企業とNGO/NPO

古本で社会活動の支援を

難民支援協会が新しい資金集めを進める

シリア難民などが向かっているのは欧州だけではない。日本にも年間5千人が難民申請をしているが、認定率は0.2%と極めて低く、支援団体の苦しい運営が続いている。難民支援協会では、古本を取り扱うバリューブックスと提携して、3年前から古本の寄付による活動資金集めを始めている。

認定NPO法人難民支援協会広報部 野津 美由紀さん

認定NPO法人難民支援協会
広報部 野津 美由紀さん

読み終わった本で気軽に寄付できる「チャリボン」

Q.古本による寄付を募っているそうですが、これまでの反響と実績からお聞かせください。

野津: 2012年の11月からこの仕組みを導入しました。古本の寄付から生まれる収益金がチャリティ(慈善の精神に基づいて行 われる公益的な活動)に活用されるという意味から、「チャリボン」と呼ばれています。

支援者の方にチラシを送付したり、メールマガジンやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス:コミュニティ型のWebサイト)を使った告知を行っています。

もうすぐ3年になりますが、コンスタントにご支援があり、今年8月末までの累計で、冊数で149,787冊、寄付金額で3,549,275円となりました。これまでにチャリボンの寄付に参加いただいた支援者の数は1,657人にのぼっています。

写真提供:バリューブックス(以下同様)

写真提供:バリューブックス(以下同様)

Q.「チャリボン」の仕組みはどのようにして考案されたのでしょうか。

野津: 私たちが提携している企業に㈱バリューブックスという古本の買取・販売の専門会社があります。バリューブックスさんが、家庭などで眠っている古本の有効活用をするとともに、社会課題の解決にも役立てることができないかと考え、この仕組みを考案されました。

バリューブックス寄付事業部マネージャーの橋詰昌徳さんによれば、「もしかしたら捨てられてしまったかもしれない本が『本の寄付』といった間口を設けることでリユースにつながる点、また販売に向かない本も近隣の諸施設、学校、NPOさんに提供する流れがつくれ、古本屋としての役割が果たせている」と語っています。

本を寄付する方は、「読み終わった本を、次の誰かに届けることで“知の共有”ができると共にモノを無駄にしない気持ちも育むことが出来る」、NPO法人の方にとっては「『本をください』と呼び掛けるのは『お金をください』に比べるとハードルが低く、新たな支援者とつながりやすくなり、活動の支援になるのでは……」と考えたようです。CSR(企業の社会的責任)の精神である【三方良し】にぴったりの仕組みだと述べています。

当初は参加するNPOの登録団体も少なかったですが、ぜひ難民支援協会もエントリーしたいということで登録しました。

Q.「チャリボン」はどのようにして集められるのですか。

仕組みはいたって簡単です。古本を寄付されたい方は、
1. 古本やDVDを空き箱につめる
2. 下記のウェブサイトから集荷を予約する
チャリボン(運営会社バリューブックス)
http://www.charibon.jp/
0120-826-295
電話受付時間:10:00〜 21:00(日曜日のみ10:00〜 17:00) 
3. 集荷がきたら箱を渡すだけ!

写真提供:バリューブックス

写真提供:バリューブックス

集荷は5点以上なら無料となっています。集荷に要する費用はバリューブックスさんが負担されています。バリューブックスの橋詰さんによれば、「利用者全員が5冊ずつで送ってきたら当社は潰れてしまうかもしれません(笑) 是非多くの本を送っていただければと思います」と話していました。

実は、この仕組みには、難民支援協会以外の団体も参加しています。どのような団体に寄付するか、寄付者が選べることも魅力的な仕組みだと思います。

バリューブックスさんは、専門書などに強いため、日々の実務で弁護士や大学の先生方と連携することの多い弊会のような団体は特に相性が良いのかもしれません。

寄付の対象となる本は、後ろにISBN(国際標準図書番号)のバーコードが付いたものであれば、専門書でなくても大丈夫です。自宅の整理を兼ねて取り組んだ結果、お一人で2,000冊近く寄付された方もいます。

年末にはバリューブックスさんのご厚意で、古本だけでなく、年賀状の書き損じハガキなども寄付の対象になりました。

   古本の整理作業に追われるバリューブックスのスタッフのみなさん


古本の整理作業に追われるバリューブックスのスタッフのみなさん

Q.難民支援協会の担当者としては、この仕組みをどのような評価されていますか。

野津: 私たちには願ってもない仕組みとなっています。先日、この仕組みが大手新聞社に取り上げられ、「どうやったら寄付ができますか」という問い合わせがいくつもありました。

日本は寄付文化が未成熟だといわれていますが、年代を問わず多くの方がこうした仕組みに関心をもって参加されていると実感し、心強く思っています。

難民支援協会としては、せっかく生まれたこの仕組みを発展させるためにも、現在は個人の方が中心ですが、企業・学校・団体にも参加を募ることができればと考えています。古本の活用をとおして日本社会における寄付文化の醸成にも寄与できればと思っています。

