CSRフラッシュ

私たちにできること

竹下景子さんと知花くららさんが国連WFPの活動を語る

飢餓のない世界を目指す国連WFPは、このほど視察報告会「竹下景子×知花くらら~私たちにできること~」を開催した。一般参加者、企業・団体の支援者、関係省庁の皆様など計290名が参加。二人の初顔合わせによる対談の模様を報告したい。

(c)Mayumi Rui

(c)Mayumi Rui

世界の7,700万人に食糧を支援

飢餓と貧困の撲滅を使命に活動する国連唯一の食糧支援機関、それが国連WFPです。2015年は世界81カ国でおよそ7,700万人に食糧支援を行いました。

楽しい学校給食の時間。竹下景子さんが訪ねたスリランカの村の公立学校で(c)Mayumi Rui

楽しい学校給食の時間。竹下景子さんが訪ねたスリランカの村の公立学校で
(c)Mayumi Rui

この日は対談に先立って、国連WFP日本大使の知花くららさんからアフリカ南東部のマラウイ視察が報告され、続いて国連WFP協会親善大使の竹下景子さんから復興を支える学校給食支援や母子栄養支援の現状と成果について報告がありました。なお、二人の対談の司会は国連WFP協会広報の外岡(とのおか)瑞紀さんが行いました。

体重計で子どもたちの生育を診る。知花くららさんが訪ねたマラウイの母子栄養支援の現場で(c)Mayumi Rui

体重計で子どもたちの生育を診る。知花くららさんが訪ねたマラウイの母子栄養支援の現場で
(c)M.Kuroyanagi


私たちにできること

竹下景子さん×知花くららさん

上は竹下景子さん(スリランカで) (c)Mayumi Rui、下は知花くららさん(マラウイで)  (c)M.Kuroyanagi

上は竹下景子さん(スリランカで) (c)Mayumi Rui、下は知花くららさん(マラウイで) (c)M.Kuroyanagi


WFP5

未来への種まき

司会: 長らく国連WFPの活動に協力をいただいていますが、参加されるきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

竹下: 私は脱脂粉乳で育った世代なんです(驚きの声が会場から)。鼻をつまみながら飲んだ記憶があります。その後、日本に対して国連が行った食糧支援だったと知りました。いま元気でいられるのは、あの食糧支援のお陰だと感謝するようになりました。私自身が母親になり、何かお手伝いできることがあればと国連WFPに協力するようになりました。食べるというのは、命の糧、生きることでもありますから……。

WFP6

司会: 知花さんは今年で10年目になりますが、なにがきっかけだったのでしょうか。

知花: ミスユニバースの世界大会から帰国した直後でした。国連WFPの方からお話がありました。どんな活動をしているのか教えてほしいと質問し、初めてWFPの活動を知りました。大学では教育哲学や国際教育を専攻していたものですから、「世界の子どもたちが学校に行けるようになるには、どうしたらいいのか」と考えることはありました。

食べ物が教育の呼び水になる「学校給食プログラム」の話を知り、答えはこれだと思いました。まるで恋に落ちたとでもいうような感覚でした。

司会: 国連WFPは「学校給食プログラム」のほかに「緊急支援」だったり、「母子栄養支援」なんかも行っています。思い出に残る支援にはどのようなものがありますか。

知花: 1年に一度は海外の支援先に視察にいくと決めました。訪れた先々で給食を楽しみに学校に通ってくる子どもたちの笑顔を見たり、子どもたちを学校に通わせてよかったと話すお母さんたちの一言が聞けるだけで、勇気をもらえる気がしています。

竹下: 子どもたちは学校が好きですよね。学校に行くと給食があって、お腹もいっぱいになるということもあるでしょうが、途上国では児童労働の問題もあります。家にいると労働力として使われてしまうという負の側面もあるかもしれません。

