CSRフラッシュ

アメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミー2018“やる気や意欲”はこうすれば高まる

リンクアンドモチベーションの田中康之さんが NPOの次世代リーダーたちに語る

「アメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミー」が2月に東京で開催された。このプログラムが始まって今年は10年の節目。全国からNPOなどの非営利組織で働く次世代リーダー30名が参加した。2泊3日の多彩な研修プログラムから、“やる気や意欲”をいかに引き出すかをテーマにした田中康之さんの講義の一部を紹介したい。[2018年4月4日公開]


リーダーシップ・アカデミー2018の講義風景

リーダーシップ・アカデミー2018の講義風景

社会課題に挑戦する未来のリーダーを養成する

「アメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミー」は、「明日のリーダー育成」をテーマに、アメリカン・エキスプレス(本社・米国ニューヨーク 市)が、2008年より世界9か国で展開している社会貢献プロジェクト。NPOなどの非営利団体で働く次世代のリーダーを対象にした研修プログラムです。

日本においては、公益社団法人日本フィランソロピー協会(東京都千代田区/会長:浅野史郎、理事長:高橋陽子)の協力のもと、2009年から毎年実施し、これまでの参加者は総勢で341名となりました。全国に広がる卒業生たちは、NPO次世代リーダーとして交流の輪を築いています。

2泊3日のプログラムは、わが国におけるイノベーション研究の第一人者として知られる米倉誠一郎法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授の総合監修で、社会課題解決のための実務能力を高める内容となっています。

5月には九州・福岡でも「アメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミー2018」が開催される予定です。詳しくは、公益社団法人日本フィランソロピー協会のホームページをご覧ください。

5つのグループに分かれ、与えられた課題に 取り組む参加者たち

5つのグループに分かれ、与えられた課題に
取り組む参加者たち


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“やる気”を伸ばす管理術


講師はリンクアンドモチベーションの田中康之さん


講義中の田中康之さん

講義中の田中康之さん

リーダーには“やる気”を育てる力が必要だ

一人ひとりの“やる気や意欲”を高め、組織の成長につなげるのが「モチベーションマネジメント」です。モチベーションを高める能力は、ヒューマンスキルをもった特定の人間だけに与えられたセンスだととらえがちですが、スキルを磨くことで誰にでも得られる能力です。組織を動かすリーダーには欠かせぬ能力といえます。

たとえば、モチベーションが下がっているといった場合、何が理由で下がっているのかを特定する必要があります。ポイントは、「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」のバランスであり、そうした力の最大化を図ってやることが大切です。具体的に考えてみましょう。

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“やる気”のスイッチ は人によって違う

人間には、大きく分けると4つのモチベーションタイプがあります。簡単に説明しましょう。

1つは「ドライブ欲求」タイプ。成功を収めたい、周囲に影響を与えたいという意欲が強く、意志薄弱な状態や人への依存を避けたいとします。

2つめは「アナライズ欲求」タイプ。さまざまな知識を吸収し、複雑な物事を究明し、自信を持ちたいというタイプです。勢いだけで走ることや、無計画な状態を避けたいとします。

3つめは「クリエイト欲求」タイプ。新しいものを生み出したい、楽しいことを計画したい、自分の個性を理解されたいという願望が強く、平凡であることや同じことの繰り返しは避けたいというタイプです。

4つめは「ボランティア欲求」タイプ。このタイプは、人の役に立ちたい、平和を保ち、葛藤を避けたい、中立的な立場でいたいという傾向が強く、他社との戦いよりも協調を優先します。

「やりたいこと」を把握し、評価する

よく、人は褒めると“やる気”が出るとされますが、4つのタイプごとに褒め方にも工夫をしないとやる気が出ません。

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「ドライブ欲求」タイプの人間には、明確な目標設定と達成状況を示し、ライバルなども設定して、権限や責任を拡大してやると“やる気”が出ます。このタイプには、「凄いね、さすが」と自尊心を満たしてやることが大切なのです。

「アナライズ欲求」タイプの人間には、能力向上の学習機会を与え、長所の活用の機会を与えるとともに、多少の失敗は許容することが必要です。このタイプの人間には、やみくもに行動だけを押しつけるのではなく、企画などで「分析が深いね、さすが」と褒めてやりましょう。