企業などからボランティアの派遣を受け入れていないのか、という問い合わせをときどきいただきますが、難民支援協会の事務所はスペースが限られており、なかなかお応えできていません。活動資金になる古本の寄付は多ければ多いほどありがたいので、ボランティアメニューを増やしたいと考えている企業・団体の皆さまには、ぜひ、ご検討いただきたいです。

寄付のお願いはSNSでシェアされにくい傾向にありますが、古本を通じた寄付はとても積極的に拡散されます。本棚の整理が支援にもなり、誰でも気軽に参加できる仕組みだからではないでしょうか。

今後は企業・学校・団体などへも、チャリボンへの参加を幅広く募っていきたいと思います。

参加して終わりではなく、参加をきっかけに日本の難民問題を知っていただけるよう、参加者にはお礼状とともにニュースレターなどを送っています。それを機会にマンスリ―サポーター(毎月定額の寄付者)になった方もいらっしゃいます。

難民支援5


世界の人権侵害や紛争は、日本にもつながる課題

Q.欧州に向かうシリア難民などの取り扱いが世界的な大問題となっています。それにしても日本の難民認定率の低さは見直されなければいけませんね。

野津: 昨年の日本の難民認定率は0.2%です。日本で難民申請した方は5,000人に及びますが、同じ年に難民認定されたのはわずかに11人という少なさです。

日本の難民認定制度は法務省の入国管理局が窓口で、入国管理の枠組みの中で難民保護を行うという構造になっています。「保護」よりも「管理」に重点が置かれているのです。

難民申請をしてから結果が出るまでに、長い時間がかかるのも日本の特徴です。待機期間は平均3年です。最終的に難民認定された方にいたっては、平均6年も待っています。難民をいかに保護するかではなく、難民でない理由を5〜6年かけて探し出しているのではないかと思ってしまうような長さです。

日本も「難民条約」に入っています、当然ながら難民を保護する国際的な義務はあるのですが、国際的に比較し、だれが難民かという条約上の解釈が非常に限定的です。

具体的にいうと、いま多くのシリア難民などが欧州に向かっています。しかし、欧州だけの問題ではありません。すでに日本でも60人以上のシリア難民が難民申請をしていますが、これまでに3人しか認定されていません。

難民申請している方の多くは、シリア国内で反政府活動して身に危険がせまって日本に逃れてきたのですが、日本政府の言い分は「シリアで反政府活動をしている人は皆危ない目にあっているわけで、その人の固有の危険性ではないので、難民として認定できない」という解釈です。

個人を特定して迫害を受ける危険が認められないと、難民として認定しないというわけです。証拠を持って逃げることは簡単ではないので、多くのケースでは物的な証拠が不十分ななかでそれを立証しなければならず、非常に厳しい審査となっています。

先日、難民認定を求めた裁判で勝訴したにもかかわらず、国から再び不認定とされたスリランカ出身の方の事例が報道で話題になりました。裁判で勝訴しても認定されないケースは、さすがにこれまでほとんど聞いたことがなかったので、NPO団体などではかなり大きな問題として議論になりました。

日本社会の難民への認知の低さという問題もあります。最近、シリア難民のニュースなどでようやく報道が増えてきましたが、難民が日本にも逃れてきていることはまだまだ知られていません。難民認定制度を変えていくには、難民に対する社会の理解を深めていくことも重要だと思っています。

バリューブックスさんが考案したチャリボンの仕組みは、難民問題を知る入口を広げるきっかけになっており、心より感謝しています。

Q.戦乱などを逃れて日本にやってくる最近の難民の状況は……。

野津: 私たちの事務所には毎日のように難民の方が訪れます。民族、宗教、政治的な意見など、さまざまな理由から身に危険が迫り、逃れる先を探すなかで、たまたま日本のビザが最初にでた、といった偶然の理由で来日し、頼る先のない方がほとんどです。

私たちの事務所に来る難民の半数以上はアフリカの方たちです。エチオピア、カメルーン、コンゴ民主共和国、ナイジェリアの過激派ボコ・ハラムから迫害されて来る方もいます。世界で起きている人権侵害や紛争は、地続きの課題として、確かに日本にもつながっていることを感じます。

日本に逃れてきた難民の多くは、日本での非常に厳しい待遇にも関わらず、日本は本当に“平和で安全な国”だといいます。平和で安全な国だからこそできることがあるのではないでしょうか。難民の数は全世界で5,950万人と、第二次世界大戦後、最多となりました。

紛争地の平和を取り戻すことはもちろん、難民の受け入れにおいても、国際社会の協力が求められています。かつて日本は、「ボートピープル」と呼ばれたインドシナ半島からの難民を約1万人受け入れた歴史があります。そのような実績からも、日本は受け入れにおいてもっと貢献できると考えています。(2015年9月)

●認定NPO法人 難民支援協会

http://refugees.jp/charibon

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