企業とNGO/NPO

こども食堂と地域社会をつなぐ『みんなの絵本ボックス』

Facebook Japanは、2021年末の12月16日、全国のこども食堂の支援を行う認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえと共同で、こども食堂と地域社会の接点を広げる「みんなの絵本ボックス」の提供を開始しました。「絵本ボックス」の設置第一号となった東京調布市の「こども食堂かくしょうじ」からレポートします。(2022年1月3日公開)

「こども食堂かくしょうじ」に設置された「みんなの絵本ボックス」

「おいしい」を分かち合い、安心と成長をみんなで共有できる場に

師走の空に夕暮れが迫っていました。午後4時半。調布市の閑静な住宅街の一角にある覚證寺(浄土真宗本願寺派、細川真彦住職)に親子連れや子どもたちが次々と訪れてきます。

「かくしょうじこども食堂受け取り場所」と書かれた看板を頼りに本堂横の庫裡に入ると、ボランティアの皆さんが名前を確認し、予約した弁当とともに、その日地域の支援者から寄せられたお米、スイーツなどを入れた袋を手渡します。

利用者に弁当を手渡す細川住職(左)

「こども食堂かくしょうじ」の開催は、毎月第1・3木曜日の2回ですが、コロナ禍となってからは食堂を閉じ、代わりに弁当の配布を行っています。利用料金は子どもが100円、大人が300円です。

記者が訪ねた12月16日、弁当の手渡し場所の側に「みんなの絵本ボックス」が初めて置かれました。親御さんと一緒に訪れた子どもたちの目は早速そちらに向けられます。子どもさんが絵本を手に取ると、「自由に持っていっていいよ」と細川住職がやさしく声を掛けていました。

絵本を手にする子どもたち

この日、弁当を受け取った方は総勢で50数名。弁当の受け渡し時間が終わる午後7時過ぎには、弁当の配布時場所近くにあった十数冊の本も、わずか数冊を残すだけとなりました。


食べる、遊ぶ、学ぶ――生活に根ざした体験を子どもたちに

江戸時代から続く古い寺院の住職でもある細川さんが、「こども食堂かくしょうじ」を始めたのは2016年4月。子どもたちが自由に遊べ、宿題もできる場はそれ以前にも提供していましたが、お腹を空かした子どもたちに手づくりのおやつを出したときの笑顔はとびきり輝いて見えました。

「“食べる”は、“生きる”の基本なんだ」と実感した細川さん。PTAの活動などを通じて知り合った地域の父母仲間、民生委員、保護司などの顔見知りに声を掛け、スタートしたのが「こども食堂かくしょうじ」でした。

ホールではこの日も10名を超えるボランティアが弁当づくりに精を出す

しかし、順調だった「こども食堂かくしょうじ」の歩みも、一昨年から猛威を振るい始めたコロナ禍で次第に影響を受けるようになりました。学校が休校になり、緊急事態宣言が発令されると、子どもたちが一堂に集まることも、一緒に食事を取ることも難しくなったのです。

一般住宅が多い覚證寺周辺では、数少ない飲食店も被害に遭っていました。そこで近所の飲食店に話をつけ、手づくりの利用クーポン券をつくってこども食堂と同額で配り、希望者は600円分の食事ができるようにしました。「多少の余剰金があったので、これを吐き出せばできると考えました」と語る細川さん。この試みは、子どもたちだけでなく、地域の大人の利用者、飲食店にも大いに喜ばれました。

12月16日は、Facebook Japanと認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが共同で立ち上げた「みんなの絵本ボックス」のお披露目の日でもありましたが、「地域の皆さんがこども食堂に足を運び、地域の子どもたちを気にかけてくれるきっかけになれば……」と細川さんが抱負を語ってくれました。

證寺住職の細川真彦さん

〈コラム〉
Facebook Japanと認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが提案する「みんなの絵本ボックス」とその取り組みについて

いま、地球が抱える課題を17の目標で示したSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)。2020年からは、SDGsの達成を目指す2030年までが「行動の10年」と位置づけられています。Facebook Japan は、2021年9月17日からスタートしたSDGs週間に先駆け、9月16日に、Facebook利用者一人ひとりの「SDGsアクションの自分事化」を促すコンテンツ『SDGs診断〜あなたに合ったSDGsアクションは?〜』を作成しました。

さらに、SDGsに関する活動を行うコミュニティと共創し、こども食堂の正しい認知のきっかけづくりを目指す『Re-labelingプロジェクト』を、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえと共同でスタートしました。

Re-labelingプロジェクトには、こども食堂に向けられてきた「貧困世帯だけの居場所」といった誤ったラベル(イメージ)をはがし、「子どもの貧困対策だけではなく、多世代交流が行われる地域に開かれた居場所」にするという想いが込められています。

そして、「Re-labelingプロジェクト」の第一弾として、2021年9月22日に「NPO法人スーパーダディ協会」と「こども食堂waiwai」の協力のもと、「リラベリング発想ワークショップ&デリバリー絵本展」を開催しました。

今回発表した「Re-labelingプロジェクト」の第二弾となるこども食堂と周辺地域を「読み終わった絵本」でつなぐ、「みんなの絵本ボックス」のサインは、MetaのニュースルームMeta日本公式 Facebookページからダウンロードできます。こども食堂運営者の皆さんが、任意のサイズに印刷し、お手持ちの空き箱などに貼り付けるだけで、「地域住民や子どもたち向けに、地域の読み終わった絵本を集め、絵本を持って帰ることができる箱」を簡単に示すことができ、地域住民がこども食堂に関わるきっかけを提供することができます。

上:「みんなの絵本ボックス」通常版/ 下:「みんなの絵本ボックス」ブランク版
(こども食堂が自身でルールをカスタムすることも出来ます)

「Re-labelingプロジェクト」の第一弾「リラベリング発想ワークショップ&デリバリー絵本展」や第二弾の「みんなの絵本ボックス」の取り組みは、SDGsが掲げる11番目の目標である「住み続けられるまちづくりを」を実現する一歩になるかもしれません。

「Re-labelingプロジェクト」を進めるにあたって、Facebook Japanと共同で同プロジェクトを立ち上げた認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえは、「こども食堂はこの4年で全国約5000か所、15倍ほどに増えていますが、“貧困対策のため”だけに存在するのではありません。地域のこどもたちが安心安全に過ごせ、健やかに成長できる場にしたいと私たちは考えています」との声が寄せられています。

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