アースデイ東京2011「アースデイトークステージ」からPart 1:未来の子どもに内部被ばくの影響を与えない

未来バンク事業組合 田中優

放射能の確率的影響とは~10年後に出る被害の確率

放射能の被害は確率的影響という出方をします。たとえば、10万人の人が等しく1ミリシーベルトの放射能を浴びたとすると、10万人の中の5人から40人の人がのちにがんで死にます。どの人が死ぬかはあらかじめ分かりません。貧乏くじをひいた人ががんで死ぬんです。2ミリシーベルトだったらどうなるかというと倍になります。10ミリシーベルトでは10倍になります。

被害が出た人を見つけて病理解剖をしたとしたら、病理解剖をしても放射能が原因であるということは絶対に見つけられません。見つけることは不可能です。放射能で死んでも絶対分かりません。死に損になります。じゃ1/10の0.1ミリシーベルトだったらどうなるかというと、1ミリシーベルトの1/10の影響が出ます。安全な線というのはありません。

東京にも3月15日、21日、4月12日の3回放射能が届いてきました。浴びた量に比例して放射能の被害は出てくるわけですから、安全とは絶対にいえません。その人が絶対に病気になるともいえません。それは自分で判断しなければならないからです。被害が出るのは10年後くらいです。

10年経ったくらいからピークが来て、その頃に被害が出るわけです。いま、福島市、郡山市、いわき市の北部で放射能の濃度が高いわけです。そこの地域の方で小さいお子さんがいるから関西に逃げた方がいます。新学期が始まったのでまた福島市に戻りました。するとまわりの人たちは、神経質になりすぎだと言うわけです。私はここにいたけどピンピンしている。あなたはオオカミ少年のような人だと非難されています。

放射能の被害は確率的影響ででるという事実はテレビ、ラジオ、新聞が全然報道しません。教えていないからです。日本政府が認めている国際放射線防護委員会は、1ミリシーベルトを10万人が浴びたら、5.5人の死者がのちに出るとまとめています。

子供たちや胎児が危ない~チェルノブイリ原発事故後の影響

被害は遺伝子を傷つけて被害を及ぼします。放射線が細胞分裂するときに被害が出る可能性があります。細胞分裂するときに遺伝子情報をちょん切ってしまうわけです。それによって被害が出るので、私は年齢が高いのでほとんど影響が出ません。もう成長していませんから。だけど若い人は影響が出ます。子供は大人の十倍出るといわれています。胎児の場合は百倍出ると言われています。

被害は子供に出るので、子供が先に死ぬ社会が将来できるのです。チェルノブイリではそうなっています。チェルノブイリでは大人たちにあまり影響が出ないのに、一生懸命に育てた子供が小学生や中学生になると甲状腺がんを起して、死んだり手術を受けなければならなくなっています。

チェルノブイリの原発事故の後のウクライナとベラルーシーという土地で、小児甲状腺がんの発生率を調べました。ヨウ素というのは放射線を出して8日経つと半分に減ります。さらに8日経つと半分に減ります。もう8日経つとさらに半分に減ります。80日経つと1/1000以下になるので、影響はないという状態になります。

事故が起きたのは1986年の4月。そこから80日というと8月にはヨウ素の影響はなくなっていたはずです。10年後くらいに被害が出るとしたら、1996年くらいを境にして、下がっていくべきですよね。ところが小児甲状腺がんは、事故当時まだ生まれていなかった子供たちにまで広がっています。私が思うに女性が持っている卵子のせいではないかと考えています。卵子というのは女性が胎児だって時点にできます。事故当時は生まれたての子供だった子が、自分が母親になって産んだ子供に異常が出ています。胎児の時点で卵子が傷つけられていたのだと思います。

いま福島第一原発の周辺で私が逃げて欲しいのは若い女性、子供たち、妊婦さんたちです。その人だけの影響に留まらないからです。その次の世代にも影響を及ぼす可能性があるからです。

危機感を継続する~雨風、その時々の状況を見極める

それからもう1つ。三陸海岸にみんなでボランティアに行こうという話があります。いまはよいのです。基本的に北風の日が多いですから。でも、このあと南風に変わるんです。福島原発の放射能が北の方に飛んでいく可能性があります。三陸海岸は津波の被害に加えて、放射能の被害も浴びる可能性があります。

雨が降ると地べたに落ちて地べたからも放射線を出します。不幸なことに人間の生殖器は全部下を向いてついているので、そこに放射線を浴びてしまうことになるのです。ボランティアに行くとしても、若い人には行って欲しくないんです。年寄りが行くべきかも知れません。

放射能は雲でもないし煙でもありません。いまここにある空気だって放射能汚染されています。でも、見えません。しかも風に乗って流れるものですから、汚染されるのは10キロ圏内とか20キロ圏内とかではないのです。そのときにたまたま風が吹いていて放射能が流れた地域、たまたま雨が降ると雨が解けて土壌を汚染します。福島市の場合は、不幸なことに雪が降ったのです。雪が積もると雪かきをしますから、雪は一定の場所に積んだままになります。

東京で放射能が降った日の翌日、水道の水が210ベクレルになりましたが、あれは雨だからどんどん流れていったわけです。でも雪だとそこに残ってしまうわけです。解けるまでそこにあるだけでなく、解けた後も土にしみるわけです。汚染がなかなか抜けていかないことになります。

南相馬市は20キロ圏内でした。危険だからどこかに避難しなさいということになり、自主避難になりましたが、どこに避難したかというと福島市です。放射能の薄いエリアから濃いエリアに逃げることになったのです。ちゃんと伝えていないからそうなったわけです。

東京電力の話では原子力発電所にフタをする、フタは6月にできるだろう、早ければ9月にフタができるだろうというわけです。9月まで放射能が出るということです。いま一番多いのはヨウ素ですが、半減期を考慮しても今年一杯は放射能とお付き合いしなければならないというわけです。

でも初めの頃はマスクをしている人は多かったけど、マスクをする人が少なくなってきました。事態は変わっていないのに危機感が失せたのです。これが危険なのです。今年一杯はずっと危機感を持続しないといけません。

福島市内の小学校の汚染度を調べると、学校区域にも関わらず、放射線管理区域と同じレベルのところがいくつもあります。放射線管理区域というのは何かということですが、レントゲンを受けるときに入る場所です。学校のレベルが放射線管理区域かそれ以上のレベルになっているのです。

ちなみに医療機関では放射線管理区域に18歳以下の人は入れてはいけないことになっています。それなのに小学校の校庭がそのレベルなのです。これを放置したどころかもっとひどいのは基準を緩めたことです。これまで日本の基準では1年間に1ミリシーベルトしか浴びてはいけないという基準だったにも関わらず、20ミリシーベルトに変更しました。

放射能の被害は確率的影響ですから、のちのち20倍の被害が出かねません。それをOKしただけでなく子供にもOKとしたわけです。その理由を聞いた人に、福島市は29万人もいるのに全員を避難させることはできないだろうという返事が返ってきました。避難して欲しいと正直にいうべきではないでしょうか。これを放置することでのちに被害が出ることになります。

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