国内企業最前線
社会が必要とする商品サービスを発掘し、普及と推進をはかる
ソーシャルプロダクツ・アワード2022授賞式から9回目となる「ソーシャルプロダクツ・アワード2022」が2月に開催。本年は年度テーマ「東日本大震災からの復興につながる商品・サービス」から18の商品・サービスが、自由テーマ「生活者が『持続可能な社会』づくりに参加できる商品・サービス」から62の商品・サービスが選ばれました。大賞・優秀賞・生活者審査員賞の3賞に輝いた商品・サービスを紹介します。(2022年2月28日公開)
“社会性”と“商品性”を兼ね備えたユニークな商品・サービスが勢ぞろい
「ソーシャルプロダクツ・アワード」は、“社会性”と同時に“商品性”も兼ね備えた商品・サービスの普及・推進を通じて持続可能な社会の実現を目指そうと、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(東京都中央区、江口 泰広会長)が2013年から始めています。
国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の浸透という追い風もあり、この数年はソーシャルプロダクツへの社会的な関心も高まり、応募数は年々増える傾向にあり、応募してくる商品・サービスも、私たちが抱えるさまざまな社会課題を踏まえた、地に足の着いた商品・サービスが増えています。
9回目を迎えた「ソーシャルプロダクツ・アワード2022」では、多数の応募商品・サービスから80のソーシャルプロダクツ賞の受賞作品が発表。本誌では、2つのテーマの中からそれぞれ大賞・優秀賞、そして一般公募された20名の審査員から選ばれた生活者審査員賞の計6点を紹介します。
「ソーシャルプロダクツ・アワード2022」が選んだ
今年の上位3賞に輝いた6点の商品・サービス
1. 年度テーマ: 東日本大震災からの復興につながる商品・サービス
震災から10年が経った今も、被災地(岩手県、宮城県、福島県)には復興への大きな課題と、さらに被災により生じた新たな社会課題が数多く存在しています。復興の加速と持続的な地域社会の実現に貢献する商品・サービスを募集したところ、ユニークなアイデアと復興への想い、地域への愛が込められたプロダクツが、多数エントリーされました。プロダクツの幅が広がってきていることもあり、ビジネスとして成立している商品も多く、ソーシャルプロダクツの果たす役割が定着しつつあります。
年度テーマ 大賞
株式会社起点 「SIOME(シオメ)」
「循環と機能」をコンセプトに、福島で有機栽培された綿花を原材料にしたコットンブランド 〇受賞商品「SIOME(シオメ)」について 【審査員の評価】 年度テーマ 優秀賞 「ジビエ鹿革ルームシューズ」手づくりキット 駆除された天然の鹿革でつくるカラフルで履き心地のよいルームシューズ 〇受賞商品「TEZKURI MARCHE – ART 『ジビエ鹿革ルームシューズ』手作りキット」について 【審査員の評価】ルームシューズの素材にジビエ鹿革を使用している点は独自性が高く、一枚革でシューズにするデザインも素晴らしい。布製品を手作りしたことはあっても、革製品を手作りしたことがある人はあまり多くないはず、体験としても面白い。つくれる魅力を提供することで、商品の意味や価値などをより実感しやすくしている。質感が良く、色の組み合わせや風合いもお洒落で、洗練されているプロダクト。 年度テーマ 生活者審査員賞 有限会社オイカワデニム「地域資源メカジキの角(吻)を利用したジーンズ」 捨てられていたメカジキの角を新素材として活用したジーンズ 〇受賞商品「地域資源メカジキの角(吻)を利用したジーンズ」について 【審査員の評価】「メカジキの吻(フン)を活用したジーンズ」という着想がユニーク。ほかにない商品で、気仙沼のPRにもつながる。未利用資源であるメカジキの吻を超微粒子にして紡績にする独自の技術を保有。被災者の雇用、未利用資源の活用、すべてが土に還る天然素材の採用など、それぞれの活動を経て生み出されたメカジキの吻という素材が、デニムの質を上げている、すばらしい商品。 