CSRフラッシュ
三陸の若きフィッシャーマンたちの挑戦
フィッシャーマン・ジャパンの担い手育成「TRITON PROJECT」始動!2015年7月20日海の日、宮城県沿岸部で、恐らく日本初の漁業関係者のためのシェアハウスがお披露目された。プレス発表会で語られた若きフィッシャーマン達の高い志とその裏にある様々な不安。これからの水産業を変えるかもしれない注目のプロジェクトが始まった。(CSR Magazine.com仙台スタッフ 藤森有紀)
フィッシャーマン・ジャパンのこと
シェアハウスの話をする前に、運営母体である「フィッシャーマン・ジャパン」(以下、FJ)について触れておこう。
FJは、平均年齢30歳の三陸沿岸の漁師たち14名の団体だ。女川の銀鮭漁師、十三浜のわかめ漁師、歌津のホタテ漁師などが、「これからの水産業を自分たちの手で変えていきたい!」という思いで2014年に設立した。水産業の課題は色々あるが、中でも、労働条件が過酷(休みもシフトも無く、家族で無理をすることも多い)や、漁師人口の減少(危険で不安定なイメージがある漁師になりたがる若手は少なく、現役漁師も高齢化、震災で被害を受けた漁師が廃業する例も)、そして東北の水産品への風評被害も深刻だ。このままでは、世界的な漁場と言われるこの三陸の水産業が無くなってしまう!という危機感があったという。
そこで若い漁師たちが立ち上がった。海に出るだけではなく、市場調査や商品開発、販売やマーケティングを学んで、「稼げる、カッコいいフィッシャーマンを目指そう!」というのだ。因みに、FJが言う「フィッシャーマン」は、漁師だけではない。加工場や、鮮魚店などの販売チャネル、水産業の情報発信をするIT専門家まで、同じ志と高い能力を持って水産加工業に携わる人たちを指す。これは、「水産品を獲るだけが水産業ではなく、様々な人が関わるサプライチェーンに乗って消費者の元に届いてこそ、皆が水産業に目を向けてくれる。だからそういう人はフィッシャーマン」ということなのだ。
理事の鈴木真悟さんは言う。「皆が皆、漁師になれるわけではない。普段は都市部で仕事をし、時間の取れる時に水産業に携わる『半漁人(はんぎょじん)』でもいいんです。とにかく水産業に興味を持って欲しい。そして2024年までに、フィッシャーマンを1,000人に増やすことが目標です」。
フィッシャーマン・ジャパン(FJ)活動の4本柱
◆商品開発
漁師ならではの経験と知恵を活かし、これまでにない水産加工品の開発を行う。例えば”ほや”の鮮度を保った商品や、わかめの煮つけなどを自らの手で開発している。
◆営業
これまでは魚市場に卸すだけだった海産物を、漁師自らが消費者の所へ出て行って、顔の見える流通を行うというもの。いわゆる水産業の六次化だ。これにより、消費者から学ぶこともあるし、メニュー協力をしてくれる飲食店や、売場を貸してくれるスーパーなど、今まで直接関わりがなかった業種との繋がりも出来てきた。
◆イベント・催事
一般の方が海に触れる機会を増やし、少しでも海のすばらしさや海産物の美味しさを知って欲しいという思いから、「ブルーツーリズム」や「TRITON CAMP」などのイベントも企画・催行している。イベントでは、釣りの未経験者でも漁具を持たずに船釣り体験ができる「手ぶらでフィッシング」を行っている。また、首都圏にも出かけて漁師が魚の捌き方を直接手ほどきしたり、美味しい食べ方を伝授したりもしている。
◆担い手育成
ボランティアなどがきっかけで一般の方が水産業や漁師に興味を持ってくれても、問合せ先がわからない、受け入れてくれる船や宿が無い、という問題に対処するため、FJのメンバーが経営する会社が雇用したり、漁業体験ができる機会や宿泊所を提供する試みを行っている。
「TRITON PROJECT」始動!