知花: 未来への種まきなんですね。すぐに効果は見えないかもしれないけれど、いまこの瞬間の支援が、子どもたちの身体の成長とともに、知識の成長にもつながっていくわけです。未来が広がっていくわけです。

若い母親が心配そうにわが子の生育を聞く(c)M.Kuroyanagi

若い母親が心配そうにわが子の生育を聞く
(c)M.Kuroyanagi


“お腹がいっぱいになる”ことの大切さ

司会: 竹下さんにとって思い出深い支援は……。

竹下: 母子栄養支援ですね。妊婦さんと乳幼児が対象ですが、子どもたちの成長には、お母さんが妊娠してから子どもが2歳児になるまでの最初の1000日の栄養状態がとても大事だと教えてもらいました。栄養状態が悪いと生育が遅れるだけでなく、脳にも障害が出てくる場合もあります。

セネガルに行ったとき、生後13カ月の赤ちゃんに会いました。日本でいう生後半年くらいの大きさしかありません。栄養強化食品をあげたら、チューチューと吸って離しません。これが命の糧だということを知っているのです。

低体重で生まれた子は、栄養支援をしても、ちょっと熱が出たりすると体重ががくんと落ちるのです。恒常的に支援を続けていかなければなりません。

司会: お二人にはいろいろな支援活動に関わってもらいましたが、支援活動に参加する前と後でなにか変化がありましたか。

竹下: 国連にはたくさんの支援機関がありますので、WFPは食糧支援をするところくらいの認識しかありませんでした。さまざまな地域に足を運ぶと、“お腹がいっぱいになる”ことの大切さを知らされました。物があふれている日本では、学校給食も当たり前と思っていますが、とんでもない話です。

スリランカの公立学校で子どもたちと一緒に食事を(c)Mayumi Rui

スリランカの公立学校で子どもたちと一緒に食事を
(c)Mayumi Rui

司会: 現地の皆さんと交流すると、豊かさとはなんだろう、幸せとはなんだろう、考えることもありますね。物はそろっていなくても、幸せそうな顔に出会える機会は少なくありません。

竹下: 私たちが現地に到着すると、皆さんが精一杯の歓迎をしてくれます。歌であったり踊りであったり……。それぞれの国に伝統があり、文化があるということです。国連WFPの支援によって、その国にふさわしい伝統や文化が人々の間に引き継がれてほしいとも思います。

学校給食支援はさまざまな形で行われている(マラウイで)(c)M.Kuroyanagi

学校給食支援はさまざまな形で行われている(マラウイで)
(c)M.Kuroyanagi


学校給食がなければここにいない

知花: 私の場合、最初から学校給食に興味があったこともあって、それがどれほど大切なことか実感できました。アフリカのケニアで40代半ばくらいのおじさまでしたが、小さいときに給食支援を受けたと語ってくれました。その方はオリンピックでメダルを取るほどの方でしたが、「あの学校給食がなければ自分はここにいない。学校給食が人生を180度変えたんだ」と語ってくれました。

司会: そんなうれしい話を伝えることもお二人の役割ですね。

知花: 現地で見たこと、感じたことを日本に帰ってから皆さんに伝えることができるのもうれしいことです。皆さんが耳を貸してくれることで、実を結ぶ活動なんだということも切実に感じています。

(c)Mayumi Rui

(c)Mayumi Rui

司会: 二人が会うのは今日が初めてですね。お互いになにか聞いてみたいことがありましたら……。

知花: 私は竹下さんが出ていた「クイズダービー」というテレビ番組のファンでした。いま、そばに竹下さんがいるのが信じられないくらいです(会場に笑い)。私は独身で出産の経験もありません。母親でもある竹下さんが現地にいかれる際の視点といったものを教えてください。

竹下: 子どもの幸せが親の幸せであることに先進国も途上国もありません。セネガルではお母さんたちが勉強会を立ち上げ、どうしたら赤ちゃんを元気に育てていけるか、病気のときにはどうしたらよいか、と懸命に学んでいる姿がとても印象に残っています。