2.自由テーマ: 生活者が「持続可能な社会」づくりに参加できる商品・サービス 第1回から継続して募集している本テーマでは、「エコ(環境配慮)」「オーガニック」「フェアトレード」「地域の活力向上」など、社会課題の解決につながる幅広い商品・サービスの応募がありました。年々応募商品・サービスの取り組みレベルも上がり、応募数も増え、時代の変化を感じています。第三者の役に立つソーシャルプロダクツは、いつか必ず自分に戻ってくる、その好循環をこれからも生み出していきます。 自由テーマ 大賞 株式会社ネキスト「UpcycleLino(アップサイクルリノ)」 大量に廃棄される「裁断くず」を活用し、新しいファションブランドとして再生 〇受賞商品「UpcycleLino(アップサイクルリノ)」について 【審査員評価】自社の製造工程で出てくる裁断くずをもとに糸を作ることによって廃棄をゼロにし、完全なサーキュラーエコノミーを実現させたことが素晴らしい。完全に無駄を出さない仕組みを達成し、自然エネルギーを使用するなど、自然への配慮がなされている。ユニセックス仕様のデザインは、多くの人に魅力を感じさせる。 自由テーマ 優秀賞 株式会社G-Place「食品ロス削減マッチングサービス「タベスケ」」 食品ロスを減らし、自治体、協力店、市民(ユーザー)が三方よしとなれるシステム 〇受賞サービス「食品ロス削減マッチングサービス「タベスケ」」について 【審査員の評価】コロナ禍の食品ロス問題を解決に導くサービス。消費者、自治体、事業者など関連のある人々すべてにメリットとなるシステムで、食品ロス削減に抵抗なく積極的に取り組んでもらえる。食品ロスの実態や法律などの制度についてもホームページで発信しており、信頼性も高い。さらに食品ロス削減効果のデータを可視化させていて、消費者啓発や行動変革につなげている。機能性の向上や新機能搭載に向けたバージョンアップを進めており、サービスの質向上にも期待。事業は始まったばかりのため、参加自治体や協力店の増加が重要となる。 自由テーマ 生活者審査員賞 えひめ活き生きファーマーズ株式会社「ベジソルト」 規格外の野菜・柑橘類を乾燥させ、塩とブレンドした風味豊かな商品 〇受賞商品「ベジソルト」について 【審査員の評価】規格外や災害に合った地域からの野菜を無条件で買い入れ、農家さんたちの深刻な食品ロスの問題を解決する魅力的な商品。しっかりと野菜の香りや味がしており、品質も高い。商品化に「塩」を採用した点も独自性が感じられる。消費者の行動の変革も期待される。 ■「ソーシャルプロダクツ」とは ■ソーシャルプロダクツ・アワード(SPA)とは ◆ソーシャルプロダクツ普及推進協会について ■お問い合わせ先 <関連記事> ●つくる責任、つかう責任~ソーシャルプロダクツ・アワード 2018の授与式から
東日本大震災および原発事故からの地域復興を目指し、福島での綿花の有機栽培とそれらを原料としたものづくりを行ってきました。ブランド名の「SIOME(シオメ)」は親潮と黒潮が重なる福島近海の豊かな漁場である“潮目の海”から命名。ローカルのオーガニックコットブランドを目指し、原料生産から製造、消費までを日本国内で行うことで、持続可能な地域文化を作ることを目標としています。
【ウェブサイト】https://shop.kiten.organic
福島の記憶に残る生業をつくるという企業理念がプロダクトに上手く反映されている。共感を生む工夫やデザインのセンスが良く、欲しくなる商品としての工夫もある。オーガニックコットンというと「生成り・無地」が多くなりがちだが、そこにオリジナルの柄を乗せることで、他のブランドとの差別化ができる。2012年から福島で綿花の自社栽培を継続している点が評価できる。この魅力的なプロダクトのストーリー性やデザインのポイントなどの情報発信に期待している。
農林業被害を防ぐため駆除された天然の鹿革を使用。駆除された野生動物の革を無駄にせず資源として使うことで、自然と人とのつながりを感じるサステナブルなルームシューズとなりました。キットには2色の革と2色の縫い糸が入っており、自分だけの特別なルームシューズが手作りできます。「TEZKURI MARCHE–ART」を自社ブランドとして立ち上げ、今後はアクセサリーの花咲くピアス/イヤリングも展開します。
