企業とNGO/NPO
飢えに苦しむ、世界の子どもたちに給食支援を
10月16日は「世界食糧デー」。“食”を考える2つの催しが相前後して行われた。1つは飢餓のない世界を目指して活動する国連WFP協会の「WFPエッセイコンテスト2016」の入選者の表彰式。もう1つは世界の食の不均衡の解消をめざすNPO法人 TABLE FOR TWO Internationalの「100万人のいただきます!」キャンペーン。地球に住む9人に1人、7億9,500万人が飢えに苦しんでいる。“食”のあり方を考えるよい機会だといえよう。

TABLE FOR TWO「おにぎりアクション2016」に
参加した女性たち
国連WFP協会の「WFPエッセイコンテスト2016」
今年のテーマは、「ぼくの私のちからメシ」
14,659名の皆さんからエッセイの応募がありました
今年は、小学4年生から大人まで幅広い世代の方から14,659 作品が応募されました。応募 1作品につき、給食 4 日分にあたる 120 円が、4 社の寄付協力企業(昭和産業㈱、トヨタ自動車㈱、日清食品ホールディングス㈱、三菱商事㈱)より国連 WFP に寄付されたため、寄付金総額は過去最高の 175 万 9,080 円(1 社あたり 43 万 9,770 円) となり、5万 8,636 人の世界の子どもたちに栄養価の高い給食を届けることができます。
2016年の表彰式では、審査員の竹下景子さん、三浦雄一郎さん、湯川れい子さん、三國清三さん等が参加、入賞者 7 名を表彰しました。また竹下景子さんは、最優秀賞である WFP 賞の作品を会場で朗読しました。
【WFP賞】
命のスープ
神奈川県 カリタス小学校 4年 片岡 璃穂さん

片岡瑠穂さん(右)とその作品を朗読する竹下景子さん
私は今年の夏休みに初めてお父さんの国、かん国へ行きました。ハルモニ(おばあちゃん)と会うのは一才のたん生日以来、九年ぶりです。みなさんは、たん生日の日はどんな風にすごしますか。プレゼントをもらったり、自分の好きなものやケーキを食べたりして楽しくおいわいしますよね。八月生まれの私のおいわいをしてくれるというので、私はとても楽しみでした。やっぱりかん国はやき肉が有名だから肉パーティーかなと思っていたら、見た目がとても地味なわかめスープが出てきて、私はとてもびっくりでした。「たん生日なのに、わかめスープ?」と心の中で思っていたら、お父さんが話してくれました。
「赤ちゃんをうんだ後のお母さんはつかれていても、すぐにオッパイをあげないといけない。体力のない人でも色いろな栄ようが取れるように、赤ちゃんをうんだお母さんにはわかめスープを食べさせるんだ。そして、かん国ではね、うんで育ててくれた両親を思い出して感しゃするためにたん生日にはわかめスープを食べるんだよ。」
私はとてもはずかしくなりました。今までいわってもらうことしか考えていなくて、たん生日には自分が主役のパーティーが当たり前だと思っていたからです。そして、スープを飲みながらお母さんが一リットル以上の出血でとてもなんざんだった話を聞きました。
お母さんが飲んだわかめスープが母にゅうになって私が育ったんだとわかったら、だんだん命のスープに思えてきました。それから、てれくさくて言えなかったけど「うんでくれてありがとう」と思いながら食べていたら、どんなごちそうよりもおいしく感じました。ハルモニのわかめスープは、私が育った命のちからメシだったんだと思いました。
選者 湯川れい子さん(国連WFP協会顧問/音楽評論家・作詞家)のコメント
まだ片岡璃穂さんは小学4年生。お誕生日といえば、ケーキやプレゼント、いつもは食べないようなご馳走で祝ってもらうもの…と思っていたのに、お父さんの国、韓国で出て来たのは一杯のわかめスープでした。赤ちゃんを産んだ後のお母さんは疲れているのだから、オッパイが沢山出るように、ありがとうを込めての「わかめスープ」。読んでいて目からウロコの感動でした。文章力も見事です。文句なく一等賞です。
その他の受賞者は以下の皆さんです。
【小学生部門賞】
じじがゆ
神奈川県 カリタス小学校6年 須之内梨央さん
【審査員特別賞(小学生部門)】
魔法のからあげのおにぎり
神奈川県 カリタス小学校 6年 黒澤 碧さん
【中学生・高校生部門賞】
それも誰かの「ちからメシ」
大阪府 関西学院千里国際高等部 1年 藤戸 美妃さん
【審査員特別賞 (中学生・高校生部門)】
「食へのありがたさ」
熊本県 クラーク記念国際高等学校 熊本上通キャンパス3年 岩間 桜子さん
【18歳以上部門賞】
パオーンおじさんのちからメシ
広島県 鎌田 俊三さん
【審査員特別賞 (18歳以上部門)】
生きていたと笑った
埼玉県 荻原純子さん
●お問い合わせ
国連WFP
おにぎりを食べて、アフリカ・アジアの子どもたちに
85万食の給食をプレゼント
TABLE FOR TWO の“おにぎりアクション”
日本発、世界の食料問題の解決に取り組む特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International(東京都港区、代表 小暮真久/以下、TFT)は、「おにぎりアクション2016」を2016年10月11日から11月30日まで約1カ月半実施しました。
この間、おにぎりの写真をSNSまたは特設サイトに投稿すると、参加者に代わって協賛企業・支援者が写真1枚につき100円を寄付し、アフリカ・アジアに給食5食を贈るという取り組みです。現時点で写真の投稿枚数が10万枚を超え、期間中の寄付で85万食(4,000人の子どもに1年分)以上の給食を届けられる予定です。
なお、キャンペーン期間中には、毎日平均で2,000枚のおにぎり写真が投稿され、ディーン・フジオカさん、小泉進次郎さん、島袋寛子さん、サンプラザ中野くんなどの著名人も数多く参加しました。
TABLE FOR TWO Internationalのチーフ・マーケティング・オフィサーである大宮千絵さんは、「日常生活の中で楽しく社会貢献したいという気持ちの高まりがこのアクションを大きく広げてくれました」と語り、日本の代表的な食であるおにぎりをシンボルフードにして良かったと述べています。

