復興支援は、企業とNPOとの協働で

新日本有限責任監査法人
CSR担当パートナー 大久保和孝

NGOとNPOの全体像

顕著な活動を行っているNGOとNPOは、私どもの調査では61の団体に達しています。ホームページなどを見ると「今回の(資金の)使途」や「活動分野」の記載があります。もともとどの分野に強いかが書いてあります。

国際的に活動するNGOには、日本赤十字社や日本ユニセフ協会、セーブザチルドレンなどの団体があります。もう1つは国内を中心に活動するNPO法人もあります。この中には政府関連の「新しい公共を中心とした団体」である「社会福祉協議会」「震災ボランティア連携室(内閣府)」、中間NPO法人である「日本フィランソロピー協会」「ジャパン・プラットホーム」「チャリティ・プラットフォーム」などもあり、その下に現場で実働する各種NPO法人が多数あります。

税制上の優遇

今般の法令改正で「認定公益法人」という考え方が出てきました。無数にあった財団法人とか社団法人を整理するために生まれたものです。平成25年までに申請して許可が下りたもののみ「認定公益法人」として認めるという制度です。許可が下りなければ一般社団ということになるわけです。「認定公益法人」への寄付は、税務上の控除対象になります。

NPO法人の中には活動の中身がよく見えないものもあります。見えてくるのは代表の顔くらい。中には代表個人の活動ではないかと思えるものもあります。

1億円を拠出するとなると、その方に寄付することになりかねません。企業の経営トップには支出の責任が問われています。相手が暴力団とつながりがあったらどうでしょう。とても大きな結果責任が問われると思います。

公益社団法人というのがあります。内閣府の認定を通った団体です。この認定はそう簡単には取れません。社会的な形式要件は十分だと思います。

NPO法人の役割

NPO法人というのは内閣府や自治体に申請して、許認可が下りた団体です。NPO法人の中にさらに「認定NPO法人」があります。これは国税庁長官の認定を受けたNPO法人で、資金の拠出に対して税制上の優遇措置を受けられる団体です。現在、198法人あります。「認定のNPO法人」であれば、信頼できる要件を満たしているといえます。

ただ、税制のレベルは団体によって若干の違いがあります。日赤に対する拠出は全額損金控除できます。ところが「認定公益法人」と「認定NPO法人」については全額の控除は認められません。今度の国会でNPO法改正が論議される予定でしたが、すぐには実現しない可能性もあります。

中間NPOの活用

この2~3年の新しいトレンドとして、企業や個人の拠出金は一旦「中間NPO法人」に入れるケースが増えています。中間NPO法人は何をする団体かというと、現場で実働するNPO法人に資金の配分を行うのです。現場の実働NPO法人というのは、今回の震災でもシビックフォース・ジャパンといった団体は日赤よりも早くヘリコプターを借り上げ、現地での救済活動に当たりました。彼らはお金を受け取っている余裕もありません。集金的な業務をはじめとする事務的な業務については、中間NPO法人に役割を委ねています。

なぜ中間NPO法人が重要か。1つは事務手続きを代行してくれるため、税務処理などに安心だという点があります。2つめは中間NPO法人が現場で活動するNPO法人に対してスクリーニングをかけてくれるということです。中間NPO法人は公益社団法人や認定NPO法人である場合が多いので、企業側は資金を出しやすいかも知れません。

大事なのは自分たちの理念と合うNPO法人との協働です。
中間NPO法人に資金を出す場合も、どのNPO法人とつきあいたいのかを明確にすべきです。この団体はよさそうじゃないかということで抽出し、中間NPO法人と相談するのです。企業側の要望を聞いてもらえるのかを聞いたところ、受け付けるという回答でした。

手元の資料では、「チャリティ・プラットフォーム」「日本フィランソロピー協会」「ジャパン・プラットフォーム」「新しい公共を作る市民キャビネット」の4つの中間NPO法人を挙げていますが、これはあくまでも参考です。NPO法人の中には財務情報やガバナンス情報について開示していないところもあります。ただ、NPO法人の場合、財務監査については法定監査ではありません。最近では外部監査を入れる動きもあるようです。

資金を出す際に、財務情報やガバナンスについての情報を出すように促すことも企業の重要な役割だと思います。

特定の現地支援NPO法人に支援したい場合、そのNPOがつきあいのある中間NPO法人との関係ができていないというケースもあります。そうした場合、この中間NPO法人と関係をつけることは大丈夫かという問い合わせもすべきです。

最終的には、現地の支援を行うNPO法人との関係が重要です。今年の夏くらいから始まる復興支援については、私ども独自の人的支援も考えています。ただ私のような人間がいきなり現地に入ってもおそらく役に立ちません。現地で活動を行ってきたNPO法人の傘下に入って、そこに人を送り込んで彼らの手伝いを行うのはどうでしょうか。そうした相談ができるNPO法人とできないNPO法人が出てくるはずです。私どもでは、そんなことも視野に置きながら、どのNPO法人と協働するかの検討を始めています。

政府との連携

今回の震災復興は、政府、企業、NPO法人が一体となって取り組まなければなりません。いま、政府側にも「東日本大震災支援全国ネットワーク」がつくられています。主たるNPO法人が政府との連携の下で、取り組みを始めています。現在61団体があがっています。ここに加わるNPO法人というのはそれなりに選別されたNPO法人といえます。

最近では、震災支援の名の下で新しいNPO法人も次々と生まれています。ただ、企業がつきあうべきNPO法人と個人がつきあうNPO法人はおのずと分けて考えなければいけないと思います。なかには素晴らしい活動をしているが企業が数千万円単位の資金を出すのはちょっとという団体もあります。法人組織として拠出するかどうかの判断基準は、中間NPO法人との連携があるNPO法人、そして政府と連携のあるNPO法人ではないかと今回は考えています。

政府と連携を図っているNPO法人は、自治体のインフラ整備に近いところで活動していく可能性があります。もう1つは長い活動実績があり、なおかつ明確な取り組みをしている団体といえると思います。

NPO法人の役割には、「物資の募集・調達を行うグループ」「輸送・派遣を行うグループ」「緊急支援を行うグループ」「復興と自立支援を行うグループ」のほかに、「募金による資金提供」を中心に据えているグループの5つがあります。

その中で皆様がどこにどのような形でサポートしていくかが問われています。現実には、現段階では緊急支援で手一杯のところがあります。しかし、やがて復興・自立支援が必要になってきます。企業の皆様がNPO法人との対話を通じて、復興に貢献いただければと思います。

※このセミナーは、新日本有限監査法人が2011年3月25日に行った緊急セミナーをまとめました。講演から主要なポイントを抽出したもので、文責は当編集部にあります。

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