【ウェブサイト】https://www.creema.jp/item/11174400/detail
漁師が命を懸けて獲ったメカジキも角は捨てられていました。これを地域資源として活用すべく、高付加価値を持ったデニム生地に加工し、末永くはけるデニム生地として再生しました。地域資産の再認識、再加工を軸に、新しい、だれもが誇りを持てるブランドをつくっていきます。異業種や地域を巻き込むことにより、気仙沼地域の底上げと、地域雇用の促進を作り出すプロジェクトです。
【ウェブサイト】http://www.zerodenim.com
服の製造工程から出る裁断くずは3割にも及びます。それを色別、混率別に細かく分別し、株式会社ナイガイテキスタイルで反毛し、バージン綿をつなぎに紡績して糸に戻します。その糸を株式会社ヤギが、浜松で製織、和歌山で編立して生地に戻し、再び自社がその生地で服を製造する完全なサーキュラーエコノミーを完成させました。特色のある産地をつなぎ、疲弊する国内ファッション産業の一助になることを目指しています。
【ウェブサイト】https://upcyclelino.com/
サービス対象となる自治体内の食品関連事業者が「食品ロスになりうる食品」をシステム上で安く出品し、一般ユーザーの方がお得に購入予約できる仕組みです。市民であるユーザーは食品を安く購入でき、食品関連事業者は食品を提供することで利益が生まれ、食品廃棄物の削減ができます。仕組みを導入する自治体は自治体内の食品ロスおよび廃棄物量の減少と廃棄物処理費用の削減、食品ロス関連の統計データの“見える化”が可能に。自治体がシステムを導入し、ユーザーおよび食品関連事業者は無料でサービスを利用できます。【ウェブサイト】https://tabesuke.jp/
西日本豪雨の際に大量の野菜破棄を経験。「そんな農家さんを助けたい!」という想いをきっかけに野菜・柑橘を活用した商品開発を開始。商品化を進めるにつれて直面した深刻な問題が食品(隠れ)ロスでした。流通されず破棄される規格外の野菜・柑橘を利用するため、焼き塩とミックスして生まれたのが「ベジソルト」。野菜や柑橘の味が詰まった新しい商品です。
【ウェブサイト】http://ikiikifarmers.com/
「エコ(環境配慮)」や「オーガニック」「フェアトレード」「寄付つき」「地域や伝統に根差したもの」など、人や地球にやさしい商品・サービスの総称で、購入者が持続可能な社会づくりに関する行動や団体とつながることができるものを指します。
ソーシャルプロダクツの普及・推進を目的に設けられた、日本初で唯一の表彰制度。優れたソーシャルプロダクツの情報を生活者に広く提供するとともに、ソーシャルプロダクツを通して持続可能な社会づくりに取り組んでいる企業、団体を応援します。なお、2023年の年度テーマは「DX時代の革新的なソーシャルプロダクツ」、自由テーマは「生活者が『持続可能な社会』づくりに参加できるソーシャルプロダクツ」と発表されました。
「ソーシャルプロダクツ」の普及・推進を通じて、生活者や企業などと共に、持続可能な社会の実現を目指す非営利の組織です。
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会
●人や地球にやさしい商品・サービスで、より良い社会を
●進化続ける日本のエコ製品が一堂に!~エコプロダクツ2017から
●みんなで屋根上ソーラーをつくろう!~日本初・体験型施工DiOがついに実現
●人や地球にやさしい商品・サービスで、より良い社会を~㈳ソーシャルプロダクツ普及推進協会の活動から
●なぜ、私たちは「持続可能な開発目標(SDGs)」に取り組むのか
●野生の鹿肉を、良質のペットフードに~渡邊智恵子さんに聞く
●2020年と、その先へ。未来に挑み続けよう!社会課題解決を呼びかける認定NPO法人ETIC.のイベントから
●激動の昭和をつづった青春史『カタツムリの記』を出版