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東京の夜空に〔愛、地球、環境、平和〕の共感を!

ライトアップで社会的な活動を支援する東京タワー

東日本大震災から1カ月後、東京タワーの展望台に「GANBARO NIPPON」と光のメッセージが灯りました。当時、近くの神谷町で仕事をしていた記者もあのメッセージに勇気をもらいました。地上デジタルの終了で総合電波塔としての役割の一部を譲ったものの、海外からの観光客が押し寄せています。

[2017年5月30日公開記事]

日本を勇気づけたGANBARO NIPPONのメッセージ

日本を勇気づけたGANBARO NIPPONのメッセージ

東京の夜空に新たな魅力を発信する

Q1 先頃、東京の桜の開花に合わせた東京タワーのライトアップが話題になりました。

小椋:3年前から桜の開花時期に合わせて、東京タワーのライトアップを行ってきました。今年は3月21日に気象庁が東京の桜の開花宣言を行い、その夜、搭全体をピンク色に染めてみました。

ピンクの色調は、「ダイヤモンドヴェール」と呼ばれる276灯のライトの色調を調整して生まれます。家路に急ぐ、サラリーマンの方も春の訪れを感じていただけたのではないでしょうか。

東京の桜の開花に合わせて2017年春のライトアップ

東京の桜の開花に合わせて2017年春のライトアップ

Q2 普段の定番は「ランドマークライト」という180個のライトで照らすものだそうですね。

小椋:ええ、普段は「ランドマークライト」と呼ばれる180灯でライトアップしています。ただ、これにも夏と冬の2つのバージョンがあります。

夏のランドマークライトは「メタルハライドランプ」と呼ばれるシルバーライトを使用し、白色を基調にすっきりと涼しげなイメージにしています。毎年七夕の頃から夏型に変更します。

冬のランドマークライトは「高圧ナトリウムランプ」と呼ばれるオレンジ色のライトを使用し、冬の透き通った空気の中で、より一層輝きを増しています。こちらは毎年10月初旬の夜から冬型に変更します。

ランドマークライト(左が夏バージョン、右が冬バージョン)

ランドマークライト(左が夏バージョン、右が冬バージョン)

〔愛、地球、環境、平和〕をコンセプトに、社会啓発活動を行う

Q3 各種イベントやプロモーションでもユニークなライトアップを活用されているようですね。

小椋:「乳がん早期発見啓発キャンペーン」「女性に対する暴力をなくす運動」「世界自閉症啓発デー」など話題のイベントやキャンペーンにも協力する形でライトアップを行っています。ただ、あまりにもひんぱんにそれをやりますと、価値が薄れ、効果も半減しますので、そのあたりの加減が難しいところです。

バレンタインデーに合わせた反DVキャンペーン

バレンタインデーのダイヤモンドヴェール


女性に対する暴力をなくす運動で

女性に対する暴力をなくす運動のダイヤモンドヴェール

Q4 東京タワーの歩みと、なぜライトアップが行われるようになったのか、教えてください。

小椋:東京タワーは、テレビの普及や第一回目の東京オリンピックなどを契機に需要が高まった、テレビやラジオなどの放送電波の送信タワーとして首都圏一帯に電波を送り続けてきました。現在は、FM放送などの送信を行ったり、デジタルテレビ放送におけるバックアップ施設としての役割を担っています。

誕生当時からフランスのエッフェル塔(312m)を超えるランドマーク(地域のシンボル的なモニュメント)としてつくられました。ただし、ライトアップという視点は当初は弱く、タワーの輪郭を照らすイルミネーション(電飾)だけでした。イルミネーションの電灯が1個欠けるだけで実にみすぼらしく見えたので、開業30周年を記念して1989(昭和64/平成元)年1月1日から搭全体を照らす「ランドマークライト」によるライトアップに切り替えました。

ライトアップを手掛けたのは、わが国の照明の第一人者である石井幹子さんです。この年の7月25日に東京タワーは来塔者数が1億人を達成しました。先ほどお話した「ダイヤモンドヴェール」は2008(平成20)年12月23日からで、こちらも石井幹子さんが手掛けました。

「ダイヤモンドヴェール」は、全部で17段ある光の階層それぞれが、七色に変化する機能をもち、色ごとにメッセージが込められています。メッセージの中心となっているのは、愛、地球、環境、平和等を守る心を育むこと。こちらは基本的に土曜日の20:00〜22:00に加え、バレンタイン等の特定のイベント日にも点灯しています。

特定の日だけ行われるダイヤモンドヴェールレインボー

特定の日だけ行われるダイヤモンドヴェールレインボー

Q5 東日本大震災当時、東京タワーは東北に向けたボランティアの送迎拠点としての役割を担ってきたそうですね。当時のお話も聞かせください。

小椋:実は、2011年3月11日に東北地方を襲った東日本大震災で、東京タワーも被害を受けました。搭頂部のアンテナが変形したのです。また、地震の大きな揺れで、展望台にいた来塔者は階段を下りて避難しました。幸いにもけが人はありませんでしたが、タワーの営業は1週間中止となりました。

営業の再開と同時に、私たちも被災地のために何かできないかと考えました。当時、港区の「打ち水キャンベーン」などで連携のあったハッタケンタローさんらと一緒に「アースデイ東京タワー・ボランティアセンター」を立ち上げました。

東京タワーを被災地に向けた物資補給や週末ボランティアの発着拠点として活用してもらいました。当時はガソリン不足が深刻で、てんぷらを揚げたあとの油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料で走る「てんぷらバス」もここから出発しました。

また、震災前から「三陸・大船渡 東京タワーさんままつり」が東京タワーを会場に行われており、そのご縁で東京タワーの職員や兄弟会社である千葉県のマザー牧場の職員20〜30人が岩手県・大船渡に震災支援に出かけました。

東京タワーに集まり、震災支援に向かうボランティアの人々(2011年)

東京タワーに集まり、震災支援に向かうボランティアの人々(2011年)


職員たちが岩手県・大船渡に炊き出し支援に(2011年)

職員たちが岩手県・大船渡に炊き出し支援に(2011年)

特別展望台の工事のため朝までライトアップ中

Q6 2020年の東京オリンピックの開催に向け、わが国はインバウンドの観光客誘致に力を入れています。東京タワーの新たな魅力づくりなど対策がありましたら……。

小椋:高さ333メートルの東京タワーは、東京スカイツリーに抜かれるまでの51年間、自立式鉄塔としては日本一の高さを誇ってきました。そして、いまも東京の観光スポットとして根強い支持をいただいています。東京の真ん中に位置しているため、、360度のパノラマとして今の東京を間近に見ることができます。

東京タワーには、150メートルの大展望台と250メートルの特別展望台があるのですが、現在、2017年中のオープンに向けて特別展望台のリニューアル工事を行っています。そのため、通常だと24 時に消灯してきたライトアップが工事の関係で明け方まで点灯されています。これは意外と知られていません。

この工事が完成すればエレベータはより快適となり、特別展望台の内装も一新されて、より楽しく魅力的な場所になるはずです。

現在、東京タワーの来搭者のうち海外のお客様は3割ですが、海外のお客様に向けて、英語・中国語・韓国語に加えてスペイン語などのネイティブスタッフを配置しています。また、海外のお客様にお越しいただけるよう、東京タワー公式SNSなどモバイルでの情報発信を強化しつつあります。

取材にご協力いだいた広報・マルチメディア担当の小椋信也さん

取材にご協力いだいた
広報・マルチメディア担当の小椋信也さん

東京タワーのご案内は

https://www.D.co.jp/
東京タワー10

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