんがいきなり…」から

○第2話「親切だったお兄さんがいきなり…」から

被害に遭うのは決して女の子だけではなく、マンガに描かれている成人男性による未成年の男の子への性暴力や性的搾取は、とても深刻です。男の子のストーリーは必ずマンガに盛り込みたいと思っていました。是非たくさんの男の子にもこのマンガを手に取っていただきたいのです。

Q マンガの申し込みはどのようにすればよいのでしょうか。

瀬川:ライトハウスのホームページから申し込みできます。マンガは無償ですが、送料(1冊205円)をお願いしています。

初版は1,000部ですから、お早目にお申し込みください。増刷も検討中です。皆さまより寄付のご支援をいただけたら幸いです。また、4月には電子書籍を無償配信する予定ですから、もっと多くの方にご覧いただけるはずです。

啓発マンガ6

ライトハウスについて

ライトハウスは、性的搾取や労働搾取を目的とした「人身取引」の被害者の救済を専門にしている、NPO法人です。「相談窓口」「啓発・研修・支援者育成」そして「政策提言」の3つの活動を基本に、人身取引のない社会を目指しています。
●フリーダイヤル(0120-879-871) 月〜金10時から19時まで
●メール(soudan@lhj.jp)、
●LINE(ID:LH214 表示名:ライトハウス)

■ 寄付のお願い

ライトハウスには、強制的な売春やポルノ出演など、暴力的に性を商品化される犯罪に巻き込まれた若者の相談や被害の通報が届きます。緊急を要する救済や弁護士や警察らと連携した専門的な支援は、100%みなさまのご支援により成り立っています。被害のトラウマに悩む子どもや若い女性にライトハウスの支援を届けるために、どうか皆さまのご寄付をお願い申し上げます。
寄付はこちらから http://lhj.jp/menu03/sub01

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