識者に聞く

アースデイ東京2011「アースデイトークステージ」Part 2:自然エネルギーへの転換は夢物語ではない

未来バンク事業組合 田中優

発電所の1/4を止めても大丈夫~1年の半分はお休み!

日本の電気消費は夜少なく、昼多いという状況です。この上下の波がとっても激しいのです。その結果、発電所は平均すると58~68%しか動いていません。1年の半分はお休みしているのです。ドイツや北欧では72~80%動いています。なんでそんなに動かせるのか。上下の波をなだらかにしただけなのです。日本もドイツや北欧のように電力消費をなだらかにしたらどうなるでしょうか。発電所の25%が減らせることになりました。日本の発電所の1/4を止めることができるのです。

いま日本では原子力発電所の設備量は22%ですから、原子力がなくてもやっていけるのです。むしろできるのにやっていないことの方が問題です。

夏の電力量を減らす欧米の工夫

フランスは夏の平日の昼の電気料金を11倍も高くしています。イギリスやアメリカのカリフォルニアではそれぞれの時間帯の電気料金を株式市場で売買しています。それで一時期200倍も値上がりしたこともあります。そのおかげでピークの電気消費も大きく減りました。

アメリカにはもっと素敵な仕組みがあります。電気料金を安くしたいという人には、家につないでいた電線を2本に分けてくれます。そのうちの1本にエアコンをつなぎ、残りの1本に他の電気器具をつなぎます。電気消費が増えると、電力会社がエアコンの電気を自動的にカットします。そうしたら暑いと思うでしょう。でも5分しかカットしません。12軒契約者がいれば、5分ずつだと1時間消すのと同じです。私の友人が鹿児島の営業中の喫茶店で実験をやりました。30分に1回5分ずつエアコンを切ったのですが、誰ひとり気づきませんでした。

自然エネルギーは夢物語ではない~隠された情報データ

2010年、アメリカで原子力発電所の値段が上がり、太陽光発電の値段が下がりました。アメリカでは原子力発電よりも太陽光の方が安くなっています。2009年、ヨーロッパとアメリカでは自然エネルギーが最も拡大した発電所になりました。特にヨーロッパでは新設の発電所の6割は自然エネルギーでした。

風車なんか大したことないと言わせようと、東京電力がある調査を掛けました。

東電管内の海に風車を並べたらどれくらい発電できるか調査をしたら、結果は東京電力の電気を全部まかなえるほどでした。東京電力はこのデータを公表しないでくれと言っています。風力発電は、強い風が吹く北海道、九州、東北ではさらに有望です。

日本の海はいきなり深くなるので、ヨーロッパのように浅瀬に風車を立てるのは難しいという課題があります。ところが九州大学の先生がカーボンファイバーの風車を海に浮かべて発電する洋上風車を開発しました。これがいま世界でもっとも注目されています。ところがこちらには補助金がでません。

原子力には1年間に8,000億円も補助金が出ています。神戸大学の先生は洋上の波力発電装置をつくりました。いかだが波で揺れるたびに真ん中のジャイロが回転して発電する仕組みです。道路の脇の小川で発電する小規模水車も実用化しています。4.5メートルの長さで4人家族の家1軒が自給できます。でもこの電気は電力会社が買い上げません。

日本では電力会社が送電線を私有化しています。1企業が電気を独占し、勝手に関所をつくっているわけです。お前は通さない、お前は金を払えば通してやるとかやっています。

今回の事故で電力会社が住民への賠償金の肩代わりということで国に借金を負うことになりました。この借金のカタに電力会社の送電線を国が取り上げればよいと思います。自由利用の原則に戻すべきです。ヨーロッパではそれが進んでいます。ドイツではとても有名な電力を配電してくれる会社があります。その名前はグリーンピースです。グリーンピースが地域で電気を販売しているわけです。

日本だけが10ある電力会社以外の発電、送電、配電を認めていません。

異常に高い電力会社の広告宣伝費

もう1つの取り上げて欲しいのは広告宣伝費です。2007年ですが、企業の広告宣伝費の18位が東京電力です。前の年は16位でした。この年の金額が286億円。日本には10個の電力会社があり、業界団体である日本電気事業連合会があります。天下り先となる独立行政法人が20以上あります。そこも広告宣伝費を使っています。さらに政府広報があり、ついでにいえばACもあります。あそこにも電力会社がお金を出しています。ACのCMに「デマを信じないでください」というのがあります。

長崎大学の先生が福島県で100ミリシーベルトまで浴びても大丈夫ですと語っています。子供は外で遊ばせてもいいですとも言っています。これこそデマではありませんか。国際基準だと1ミリシーベルトしか浴びてはいけないわけですから。この先生がNHKにも出て、みんなに話をしています。

電力関係の広告宣伝費は1,500億円を上回るといわれています。あのトヨタ自動車が1,054億円、その1.5倍です。なんと日本最大の広告のスポンサーは電力会社なのです。この広告費がテレビ、ラジオ、新聞の口封じをしています。民間のメディアは広告宣伝費で成り立っています。先日、大阪のあるテレビ局で原発についてきついことを言う番組がありました。日本電気事業連合会はその局のスポットのコマーシャルを全部止めました。

みなさんは正しい理解をしていないから研修を受けましょうといって、テレビ会社の役員や職員を集めて正しいレクチャーをしたというのです。その後にスポットコマーシャルは復活しました。こんなことをやるから日本はおかしくなるのです。これでは暗黒社会です。今回莫大なカネを国が立替払いするわけですから、電力会社から広告宣伝費を取り上げて、福島で悲惨な目にあっている人に届けましょうよ。

命がけで原子力発電所に依存する時代ではない

省エネ製品が伸びたため、努力、忍耐は一切せずとも、家庭の中の電気の消費を半分に減らすことが可能になっています。買い換えるときにきちんと省エネ製品を選んでもらうだけで、そこまで減らすことができます。

いま普通の家庭の電気は8畳ほどの大きさの太陽電池で賄うことが十分可能になっています。実は先進国の中で日本は一番省エネを徹底してきました。日本人はヨーロッパの2/3、アメリカの1/3しか電気を消費していません。余った電気をバッテリーでプールする、そのバッテリーを電気自動車に入れて使うこともできるし、夜になって電気が必要であれば、そこから電気を取り出すこともできます。家で発電する電気だけで足りるという時代がもうすぐ来ます。

バッテリーも日本の技術が世界でもっとも優れています。15年前にできているスーパーキャパシタや2年前に東芝がつくったSCIBというバッテリー技術を使えば、バッテリーに蓄えた電気の8割以上が使えて、マイナス20度になっても性能が落ちません。フル充電までに5分しか掛かりません。どちらも寿命は15年以上です。

時代はここまで変わってきています。命がけで原子力発電所に依存する時代ではありません。

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