国際連帯税でリーディング・グループ総会

日本は議長国として成果を出すに至らず

12月16~17日、56ヵ国と20の国際機関、18の団体が参加して「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」第8回総会が開催された。この総会は、深刻化する貧困・感染症や地球温暖化問題などの課題解決を阻んでいる資金不足に国際連帯税など新しい支援資金をどのように創出していくかの議論を行うもの。議長国である日本政府の対応に期待が集まったものの、大きな進展は見られなかった。

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「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ第8回総会」に出席した前原外務大臣(外務省より)

会議の冒頭、議長国である日本政府を代表してあいさつに立った前原誠司外務大臣は、「2011年度税制改正で航空券連帯税が先送りとなったが、引き続き政府税制調査会の議論を通じ、国民の理解を促進したい」と語った。

今回の総会では、リーマンショック以降急速に進む先進各国の財政悪化でODA(政府開発援助)が頭打ちとなるなか、貧困対策などへの新たな財源として浮上しつつある、国際連帯税(航空券連帯税、グローバル通貨取引税、グローバルたばこ連帯税など)の各国における推進の動きを検証するとともに、今後の進捗に向けた取り組みの拡大策などについて確認するにとどまった。なお、次期議長国としてマリが(2011年1月1日就任予定)、その後の議長国としてスペインが選出された。

それでも国際連帯税は必要だ
NGOなどが国際シンポジウムを開催してコミュニケを採択

総会前日の国際シンポジウム出席者(左)と元フランス外務大臣フィリップ・ドスト=ブラジ氏(右)

12月15日、「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」第8回総会の開催を前に、東京都内で「連帯と希望:国際連帯税を実現するための国際シンポジウム」が開催された。

シンポジウムには、英国やフランスで国際連帯税を進めてきたNGOや政府代表のほか、2006年のフランスで航空券税導入の立役者となった当時のフランス外務大臣フィリップ・ドスト=ブラジ氏(現革新的資金調達に関する国連事務総長特別顧問、UNITAID理事長)らが参加した。

ブラジ氏は、「エールフランスも当初は航空券税に反対だった。航空券税はフランスの空港に発着するすべての航空会社に適用されるもので、金額もごくわずか。業績にはなんら影響なかった。いまではUNITAID(資金の使途先であるエイズ・結核・マラリア等の感染症対策の治療薬を提供する団体)の広告がエールフランスの機内誌に出ており、フランス人は誇りに思っている」と語った。

国際連帯税は、国境を越えたグローバルな活動に広く薄く課税を行い、途上国などの貧困対策に安定的な資金を確保するのが狙い。国際通貨取引に0.005%の課税を行うだけで、約300億ドル(3兆円)前後の税収が期待できるといわれる。

すでに航空券連帯税は韓国など15カ国で実施されている。しかし、わが国における航空券税の導入については、全日空や日航など航空業界と国土交通省が反対にまわったほか、財務省も厳しい対応を崩していない。

わが国でも超党派の「国際連帯税創設を求める議員連盟(林芳正会長)」が発足して活動を続けているほか、国際連帯税推進協議会(通称寺島委員会:寺島実郎座長)が政府に対する政策提言を進めてきた。

フランスのサルコジ大統領は来年のG20サミットの議長国として「開発のための金融取引税」を優先的に扱うと発言。ドイツのシュタインブリック財務大臣は、このサルコジ発言を受けて、共同歩調を取ると述べている。

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