CSRフラッシュ

自殺、LGBT、子どもたちの悩みにどう応えるか

NPO法人3keys(スリーキーズ)のセミナーから

虐待や貧困などで孤立した子どもたちに学習支援を行っているNPO法人3keysが啓発活動の一つとして毎年開催している「Child Issue Seminar」。このほど「自殺」や「LGBT(性的少数者)」に悩む子どもたちとどのように向き合うべきか、2人の専門家を招いてTwitter Japan本社で開催された。当日の模様をダイジェストで紹介したい。

[2017年3月23日公開記事]

セミナーの模様。右からReBitの薬師実芳さん、国際ビフレンダ―ズの村明子さん、3keys代表理事の森山誉恵さん

セミナーの模様。右からReBitの薬師実芳さん、
国際ビフレンダ―ズの村明子さん、3keys代表理事の森山誉恵さん

子どもたちの気持ちを聞く、受け止める、分かち合う

自殺防止の夜間電話相談に取り組んできた
村 明子(むら・あきこ)さん

国際ビフレンダ―ズは、60年前にイギリスで誕生した自殺防止の電話相談機関です。自殺は罪だとされてきましたが、「人は自分の命を決定する権利を持つ」とし、悩める人たちの隣に座って友人のように話を聞くところからスタートしています。

日本では6都県でボランティア活動を行っていますが、東京自殺防止センターは年間1万1千件以上の夜間電話相談に対応しています。

日本は年間3万人くらいの自殺が続いてきましたが、さまざまな対策もあり、少し減ってきました。ただ、若者・子どもたちの自殺は減っていません。相談が多いのは3月と8月です。3月は入学・就職などで、8月は夏休み明けの生活に不安が高まるのだと思います。

子どもたちの悩みは、海に浮かぶ氷山のように、表に出るものはその一部に過ぎません。水面下で「生きづらい」「生きる意味がない」「生まれてこなければよかった」「楽になりたい」などの悩みを抱え、それが「死にたい」気持ちに駆り立てるのです。

私たちは、「死ぬな」とは言いません。逆に追い詰めるからです。むしろ「今、死にたいと思っていますか」と率直に問うことで、安心して話せるようサポートします。決して、励ましたり、相談員の意見を押し付けてはいけません。

最近ではFacebookで「死にたい」とつぶやくと私たちの電話相談が紹介されます。自殺の方法を調べていたら私たちの電話相談につながったという子もいました。

子どもたちの相談にはいくつか特徴があります。たとえば「口数が極端に少ない」「深夜の相談である」「夏休みの初めに相談、休み明けに自殺すると決めている」というのもありました。苦しい本心はだれにも話せず、聞いてももらえないという思いがあります。話し相手がいないのです。長い間悩んだ末に相談してくるケースもあります。

実は相談してくる子どもたちは自分なりの答えを持っています。大人の目線で結論を押し付けようとするのではなく、サポートするだけで立ち直るケースもあります。「死にたい思い」をどう受け止めるか、解決を急がず子どもたちの苦しみにしっかり耳を傾けることが大切なのです。

東京自殺防止センター ☏03-5286-9090 (年中無休20時から朝6時まで)

3keys2

村 明子さん
認定NPO法人国際ビフレンダ―ズ
東京自殺防止センター前所長

ボランティアスタッフとして16年間電話相談などの自殺防止活動に従事する傍ら、民間団体等にてゲートキーパー研修、電話相談員の養成・継続研修などの講師を務める。東京自殺防止センターは年中無休で夜間20時より翌朝6時まで電話相談をしており、年間で11,000件を超える相談に応じている。

http://www.befrienders-jpn.org/


性的少数者の子どもも、きっと身近にいます

LGBTの子どももありのままで受け入れる社会を
薬師 実芳(やくし・みか)さん

NPO法人ReBitは、大学生と20代を中心とした約350名の団体です。私たちがめざす社会は、LGBT(性的少数者)を含めたすべての子供たちがありのままでオトナになれるような社会をつくることにあります。