「クリエイト欲求」タイプの人間には、アイデアや視点のよさを認め、変革への期待とともに業務の改善などを任せましょう。このタイプは、独創性を制約したり、提案の無反応が一番心にこたえます。「面白いアイデアだね、さすが」と評価してあげましよう。

「ボランティア欲求」タイプの人間には、日々の貢献への感謝と励ましが有効です。良好なチームワークを醸成するため同僚との交流機会を大切にします。せっかく貢献しているのに、関心を示さないと心がくじけます。また、貢献行為を拒む壁に出くわすこともモチベーションのダウンにつながります。「貴重な貢献ありがとう」としばしば感謝を述べましょう。

4つのタイプで分類しましたが、人間は単純ではありません。2つ以上のタイプが混ざっている人間も少なくないのです。どの欲求が強いかで、ある程度予測をして対応することが可能です。

「やるべきこと」を認識させる

目標を決める際に、どうやったらそれが成し遂げられるかを知ることが大切です。「やりたいこと」と「やれること」は違うことが多いからです。

何かをやり遂げるには、その対象物が「変えられるもの」か「変えられないもの」かを見極める必要があります。

たとえば、自分 対 他人から考えてみましょう。「自分」は変えようとすれば変えられますが、「他人」は簡単には変わりません。他人を変えてやろうと意義込むよりも、まず自分から変わることで、他人に対しても変化を促すことができます。

次は思考・行動 対 感情・生理反応。人間の「思考や行動」は変えられますが、「感情や生理反応」は変えられません。ただし、自分自身の思考や行動を変えることで、ある程度自分の「感情や生理反応」を制御する術を身に付けることはできます。

未来 対 過去。過ぎ去った「過去」をあれこれ考えるのはあまり意味がありません。過去は未来のためにあるもので、「未来」ならこれからつくっていけます。

つまり、「自分」「思考」「行動」「未来」は変えられても、「他人」「感情」「生理反応」「過去」は変えられません。

「やるべきこと」を決める際、「変えられるもの」を選択し、いかにエネルギーを集中させるかが大切なのです。

どうすれば「やれること」が広がるか

人にも組織にも、成長ステップがあります。人材の成長度合いは、時間の経過のとともに右肩上がりに進むと考えがちですが、実際は成長と停滞の繰り返しの中で、段階的に成長していくというのが正しい認識です。

人材の成長を見極めるには、時間のスイッチを切り替えることも大切です。“短期から長期”に、“過去から未来”に切り替えることで、大きく視野が広がり、その業務がその人材の成長のステップに必要な業務であることを理解させることができます。

もう1つ大切なことは、焦点のスイッチの切り替えです。視界そのものも“低から高”、あるいは“狭いから広い”に切り替えることで、新しい視点が見えてきます。

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モチベーションマネジメントのポイントは、最初にも申し上げたように、「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」をしっかり把握し、その3つのバランスと力の最大化を図ることが大切です。

人間ですから、時間の動きの中で、いつしかマンネリが生じ、モチベーションが下がる局面があります。モチベーションを活発化させるためには、適度にモチベーションアップのきっかけとなるイベントを計画することも大切です。

「きっかけ」は待っているだけでは生まれません。「きっかけ」そのものを組織の中でつくる必要があります。きっかけづくりを呼び掛けることで、「ちょうどよかった!」「これをきっかけに〇〇〇をしよう」と呼びかけていくのです。


田中 康之(たなか・やすゆき)さん   株式会社リンクアンドモチベーション フェロー

田中 康之(たなか・やすゆき)さん
株式会社リンクアンドモチベーション フェロー


1976年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、野村證券株式会社を経て、2001年株式会社リンクアンドモチベーションに入社。 2010年にモチベーション研究所(現・モチベーションエンジニアリング研究所)所長に就任。2012年に株式会社インテック・ジャパン(現・株式会社リンクグローバルソリューション)取締役、2014年、株式会社リンクグローバルソリューション代表取締役社長を経て、現職。

※この記事は、「アメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミー2018」で行われた田中康之さんの講義の一部を当編集部で要約したものです。文責は当編集部にあります。

●お問い合わせ先


●アメリカン・エキスプレス・インターナショナル (社会貢献サイト)
http://www.americanexpress.com/japan/legal/company/philanthropy.shtml
●公益社団法人日本フィランソロピー協会
http://www.philanthropy.or.jp/

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