知花: 自分が母親だったら子どもたちとどのように向き合うか、と私もいつも考えるようにします。


生命のエネルギーを感じながら

竹下: 生育不良の子どもたちを見るとかわいそうに思いますが、小さな子どもたちが元気に飛び跳ねる姿を見ると、全身で生きているというエネルギーが伝わってきます。生命力を感じます。

豊かな日本人には、できれば若いときに現地に足を運んで、そういう現地を見てほしいと思います。それができないのであれば、想像してほしいと思います。世界にはいろいろな人々が暮らしていて、そこにはいろいろなことが起きている、ということを想像してほしいと思います。

知花さんは10年にわたって活動を続けてこられたわけですが、一番よかったと思うのはどんなときですか。

知花: 子どもたちが勉強をしている姿を見るときですかね。短い鉛筆を使って、ボロボロのノートの上に文字を書く姿を見ると、私ももっとがんばらなくちゃと思います。10年という歳月はあっという間だったのですが、子どもたちが熱心に勉強するのを見れてたよかったと思います。「継続は力なり」という言葉がありますが、いまは素直にそれを感じます。

司会: 先日、竹下さんと行ったスリランカでニデルセン君に会いました。知花さんがスリランカに行ったときにとても仲良しになった男の子です。

竹下: とてもハンサムな子でしたよ。ずいぶん背丈も伸びたようです。

知花: 給食を食べて大きくなったのでしょうか。

司会: 竹下さんが知花さんへのプレゼントを預かってきました。

知花: ええっ、なんでしょう。

会場の映像で、竹下さんからの「知花さんのこと覚えていますか」という質問に「覚えている」と答えるニデルセン君の姿が登場する (c)Mayumi Rui

会場の映像で、竹下さんからの「知花さんのこと覚えていますか」という質問に
「覚えている」と答えるニデルセン君の姿が登場する (c)Mayumi Rui

司会: ニデルセン君からこちらのプレゼントを預かってきました。竹下さんから知花さんにお渡しください。

竹下: ニデルセン君からの大切なプレゼントです。

知花: ええっ、どうしよう。ありがとうございます。

貝殻とお花のプレゼントが手渡され、感激する知花さん。会場から大きな拍手

貝殻とお花のプレゼントが手渡され、感激する知花さん。会場から大きな拍手


2010年のスリランカ訪問時のニデルセン君と知花さん(c)WFP

2010年のスリランカ訪問時のニデルセン君と知花さん(c)WFP


できることから一歩ずつ

司会: 突然のサプライズでした。本日は、会場の皆さんからも質問をいただきました。一番多かったのが、「自分たちにどのような支援ができますか」という質問でした。お二人から皆さんにアドバイスいただけないでしょうか。

竹下: 気持ちがあってもきっかけがないと行動に移せないという方は結構います。取り組みやすいものに「レッドカップキャンペーン」があります。

司会: 赤いカップのマークが付いた商品を購入いただくと、その売上げの一部が国連WFPの「学校給食プログラム」に回るというものです。これまでは食品が多かったのですが、最近では塾の教材やランドセルにもレッドカップキャンペーン商品が広がっています。

●子どもたちに栄養と希望を~レッドカップキャンペーンのWEB

http://www.jawfp.org/redcup/

竹下: 企業の理解と協力がないとこのような商品も広がりません。あとはボランティアとして活動に参加するという方法もあります。中高年の方であれば、経験や人脈を生かしたボランティア活動の広がりも期待できます。

司会: 本日も会場の整理などでボランティアの方が何人も参加して下さいました。

知花: この活動を始めたとき、最初は中途半端な支援に終わるのではないかと考えました。ところがある方の一言でそれが吹っ切れました。

その方は、「100やらなくてもいい、10でも1でもいいんだよ。ゼロよりはずっといいんだ」と話してくれました。目の前の霧が晴れたように思いました。いま自分が立っている場所から手を伸ばしてできることから始めればよいのです。最近の若い方はSNSで情報発信していますが、それを使って友人の方に国連WFPの話をしてもらうだけでもよいと思うのです。

