国内企業最前線
減らせ突然死!キヤノンマーケティングジャパンの心肺蘇生講習会が10万人を突破
AED※1を一般市民も使用できるようになって11年。だが、実際に使えるかと問われれば多くの人が「できない」「自信がない」と答えるのではないだろうか。AEDの販売を行うキヤノンマーケティングジャパンでは、このほど小学館集英社プロダクションの職員などを対象に「心肺蘇生講習会」を開催。10万人目となる受講者たちの講習風景を追った。
※1 自動体外式除細動器、Automated External Defibrillator, の略称
AEDが使えれば救命率はもっと上がる
この日の講習会は、㈱小学館集英社プロダクションが運営する保育施設で開催され、保育所の園長や保育士さん、本社社員など13名が参加しました。講師は、キヤノンマーケティングジャパン㈱(以下キヤノンMJ)でヘルスケアビジネス推進課に所属する長谷川禎さんら3名が担当しました。
「目の前で人が倒れ、心肺停止となったら時間との勝負です。心臓が停止した場合、1分間で10%ずつ救命率が下がり、10分経過すると救命率はほぼゼロになります。消防署に電話をして救急隊が到着するまでの平均時間が8.5分、病院搬送までの平均時間が39.3分。その場でいかに素早い対応をするかが大切なのです」と講師から聞いてピリリとした空気が会場を走ります。
ちなみに、「救急隊が到着するまで何もしなかった場合」の生存率は8.9%、「胸骨圧迫を実施した場合」で14.8%、「胸骨圧迫に加え、AEDを使用した場合」の生存率は50.2%とのこと。社会復帰率も43.1%と格段に高まります。
心肺蘇生法は“強く・早く・絶え間なく”
講習会では、AEDが到着するまでの心配蘇生法からスタート。➀倒れた人の反応を確認→➁119番に通報し、AEDを手配→➂呼吸をみる→➃胸骨圧迫を絶え間なく行います(心臓マッサージの一種。心臓のポンプ機能を補う。少なくとも1分間に100回以上)
呼吸が停止している場合、胸骨圧迫に加え人工呼吸が必要になります。その場合、胸骨圧迫30回、人工呼吸を2回繰り返します。ここで大切なのは、うまくいかない場合でも人口呼吸は2回までということ。
AEDの使い方は本当に簡単!
さて、いよいよAEDが到着し、講習も佳境に入ります。実は記者もあちこちでAEDを見てきたが、使用する現場を見るのはこれが初めてでした。
図1に続いて、➄AEDの電源を入れる→➅パッドを貼り付ける(電流が流れやすくなるよう体の表と裏がベスト)→⑦電気ショックボタンを押す→⑧この間、胸骨圧迫を絶え間なく行います。
受講者たちが交代で胸骨圧迫などの実技を体験します。見ると女性の方には思った以上の力が必要な印象でした。ただし、AEDが到着してからは、電源を入れると機器が自動的に指示してくれます。指示どおりに動けば全く問題ないと実感しました。
この日の講習に参加した小学館集英社プロダクションが運営する西荻窪の保育所で園長を務める吉川さんによれば、「呼吸があるかどうかを確かめ、普段どおりにやれば大丈夫という自信につながった」とのことでした。
心肺蘇生講習は社会貢献活動
キヤノンマーケティングジャパン㈱では、 2009年のAED販売開始時からAEDの 最適配置と心肺蘇生の普及による救命率の向上を目指してきました。2010年からは、AEDを使った心肺蘇生講習を社会貢献活動の一翼と位置づけ、一人でも多くの命を救うため、社員インストラクターの育成を開始。現在282名の社員※2がお客さまや全国のステークホルダーに心肺蘇生講習を実施し、心肺蘇生の普及に取り組んでいるとのことです。
※2 2015年11月11日時点、NPO法人大阪ライフサポート協会認定
2020年までに20万人に講習会を
同社は2020年までにAED心肺蘇生講習のインストラクターを500名に増員し、講習受講者数延べ20万人を達成することで、AEDによる心肺蘇生の普及を推進し、一般市民が行える救急医療活動の浸透に寄与していくと語っています。
わが国では、2004年に一般市民によるAEDの使用が許可され、公共施設や商業施設や学校など 一般市民が利用する施設にもAEDが設置されるようになりました。2014年の総務省消防庁統計※3 によると、一般市民が心停止を目撃した症例は年間約2万5000件で、そのうち一般市民がAED を使用した割合は4%を下回り、AED設置の普及に対して一般市民の使用は少なく、応急手当の普及が社会的な課題となっています。
※3 総務省消防庁平成26年版 救急・救助の現況より
記者もさまざまな企業などを訪問してAEDそのものの普及は実感していましたが、AEDの「自動体外式除細動器」というネーミングは、利用者側からするととても専門的な難しい機器との印象があり、人命に関わるものだけに責任も重いというイメージを持っていました。このネーミングをもっと抵抗感の少ない分かりやすい呼び方にするだけで、講習のハードルも小さくなるのではないかとあらためて感じました。(医療機器の関係団体でぜひとも検討いただきたい課題です。)(2015年11月)
■ お問い合わせ先
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
「減らせ突然死プロジェクト」ホームページ:http://AED-project.jp/index.html
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