CSRフラッシュ

福島の子どもたちに‹甲状腺検診、尿中セシウム測定、血液検査›の無料検診を

福島第一原発からほど近いいわき市で、原発事故発生後、放射能測定を始めた「いわき放射能市民測定室たらちね」から、このほど1冊の本が届いた。『たらちね-ストロンチウム90測定の巻-』と題する絵本だ。本の紹介を兼ねて、「たらちね」の最新の動きと併せて紹介しよう。[2020年2月23日公開]

絵本に登場する「測定室のようす」

絵本に登場する「測定室のようす」

体の細胞やDNAを壊すストロンチウム90 の怖さ

CSRマガジンが、いわき市に「たらちね」を訪ねたのはおよそ1年前(前回記事)。その当時からストロンチウム90の測定をテーマとした絵本の作成を行っていました。それがついに完成したのです。

福島第一原発の事故の後、家族と子どもたちの命を守り、安全な食材を求めて母親たちの力で独自の放射能汚染測定に取り組み始めたのが「たらちね」でした。

「被災地の母親たちが一番気掛かりだったのは、原発から漏れた放射能による被ばく被害です。当時のいわき市には妊娠中の母親や小さな子ども連れの家族も大勢いました」と事務局長の鈴木薫さんが振り返ります。

完成した絵本は、しっかりした作りの大型版。表紙は黒板に向かう親子の姿でしょうか。かたわらに2017年5月に開所した「たらちねクリニック」で院長を務める医師の藤田操さんらしい人がコーヒーカップを持ってニコニコしています。

たらちねストロンチウム2

表紙を開けると、海原と浜辺のイラストが広がり、親子連れや子どもたちが元気に遊ぶ姿も。鳥やカタツムリやカメも一緒に遊んでいます。

たらちねストロンチウム3

最初に登場するのは、「どうしてストロンチウム90をはかるの?」。いわばこの絵本づくりのきっかけです。

「たらちね」では、被爆から子どもたちを守るために、放射能の測定を始め、現在もセシウム134、セシウム137、トリチウム、ストロンチウム90の測定を続けています。そうした地道な取り組みを続ける中で、ストロンチウム90が一番やっかいなものだと分かってきたのです。

ストロンチウム90は、カルシウムと似ていて骨にたまりやすく、ストロンチウム90が発するベータ線という放射能は、からだの中の細胞やDNAを壊してしまう危険があります。

ストロンチウム90の測定はとても難しく、ストロンチウム90から少しずつ変化するイットリウム90 を測ることで、もともとの値を測るそうです。

「たらちね」の活動に参加するお母さんたちは、専門家でも難しいとされるストロンチウム90の測定方法を一生懸命勉強しながら、土や水や食べ物がストロンチウム90に汚染されていないかどうかを調べています。

この絵本では、近くに住む漁師のヒロシさんが海で釣ったメバルのストロンチウム90を測定してほしいと「たらちね」にやってくるところから始まり、測定室の仲間たちが、測定値の算出と報告をヒロシさんに行うまでをイラストと文章で表現しています。今回の紹介では、測定作業の大変な部分は省きますが、読んでいるだけで実際に測定を体験したような気持ちになります。

たらちねストロンチウム4
たらちねストロンチウム5

まだまだ先を見通せない福島の状況

東日本大震災と福島第一原発の事故発生からもうすぐ10年が経ちます。東京電力福島第一原発の敷地内にたまる汚染水の貯蔵タンクはどんどん増え続けるばかりですが、いまだに処分の方法さえ決まりません。

最近の議論では、「海洋放出」と「大気放出」のどちらかで行こうとしています。子どもたちへの影響とともに、福島県の農作物や漁獲物への風評被害が心配です。

大震災と原発事故を受け、「たらちね」では放射能測定の経験を経て「クリニック」を開設してきましたが、2020年1月から放射能の測定料金を改定し、無料で測定が受けられるようにしました。測定者の自己負担分もさまざまな寄付でまかない、一人でも多くの人々に安心・安全な日々を届けたいという願いがあります。

福島第一原発で、がれきの撤去をはじめとする廃炉作業の本格始動により、空中への放射能物質の放出量が前年比の2倍になったというニュースがありました。

どうか測定をご希望の方は「たらちね」にお問い合わせください。また、放射能測定料金の無料化の継続に向け、「たらちね」では寄付を募っています。こちらにもご協力ください。

*1 測定をご希望の方は「たらちね」のホームページをご覧になってください。
*2 なお、放射線量の高い地域の試料は、お預かりできない場合があります。

たらちね測定室の様子

たらちね測定室の様子


認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね


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