司会: 実はスマートフォンからも国連WFPの支援活動に参加できるようになりました。国連WFPのスマートフォンアプリ「FOODeliver(フーデリバー)」に入ると、国連WFPの活動や寄付の仕組みも分かります。

知花: これだと国連WFPの情報をいち早く入手でき、簡単に寄付もできますね。

竹下: 多くの方に広がりそうですね。

スマートフォンアプリ「FOODeliver(フーデリバー)」を初公開(両大使も早速お試しにチャレンジ)http://www.jawfp.org/foodeliver/

スマートフォンアプリ「FOODeliver(フーデリバー)」を初公開(両大使も早速お試しにチャレンジ)
http://www.jawfp.org/foodeliver/

司会: それでは今後の抱負についてもお聞かせください。

知花: 10年はあっという間でした。カメのようなゆっくりした歩みでしたが、現地の方の暮らしぶりを知り、何が必要なのかを考えるきっかけになりました。これからも継続していきたいと思います。

竹下: 恵まれている人が恵まれていない人にするのが支援だと誤解している方がいます。東日本大震災のあと、ロンドンに行ったら、「日本の子どもたちを救おう!」と呼びかけていました。私が日本人だと知ると、私のような旅人にも声を掛けてくれました。

それまでは日本は支援する側だとばかり思っていましたが、いろいろな国の人々が支え合いながらいまの暮らしを守っているのだと納得しました。一歩を踏み出す勇気こそが大切なのだと思います。

国連WFPの支援で進む道路工事。村人たちに支払われる賃金が生活の糧となる。(スリランカで) (c)Mayumi Rui

国連WFPの支援で進む道路工事。村人たちに支払われる賃金が生活の糧となる。(スリランカで)
(c)Mayumi Rui

<プロフィール>

竹下景子国連WFP協会親善大使/俳優
2005年より国連WFPを支援。2010年に国連WFP協会の親善大使に就任。これまでにセネガル・フィリピン・スリランカの視察を行い、現地の状況や国連WFPの活動について理解を深め、発信しています。

知花くらら国連WFP日本大使/モデル
2007年より国連WFPをサポート。2013年に国連WFP日本大使に就任。これまでザンビア・フィリピン・スリランカ・タンザニア・エチオピア・ヨルダン・キルギス・マラウイ・ケニアを視察し、伝える活動を積極的に行っています。

国連WFP協会

www.wfp.org/jp

<関連記事>

被災地の子どもたちに‟教育の機会”を!
第11回 ロハスデザイン大賞/ヒト・モノ・コト 3部門大賞
思い出いっぱいの校舎に、絵を描き、記録に残す
震災の経験を全国に―➀岩手・宮城のNPOなどで働くリーダーたちの声から
ETIC.の「地方創生チャレンジ in 東北」シンポジウムから東北の挑戦を、未来につなげるIII
「あまちゃん」の舞台、岩手県久慈市がふるさと交流会を開催
インバウンド観光を“地域おこし”に
待ったなしの自然災害に備える
震災の経験と教訓を仙台から世界へ
未来につなぐ復興-③ 心と体の“健康への支援”はこれからが本番です。サノフィ・ジャパングループ
被災地の子どもたちに‟教育の機会”を!「被災地・子ども教育調査」報告会
復興への願いを、風化させてはいけないあの震災から3年、被災地の人々に寄りそって
防災の日に『炊き出しマニュアルver.1』が完成、配布へ
東北の若手漁師がめざす“真にカッコ良くて、稼げるフィッシャーマン”
東北で生きる~企業の現場から見た東日本大震災
障がい者や高齢者への支援をつづけるAAR Japan [難民を助ける会]

トップへ
TOPへ戻る