4つ目の柱「担い手育成」の一つが「TRITON PROJECT」だ。新しく漁師になる人が住んだり、漁業に興味を持った人が短期滞在したりできるよう、まずはFJメンバーの親戚が所有する使われていなかった空き家(女川町、石巻市十三浜)や番屋(南三陸町歌津)を、地元のクリエーター集団「巻組」の協力を得てシェアハウスや拠点(TRITON BASE)に改装した。改修費は1軒約400万円。ヤフー株式会社が実施したチャリティー企画「Search for 3.11」や、キリンビール株式会社「キリン絆プロジェクト」などからの寄付金と、空き家を提供するFJメンバーの自己負担で賄った。
もちろん「TRITON PROJECT」は単に家や拠点を提供するだけではない。そこに人が集まり、繋がることが大切なのだ。だから、フィッシャーマンの長期滞在はもちろん、ある季節だけ短期で漁業アルバイトをしたい人や、漁業体験のための1泊2日のキャンプ、水産加工業のための教育拠点など、利用範囲はアイディア次第だ。また、繁忙期にある浜で人手が足りなければ、別の浜から応援に行くフィッシャーマンの宿にもなる。
これからの水産業
これまでになかった若手漁業者の新たな試みは、もしかしたらベテラン漁師や漁協、全国の他の浜から賛否両論があるかもしれない。しかし、10年後、20年後の近い将来、実際に水産業を担うのは、今の20~30代なのだ。意見やアドバイスに耳を傾けながらも、水産業の中心となっていくこの世代が納得し、やり甲斐を感ぜずしてその先があるだろうか? そしてまた、その世代に続く次の世代を育てなかったら、日本の水産業は存続するだろうか? 今、彼らが立ち上がってくれたことは、日本人が将来も日本の魚を食べ続けられるかを左右する大きな一歩なのかもしれない。
TRITON PROJECTの活動
現在の3拠点「TRITON13」「TRITON ONAGAWA」「TRITON UTATSU」をご紹介します。夏休み中には各拠点ごとにFJメンバーが漁師体験を手ほどきする1泊2日のキャンプも実施します。
「TRITON PROJECT」の詳しい内容はコチラ
◎TRITON 13(十三浜)
〒986-0201 宮城県石巻市北上町十三浜大指87
わかめの養殖を行う「浜人」のフィッシャーマンがここに住みます。
http://tritonprojectblog.tumblr.com/triton13
★7/25(土)~26(日)TRITON CAMP:FJの代表理事・阿部勝太さんが日本屈指のわかめや、ホタテ漁を手ほどき。漁師の世界を垣間見る1泊2日のキャンプ。
◎TRITON ONAGAWA(女川町)
〒986-2244 宮城県牡鹿郡女川町桜ケ丘8-2
TRITON ONAGAWAは銀ジャケの養殖を行う株式会社マルキンのフィッシャーマンが住みます。http://tritonprojectblog.tumblr.com/tritononagawa
★8/20(木)~21(金) TRITON CAMP:FJの銀鮭漁師・鈴木真悟さんに銀鮭の養殖を学び、更に、ゼロから漁師を目指したホヤ漁師・渥美貴幸さんに出会う1泊2日のキャンプ。
◎TRITON Utatsu(歌津地区)
〒986-0700 宮城県本吉郡南三陸町歌津泊浜101
TRITON UTATSUはTRITON STATION。加工場と事務所を兼ねています。
http://tritonprojectblog.tumblr.com/tritonutatsu
★8/8(土)~9(日) TRITON CAMP:FJの高橋直哉さんから海の偉大さを教わる1泊2日のキャンプ。
-「プチ見習い漁師体験」ホタテの水揚げと、出荷までの処理を体験!
-「手ぶらでフィッシング」船釣りのおもしろさや遊び方を知る!
-「海鮮BBQ」三陸の若手漁師たちと一緒に獲れたてのシーフードをいただく!
<関連サイト>
●フィッシャーマン・ジャパン公式サイト
●TRITON PROJECT BLOG
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