特設サイトに投稿された写真の1枚
全国のスーパー、ECサイト、レストラン、レシピサイトなど650企業・団体が参加
今回のキャンペーンには、総合スーパーである西友の全国339店舗で3種類の寄付つきおにぎりを販売した他、本州・四国のイオン381店舗にて対象カードで対象商品購入につき寄付する取り組みが開催されました。またOisixではOisixサイトと直営店舗2店舗にて、寄付つきぼっちゃんかぼちゃが販売されました。このほか、大丸松坂屋では全国10店舗のレストラン・喫茶等でTFT寄付つきヘルシーメニューの提供及び募金活動が行われました。

西友で販売された寄付つきおにぎり

Oisix(おいしっくす)の寄付つきハロウィンセット
TFTハロウィンシールつきぼっちゃんかぼちゃ
社員食堂プログラム実施企業・団体約650社と団体がTFTメニューを社員食堂で販売しました。また、学生食堂や学園祭などでTFTメニューを販売。120大学1,100人が参加するTFT大学連合が、「いただきます」「ごちそうさま」イベントを開催しました。

イオン板橋店での催事の様子

伊藤園「お~いお茶」と一緒に投稿された写真。
「お~いお茶」と一緒に投稿するとプラス5食が寄付に
問い合わせ先
NPO法人TABLE FOR TWO International
http://jp.tablefor2.org/
2007年10月設立。“TABLE FOR TWO”を直訳すると「二人のための食卓」。先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが食事を分かち合うというコンセプトの下、社員食堂や店舗でTFTヘルシーメニューを購入すると、代金の内20円が寄付となり、飢えに苦しむ世界の子どもに給食1食分をプレゼントできる。これまで企業や官公庁、大学、病院など約650団体が参加。気軽に社会貢献とメタボ予防ができるという一石二鳥な取り組みが人気を呼び、約4,339万食をアフリカのウガンダ、ルワンダ、エチオピア、タンザニア、ケニア、アジアのミャンマー、フィリピンに届けた。
(2016年12月)
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