復興支援は、企業とNPOとの協働で
新日本有限責任監査法人CSR担当パートナー 大久保和孝
だれもが願っている被災地への支援。復旧から復興に向けて、企業が果たすべき役割に期待が高まっている。東日本大震災から2週間目にあたる3月25日、新日本有限責任監査法人が緊急セミナーを開催した。復興支援に向けた企業とNPOとの協働がテーマだ。
広域化と長期化の中で
大震災から2週間が過ぎました。まだ好転の気配さえありません。緊急な召集でしたが本日は220社近い企業のほか、主たるNPO法人団体の関係者も参加しています。いま企業として何ができるのか、NPO法人とどのような関わり方ができるのか、ともに考えてみたいと思います。
この大震災は、規模と広域にまたがるという意味で阪神大震災を超えています。たくさんの町が壊滅しました。復興が大きな課題になります。新しい社会の担い手としてのNPO法人の力を借りずして、復興支援をなし遂げることはできないと思います。
この種の災害では、国際NGOの参加もありますが、国際NGOは復旧にメドがつく3カ月で通常撤退するのが基本スタンスです。阪神大震災では、復旧だけで15カ月掛かりました。今回の震災では30カ月以上掛かると政府関係者が語っています。企業の関わりが極めて重要になっています。
足元を見ると企業の業績も悪化する可能性があります。また、国の財政も破綻の危機を迎えています。限られた経営資源や国家財政の中で大きな成果を上げるためにもNPO法人とのパートナーシップは需要なキーワードです。
義援金と支援金の違いについて
多くの皆さんは義援金なら日本赤十字社(以下、日赤)に出しておけばよいと考えがちです。義援金と支援金の違いすら自覚されていません。義援金というのは被災者に対する見舞金です。町の復興には別の支援金(活動資金)が必要となります。社会インフラをどのようにして再建していくのか、地域社会と一体となった取り組みが求められています。被災者に義援金という名の見舞金を払ってお仕舞いというわけにはいかないのです。
日赤にさえ出しておけばよいというのはある種の“思考停止”です。社会貢献のあり方をあらためて考えるべき時期に来たのではないでしょうか。
日赤、中央共同募金会、NHK、地方自治体などに集まった義援金は、「義援金配分委員会」で配分基準が決められ、個人に見舞金として配布されます。日赤はもともと医療機関ですから、本来の医療の活動資金は事業支援金から別途支出しているそうです。
「自分でできることは自分で」という考え方があります。このような状況では「他人にできることは他人へ」という見極めも必要です。「NPO法人に任していけるものはNPO法人」にといいたいのです。企業は災害救助のプロでもなければ、災害復興のプロでもありません。それを専門にやってきたNPO法人と力を合わせてこそ、質の高い復興支援ができると考えています。
NPO法人の選定は企業理念に立ち戻って
大きな災害だからといって企業は義援金を出し続けることはできません。それではどのような活動に資金を出すべきでしょうか。1つは自分たちの経営理念に立ち戻るということです。
NPO法人の数は4万近くあります。この震災で新たなNPO法人も誕生しています。そんな中で自分たちの理念に合致するNPO法人を探すのは大変な作業です。しかし、お金を出すことで自分たちの理念の実現につなげるわけです。結果として企業価値の向上にもつながっていきます。今回はタイガーマスク的な発想ではいけないと思います。
復興支援をきちんと経営のPDCAの枠組みの中に取り込み、可能であれば従業員のモチベーション向上にもつなげていければと思います。