ISO26000がソーシャルビジネスの定義を変える

~「社会的責任」がもたらすチャンスとリスク~

2010年11月1日。9年間の議論を経て、ISO26000のガイダンス文書が正式に発行された。あらゆる組織の社会的責任に関する国際規格ともいうべきもので、これにより社会的責任(Social Responsibility)について、国際的な統一基準が提案されたことになる。企業のCSR・広報の取り組みに詳しいアミタエコブレーン㈱蝦名 裕一郎氏にISO26000とソーシャルビジネスの関係について聞いた。

アミタエコブレーン株式会社 マーケティング事業部  蝦名 裕一郎氏に聞く

ISO26000とは?

Q 蝦名さんは、ISO26000が組織に与える影響は決して小さくないというお立場ですが、どのような影響が想定されますか。
蝦名 私は仕事柄、企業のCSR・広報などを担当している方々とお話することが多いのですが、グローバルな企業ほど迅速にISO26000への対応を進めています。ISO26000が国際規格であるというのがその背景にあります。一方で、どういった影響があるのか良くわからないので特に対応しないという声も伺います。しかし、中小企業も含めISO26000が国内外に影響を及ぼすことは必至です。ISO26000に取り組まないことは大きなリスクを抱えることになります。また、ISO26000は企業価値を高めることになります。これをチャンスとして捉え、積極的に取り組むのが良いでしょう。

そして、このISO26000発行を機に、現在注目されているソーシャルビジネスの定義やあり方が見直され、現状ソーシャルビジネスと自称している組織も本当の意味でソーシャルビジネスなのかを問われることになります。それとは逆に、現在ソーシャルビジネスとして認識されていない組織も、ソーシャルビジネスとして認識される可能性があります。

Q ソーシャルビジネスの定義に少なからず影響があるということですが、まずISO26000の特色についてご説明いただけますか。
蝦名 まず、ISO26000の特徴を3つ挙げましょう。以下の表をご覧ください。

表1:ISO26000の3つの特徴
1 認証規格でなく、ガイドラインである
2 ISO26000は組織規模も、法人形態も問わない
3 ISO26000の対象範囲に、人や組織の関係性がふくまれている

1番目の「認証規格でなく、ガイドライン」の意味ですが、ISO26000は日本でなじみの深いISO14000と違って、認証規格でなくガイドラインとなっています。従って、特定の基準を満たすことによって、認証されるものではありません。

2番目の「組織規模も、法人形態も問わない」の意味ですが、ISO26000の特徴は、「企業に限らない規格である」という点と、「組織の規模を問わない 規格である」という2点です。つまり、中小企業はもちろん、現在「ソーシャルビジネス」と自らを定義している小規模な事業者や、NPOもその対象になりま す。

3番目の「対象範囲に、人や組織の関係性がふくまれている」の意味ですが、
ISO26000の対象となる範囲は、ガイダンスの6章に記載されている7つの「社会的責任の中核主題」です。この中核主題は、「組織が最低限果たすべき社会的責任」と考えてもらえばよいと思います。

表2:7つの中核主題
組織統治
人権 労働慣行 環境 公正な
事業慣行
消費者に
関する
課題
コミュニティ参画
および開発
出所) ISO/DIS26000 Introductionより作成

今まで日本ではISOというと、技術、品質、環境といった規格のイメージでしたが、今回は人権、労働慣行、公正な事業慣行、消費者に関する課題、コミュニ ティ参画および開発等、人や関係性といった部分にもスポットをあてています。特に取引先と組織の社員にも配慮しているところが特徴です。

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