CSRフラッシュ

市民の力で、自然エネルギーの“地産地消”を進める

NPO法人こだいらソーラーの太陽光発電所見学会に参加

東京・小平市内を中心に5つの太陽光発電所を運営するNPO法人こだいらソーラー。このほど市民見学会を開きました。本誌も参加した見学会をとおして市民発電所の奮闘ぶりをお伝えします。

第一号機のソーラーパネルを説明するこだいらソーラー理事長の都甲公子さん(左)と西村守正さん

第一号機のソーラーパネルを説明する
こだいらソーラー理事長の都甲公子さん(左)と西村守正さん

75kWの発電能力をもつ5つの小規模太陽光発電を運営

小平市は人口約18万人の都内では比較的小ぶりな自治体。平地が広がる市内には大学などの教育機関や行政の出先機関のほか、企業の工場なども点在しており、職住のバランスのとれた自治体といえます。

この日の見学会には、近隣に住む大学生、市民など9名が参加し、こだいらソーラーが運営する5つの太陽光発電所のうち1号機から3号機までを見せてもらいました。

最初に訪れた3号機(通称「未来」、2015年設置)は発電容量が13.44kW。市内の社会福祉法人が運営する障がい者生活介護施設の屋上に設置されていました。陸屋根の屋上に240Wのソーラーパネルが56枚置かれており、全量売電しています。売電単価は1kWh32円とのことでした。

西村守正さんの案内で「やまびこ」のソーラーパネルを見る

西村守正さんの案内で「やまびこ」のソーラーパネルを見る


小平ソーラー3

次に訪れた2号機(通称「やまびこ」、2014年設置)は発電容量が10.32kW。こちらはNPO法人が運営する小規模介護サービス施設の寄棟の屋根に240Wのソーラーパネルが43枚置かれたもので、こちらも全量売電しています。売電単価は1kWh32円ということでした。

最後に訪れた1号機(通称「第一号」、2013年設)は、発電容量が12.0kWで、2011年のFIT(固定価格買取制度)導入後、出資型の市民共同発電所としては、東京都内で第一号とのこと。事務所や集合住宅が入る3階建てビルの屋上に設置されていました。陸屋根の上に200Wのソーラーパネル60枚が置かれ、ビルの廊下の照明など共用部分で自家消費して余った電力のみ売電しています。売電単価は設置時期が早かったこともあり、1kWh40円とのことでした。

一号機のあるビルの屋上で

一号機のあるビルの屋上で


ビル1階にはオーナーの好意で看板も

ビル1階にはオーナーの好意で看板も

こだいらソーラーでは、このほか発電容量25.3kWの4号機(通称「めぐる」)、発電容量13.3kWの5号機(通称「むさし」など計5つの施設を有しています。

見学会の後、こだいらソーラー理事長の都甲公子さんを交えて以下のような面談を行いました。


当面の課題は“屋根さがし”

Q.太陽光発電所の普及を進めるうえで、いま、もっとも急ぐべき課題は何ですか。

都甲:買取価格の下落やFIT法の見直しなど、焦眉の急ではありますし、資金調達なども難しい課題ですが、いの一番は、都市部では太陽光パネルを設置できる“屋根さがし”といえるのではないでしょうか。

小平市は、個人で太陽光パネルを設置する住宅の比率は比較的高いのですが、事業としての発電効率などを考えると100㎡以上の大きさをもつ屋根の確保が不可欠です。工場・倉庫、集合住宅・学校・幼稚園などにも呼び掛けていますが、よい返事ばかりではありません。公共施設の提供など自治体との連携も望まれます。

ただ、3号機を設置した団体のつながりで5号機の設置場所が決まるなど、設置場所の横のつながりを大切にしたいと思っています。


建設費用は市民の支援による疑似私募債で

Q.建設費用の調達はどのようになっているのでしょうか。

都甲:市民発電所として事業を運営していますから、寄付・出資・借入などできるだけ大勢の人から、広く資金を集めたいと考えています。

ところが、NPO法人のような市民団体がお金を集めるには、金融商品取引法や出資法の制約を受けるため、公募債などの形で資金調達はできません。そこでNPOなどでも取組事例のある疑似私募債という少人数私募債に準じた調達方法を採りました。市民の皆さんから借入するかたちで設置資金を集め、売電収入から一定期間後に利息を付けてお返しするしくみです。

5つの発電所をつくるために、これまで4回にわたり、私たちの活動に理解のある方々から疑似私募債の形で資金を募り、5年または10年、15年後に一括して償還を行うという方法をとっています。もちろん、拠出額に応じて利子も付けます。

なお、これまでに総額で約2,500万円の資金を調達しています。


固定価格買い取り制度見直しの影響は?

Q.太陽光発電などの買い取り価格が見直されています。経営が苦しくなっているのではありませんか。

都甲:私たちは2011年3月に起きた東日本大震災とそれに伴う福島第一発電所の事故を契機に一極集中型の原発に依存しないためにも分散型の太陽光発電所の普及を目指してきました。2013年2月にNPO法人を立ち上げ、それと同時に第一号機の設置準備をし、これまでに5号機まで設置と稼働にこぎつけています。

一号機が設置された当時の売電単価は1kWh40円でしたが、5号では1kWh27円となっています。厳しくはなっていますが、この間、普及につれて設置コストも徐々に下がってきていますので、売電価格の減少分は発電所の効率的な運用によって補っていこうと考えています。

太陽光発電は、天候や日照時間の影響を受けますが、下の図のように4つの発電所の発電量を比較すると、方位や傾斜角などの条件で多少違うとはいえ、概ね同様のカーブを示しており、大きなトラブルが起きていないことが見て取れます。

小平ソーラー7

第一号機のソーラーパネルを説明するこだいらソーラー理事長の 都甲公子さん(左)と西村守正さん

第一号機のソーラーパネルを説明するこだいらソーラー理事長の
都甲公子さん(左)と西村守正さん


電力の自由化を受け、売電先の変更に取り組む

Q.2016年4月から電力の自由化がスタートしました。どのような取り組みを進めていますか。

都甲:電力の自由化は、大手が独占していた電力の仕組みをよりオープンなものにする一歩です。しかし、大手電力から新電力に変更した方はまだ全体の2%前後だとされています。一般の方々からすれば、電力の供給先としてやはり安定性を重視しているのかもしれません。

市民電力や新電力が信頼を確保していくためにも、太陽光発電など再生エネルギーの電源をたくさんつくる必要があります。

こだいらソーラーでは、これまでは東京電力に売電してきましたが、このほど2号機から4号機までの売電を生協系の新電力会社である「生活クラブエナジー」と契約することにしました。

5号機については顔の見える電気の販売をめざす「みんな電力」と交渉を進めています。1号機については余剰電力のみの売電となるため、これまで同様の取り扱いとなっています。太陽光発電に自立運転機能を付けることにより、災害時の電気の確保という副次的な効果も得られます。

こだいらソーラーでは、市民電力、新電力、消費者・市民の三社と連携を強め、再生エネルギーで安心して暮らせる社会にしたいと考えています。自前の身近な発電所をもつことは、市民がライフスタイルを見直すことであり、エネルギーの自治を目指すことにほかなりません。

5号機の開所式イベントに参加した支援者のみなさんと

5号機の開所式イベントに参加した支援者のみなさんと

こだいらソーラーホームページ
こだいらソーラーFacebook


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