復興支援は、企業とNPOとの協働で

新日本有限責任監査法人
CSR担当パートナー 大久保和孝

復興に向けた3つのステップ

復興に向けた時間軸について整理をしましょう。海外で活動するNGOの方に教えてもらいましたが、時間軸では3:3:3の原則というのがあるそうです。最初のステップは「物流インフラが正常化するまで」。通常は3週間が目安ですが、今回は遅れています。次のステップは、「生活インフラがある程度整備され、正常な生活に戻るまで」。通常は災害から3カ月が目安です。3つめのステップは一番お金も時間も掛かる「復興支援」です。こちらは3年が目安です。

第一ステップは一般的には「緊急支援」とも呼ばれます。第二ステップの後期から第三ステップまでを「復興支援」と読んでいます。参加の皆様に、どの時点でどのような支援をどのように配分していくのか、それを考える機会を提供したいと思います。

緊急支援から復興支援へ

第一ステップの「緊急支援」ですが、ここに企業が入り込める余地はほとんどありません。あえて何かできるとすれば、モノとカネを出すしかありません。現実にはモノが足りないといわれていますから、モノを送るというのが第一の支援策ということになります。

緊急支援では、「物資を集める人」「物資を運ぶ人」「物資を分配する人」、全体のPDCAの中でさまざまなNPOの役割が始まります。物資を運んだけれども分配ができないといった問題が生まれています。企業は各NPOがどのような領域でどのような活動ができるのかをしっかりウォッチする必要があります。

宅急便なども動き始めていますけれども、なかなかモノが届きません。そこででてきたのはセカンドハーベスト・ジャパンのような団体です。東京のある住所に物資を送りますと、NPO法人の人たちがトラックを仕立てて、現地に物資を運びます。自社の従業員にレンタカーを借りて持っていけというのも現実的ではありません。このような役割を果たすNPO法人は4つか5つあるようです。

いま企業にできることは何かといわれると、こうしたところに物資を積極的に提供することです。自分たちがいらなくなったものを送るのではなく、現地の人たちが足りないものを送るということです。セカンドハーベストというNPO法人のホームページを見ると毎日必要なものが変わっているのが分かります。

次に大事になるのは「生活インフラの整備」です。このあたりになると自衛隊は徹底する可能性があります。膨大に残った瓦礫の撤去からプレハブづくりまで、かなりの時間を要するでしょう。ある程度生活のメドが立って来た段階で心理的なケアも必要になってきます。大きな災害では、最初のフェーズばかりに注目しがちですが、うしろも大切になっています。

阪神大震災の折には、第三ステップでほとんど資金がなくなったと聞いています。肝心の「復興支援」のときに資金不足に陥ったわけです。

実は、いま日赤にだけ資金が集中する傾向にあるといわれています。義援金はあくまでも見舞金の世界でしかありません。今回のような大規模な災害では、町のインフラ整備も重要な課題です。当然ながら支援金の方も重要になっています。

資金だけではなく、知恵と人材を出す

大事なのは第二ステップと第三ステップの関係です。通常、企業は第三ステップが近づくと資金を出す余裕がほとんど残っていません。そのときに大事なのは企業の知恵や人を出していくことです。NPO法人とのパートナーシップを築きながら、復興支援にきちんと取り組むことが必要なのです。

第一ステップから第二ステップに向かういまの時期は、どのNPO法人とパートナーシップを組んでいくかを決める大事な時期でもあります。通常の義援金はどこにどのように分配されたかというところまでは分かりませんが、NPO法人の場合はどこにどのように使われたかという透明性が前提になっています。

現地で支援するプロとの協働

活動は、長丁場になります。自分たちのブレのない姿勢を明確に打ち出すことが必要です。私どものところにも震災後にさまざまな団体から資金援助の依頼が寄せられています。そのときに大切なのは経営理念だと思います。理念の実現の際に2つの観点が出てきます。1つは本業に近い分野における社会貢献と、2つめはこれまでの経験を活かせる社会貢献であるかどうかという点です。

そして、持続的な取り組みを維持していくには、従業員の納得感・モチベーションを高める方策を明示する必要があります。会社が外部に支援することで従業員のボーナスが削られたらどうでしょうか。それではマイナスの復興支援になります。

今回の復興に向けた活動を1年に一回のCSRレポートに掲載するだけではなくて、「活動の透明性」「(NPOとの連携による)迅速な行動力」「直接的な活動支援の経験をする機会とする」の3つが大切です。

瓦礫の撤去などはどれだけ人が必要か分かりません。そうした活動に参加することで肌身で社会貢献を感じてもらうことに意味があります。それが自分たちの理念を実現するモチベーションを高めていく活動につながるわけです。そうした活動こそが経営理念の実践につながるのだといえます。

トップへ
TOPへ戻る