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日本人がずっと使ってきた「のし袋」の秘密が本に

著者である折形師 齋藤和胡さんの出版記念会から
出版記念会当日の齋藤和胡さん(右)

出版記念会当日の齋藤和胡さん(右)

お祝い事などで現金を包む「のし袋」。日本人ならだれもが使っている「のし袋」の熨斗(のし)とはいったい何を意味するのか、あなたはご存じでしたか。「のし袋」に関する素朴な疑問や本来の約束事について、分かりやすく書いた書籍がこのほど淡交社から出版されました。

お祝い事の必需品「のし袋」とは

結婚や出産、入学や卒業などのお祝い事があったとき、あなたは相手の方にどのようにしてご祝儀を手渡しますか。結婚式などの場合なら、鶴や梅などの水引細工が施されたきれいな「のし袋」にお祝い金を包んでお渡ししているのではないでしょうか。

ところが、なぜ「のし袋」を使うのか、のし袋の「のし」って何かと聞かれると、だれもがあまりよく分かっていないことに気づくはずです。

折形師 齋藤和胡さんが書いた『なぜ日本人は「のし袋」を使うのか?』と題する本は、われわれ日本人が知っておくべき疑問の解明から始まっています。

簡単なお祝い事の場合、文房具店やコンビニエンスストアなどで購入した「のし袋」を使う場合も少なくありません。ところがこうした慶事用の「のし袋」をよくよく見ると、袋の表の右肩に菱形の折り紙らしきものが貼られたり、印刷されているのが分かります。

これは「小熨斗(このし)」または「折り熨斗(おりのし)」と呼ばれるもの。それをよく見ると、折りたたんだ紙の中に帯状の黄色いものがのぞいています。実はこの黄色いものこそが、わが国の贈答文化の源を示しています。

表紙に「小熨斗(このし)」が『なぜ日本人は「のし袋」を使うのか?(著:斎藤和胡/淡交社』

表紙に「小熨斗(このし)」が『なぜ日本人は「のし袋」を使うのか?(著:斎藤和胡/淡交社』

詳しくは、齋藤さんの著書を手にしていただくとして、少しだけ種あかしをすると、この黄色いものは、「鮑(あわび)」を現わしています。


鮑が黄色い紙になった理由

深海から採れる鮑は、宝珠とされる真珠を抱いていることもあり、特別な霊力を備えた貝として古くから人々に珍重されてきました。

伸ばした鮑は、「熨斗鮑」と呼ばれ、奉書紙に包んで贈るのが、かつてはもっとも礼を尽くした贈答の作法とされ、お酒と鮑は対のように扱われてきたそうです。

熨斗鮑(のしあわび)を奉書紙で包んだ長熨斗包(齋藤さんの作品)

熨斗鮑(のしあわび)を奉書紙で包んだ長熨斗包(齋藤さんの作品)

三重県鳥羽市国崎町では、いまも古式に則った「国崎熨斗鮑づくり」が行われ、神事などに献上されているとのこと。一般のわれわれには、それを手にすることが難しくなったいまは、「熨斗鮑」の代用品を使った「のし袋」になったというわけです。

齋藤さんが語るところによれば「日本には和紙のすばらしい文化があり、贈り物は和紙で包むのが心のこもった贈答品とされた」とのこと。非礼な贈答品にならぬよう、独自の贈答ラッピングとして「折形」が発展し、贈る目的に合わせて“紙を折って包む”文化が形づくられていきました。

日本人は、古くから贈り物をするという行為に心を砕いてきました。ご祝儀袋にどれくらいの金額を入れるかはだれもが気になるところですが、包みの姿にも心を配りたいものです。

帯料包み(上)と袴料包み(下)(いずれも齋藤さんの作品)

帯料包み(上)と袴料包み(下)(いずれも齋藤さんの作品)

齋藤和胡出版会5

なお、出版記念会には、齋藤さんの友人など60名が集まりました。当日は、若手の落語家春風亭朝之助さんの「鮑のし」という演目も披露されるなど、大いに盛り上がりました。[2017年2月7日公開記事]

落語「鮑のし」を語る朝之助さんと当日の会場風景

落語「鮑のし」を語る朝之助さんと当日の会場風景


齋藤和胡出版会7

「包み贈る文化と作法」体験講座

開催日:毎月第2木・土/各日とも 10:00~12:00/13:30~15:30
講習費:4千円(材料費込み)
場所:練馬区桜台6丁目(地下鉄 有楽町線・副都心線 氷川台駅/西武池袋線・桜台駅)
お問い合わせ・お申し込み: E-mail: ka-zu-saito@jcom.home.ne.jp FAX 03-3557-8433


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