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故・中村哲医師の絵本『カカ・ムラド――ナカムラのおじさん』日本語版が発刊

アフガニスタンで医療支援のかたわら灌漑(かんがい)工事を続けてきた医師・中村哲さん(73)が何者かに銃撃されて亡くなったのは2019年12月4日のこと。あれから1年が経過し、このほど中村さんの活動を伝える1冊の絵本が発刊されました。

 

医療だけでは救えない命がある

日本語で『カカ・ムラド――ナカムラのおじさん』と命名されたこの絵本は、アフガニスタンの現地で中村さんの活動を語りつなぐために発刊された2冊の絵本、『カカ・ムラド〜ナカムラのおじさん』と『カカ・ムラドと魔法の小箱』がベースになっています。

前半に登場する『カカ・ムラド――ナカムラのおじさん』は、医師としてパキスタンやアフガニスタンの地で活動を始めた中村さんが、どうして用水路の建設に深くかかわることになったのかに触れています。

「どうして子どもたちが毎日のように病気になってしまうか、わかるかい?」

この絵本には、中村さんから村人への問いかけという形でその言葉が登場します。戦争とその後の干ばつで、畑にまく水も、みんなが飲むための水も不足していたのです。とりわけ、みんなが飲んでいる水が清潔でないことが人々の病気の大きな原因でした。

中村さんは、用水路の設計図を書き上げ、率先して村人とともに用水路を掘り進めました。そして6年もの長い歳月をかけてようやく用水路が村までつながりました。

自ら建設重機を操作する中村哲医師(写真提供:ペシャワール会と市民の声ねりま)

東の果ての国から来た村の大切な友人

後半に登場する『カカ・ムラドと魔法の小箱』は、現地に暮らす少年ソラブと中村医師の交流から生まれる物語。中村医師の活動で、ソラブ少年の家族の暮らしがどんどん変わる有様が描かれます。アフガニスタンにおける家族のきずなが随所に見られます。

こちらの訳文は、長崎出身の歌手さだまさしさんによるもの。福岡県出身の中村医哲師とは、九州出身ということもあって親しい間柄でした。

中村医師亡き後も、ペシャワール会などの仲間たちによって「アフガン・緑の大地計画」が進んでいます。

荒れ果てた大地が、用水路によって緑の大地に生まれ変わった。水路の完成前(左)と完成後。
(写真提供:ペシャワール会と市民の声ねりま)

中村哲さんはパキスタンのハンセン病患者の治療を目的に1983年に「ペシャワール会」を発足、1984年5月にパキスタン北西部のキリスト系病院に着任しました。ハンセン病患者の足底にできる傷を予防するため、サンダルの工房を病棟内につくるなど、医師の枠にはまらないユニークな医療を続け、その後、ソ連軍のアフガニスタン侵攻で国土が荒廃したアフガニスタンにも活動の輪を広げていきました。

『カカ・ムラド――ナカムラのおじさん』は、アフガニスタンのガフワラさんの原作で、訳文はさだまさしさんとなっており、双葉社から本体1500円で2020年12月に発行されています。

NGOペシャワール会

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