ところで皆さんはLGBTの定義をご存知ですか。Lはレズビアン(女性の同性愛者)、Gはゲイ(男性の同性愛者)、Bはバイセクシャル(男性も女性も好きになる両性愛者)、Tはトランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)。セクシャルマイノリティを指す言葉としても使われています。

LGBTはとても身近な存在です。2015年の電通総研ダイバーシティーラボの調査では国内人口の約7.6%、約13人に1人がLGBTの可能性があるとされています。AB型や左ききの人の割合とさほど変わりません。

さて、本日はLGBTの子どもが直面する課題についてお話します。実は私自身は女性の身体で生まれましたが、男性として生きたいと子どもの頃から悩みました。17歳で初めて友人にカミングアウトすると、「やくしはやくし」と温かく認めてくれました。

ただ、LGBTの子どもたちが日々直面する課題は多く、いじめや暴力を受けたことのあるLGBTの人は68%、自死念慮をいただいたことのある性同一性障害の人は約6割にも及んでいます。また、「ホモネタ」や「オカマネタ」を聞いたことがあるという子どもは約85%にのぼりますが、高校生の約9割は学校でLGBTや多様な性について習ったことがないと言います。特に自死念慮の第一ピークは二次性徴期といわれることからも、LGBTの子どもへの対応や多様な性にかんする正しい情報の提供が大切です。

2015年には、文部科学省から性的マイノリティの子どもへの対応を求める通知が全国小中高校へ出されるなど、教育現場でも注目が高まっています。

LGBTの子どもたちが学校で困りやすいことは大きく5つあります。
① トイレ、制服、風呂、部活、健康診断などで男女に分けられること
② LGBTの子どもが想定されていないこと
③ 多様な性についての正しい知識にアクセスできないこと
④ 身近に相談できる人がいないこと
⑤ ロールモデルがいないため将来を描きづらいことです。

LGBTの理解者は同盟の意味の”Alliance”から「アライ」といいます。ぜひ、子どもと接する大人の方々がアライになっていただけたら幸いです。そのためには、
① ホモ、オカマ、レズなどLGBTを揶揄する言葉がつかわれていたり、
笑いのネタになっていたら注意する
② 彼氏、彼女、夫、妻ではなくパートナーと男女で限定しない言葉を使う
③「男なら家庭をもって一人前」「もっと女らしくしないと」など
男女らしさの限定や、誰もが結婚をすることと前提としない、
などを心掛けていただけましたら幸いです。

LGBTの子どもたちもありのままで大人になれる社会になることを願っています。

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薬師実芳さん
NPO法人ReBit代表理事。

大学在学時に「早稲田大学公認学生団体ReBit」を設立。行政/学校/企業などでLGBTに関する研修を多数実施、またキャリアカウンセラーとして約800人のLGBTの就労応援を行う。LGBTの子どももありのままでオトナになれる社会の実現をめざす。著書に「LGBTってなんだろう?—からだの性・こころの性・好きになる性」がある。

http://rebitlgbt.org/overview


子どもたちの悩みを支援団体につなぐ
Mex(ミークス)全国版を6月からサービス開始

いじめや予期せぬ妊娠、金銭のトラブル、勉強など10代の悩みに応えるため、3keysでは、インターネット上で全国の支援団体につなげる新しいサービスづくりを進めています。この日、同サイトの運営担当者である渡邉恵梨歌さんから同サイトの準備状況についても報告がありました。

すでにMex(ミークス)東京版が昨年4月からの運用を開始しており、これまでの10カ月で4万4千人以上がアクセスしました。だれにも相談できずに悩んでいる子どもたちに気軽にアクセスしてもらいたいと語っています。なお、現在6月の全国版オープンに向けて掲載サービスを募集しています。

http://3keys.jp/cat_other/170301/ 

10代のための相談窓口:Mex(ミークス)

https://me-x.jp/

法人様からのお問い合わせは

https://ws.formzu.net/fgen/S87882435/ 

NPO法人3keysのことは

http://3keys.jp/
<hr>

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