識者に聞く

アースデイ東京2011「アースデイトークステージ」Part 2:自然エネルギーへの転換は夢物語ではない

未来バンク事業組合 田中優

4月23~24日の両日、東京・代々木公園で開催された「アースデイ東京2011」から、24日に行われた田中優氏による講演から、後半は電力不足といわれるなかで隠されたデータについてなど「自然エネルギーへの転換は夢物語ではない」をお届けする。

 

 

 

 

 

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未来のための電気の話

よく発電所を新たにつくろうとか自然エネルギーに変えようという話が出ます。その前に重要なことが1つあります。電気の消費を減らすことです。実は電気には大きな欠点があります。それは貯めることができないということです。

未来バンク事業組合 田中優氏

いま使っている電気はいま発電したばかりの電気と考えて間違いはありません。

電気には一日の電気の消費を見るとピークがあります。電力会社はこのピークのところに合わせて発電所を建設します。このピークは1年中毎日出るのかというとそうではありません。1年間8,760時間の中で、10時間以下しか出ません。

 0.1%しかピークは出ません。だったら発電所をピークに合わせてつくるよりも、0.1%のピークを避けた方が合理的です。

東京電力管内では、「でんこちゃん」が出てきて、みんなに節電を呼びかけています。「電気を大切にネ」と呼びかけていますよね。

家庭の電力消費は1/4

実は家庭の電気の消費は電気全体の1/4です。しかもピークの時間帯である午後2時や3時ごろには家庭はわずかしか電気を使っていません。わずか9%ほどです。91%は家庭以外の事業者が消費しています。「でんこちゃん」は作業服を着て、事業者に向かって「電気を大切にネ」というべきなのです。

なぜ企業はこんなに電気を使うのか考えてみました。家庭の電気料金は使えば使うほど料金が高くなるように設定されています。ですから電気を使わないよう省エネに努めます。一方の事業者の方は基本料金が高くなっています。電気の値段は一定なので、使えば使うほど割安になるカーブになっています。

事業者の電気料金制度は使うほど有利になっている

事業者は電気を消費すればするほど得します。消費の多い月に事業者は何をすべきか、もっと電気を消費すればよいのです。そうすればコストが下がりますから。使えば使うほど高くなる電気料金に変えるだけで、事業者の電気消費は3割以上減らせると私は思っています。

企業はいま現在導入すればたった3年で元がとれる製品を導入していません。使えば使うほど安くなる電気料金ですから、イニィシャルコストを掛けてまで省エネに努める必要はありません。

事業者にも使えば使うほど高くなる電気料金制度を入れるべきです。電気の使用量を減らしたらものすごく得します。あっという間に企業はLEDなどの省エネ製品に入れ替えます。私の判断では5割くらい減るのではと思っています。最低でも3割は減ると思います。たとえば白熱灯をLEDに変えるだけで、消費電力は1/10から1/20に下がります。

現実のデータでそれを検証してみましょう。東京電力—世界最大、そして日本の1/3の電力を供給する電力会社ですよ— が2003年夏のデータを開示しています。その日の最高気温と最大電力消費を調べると東京電力のピークは夏場の平日、午後2~3時の間で気温が31度を超えたときに出ています。このときに産業の電気を高くするのはどうでしょう。

なぜ、東京電力がこのデータを出したかというと、前の年の2002年に原子力発電所で事故隠しをやったからです。それを内部告発され、告発者はクビになりました。東京電力は全部の原子力発電所を止めなければならなくなりました。そのとき皆さんに節電してもらうために電気予報というのを出すことになり、このデータが明らかになりました。

私はこのデータをダウンロードして、いまの定理を導き出したわけです。それを東京電力の企画部でプレゼンする機会もありました。最初はいやな顔をして聞いていましたが、途中から一所懸命にメモを取り出して、最後にこのパワーポイントをくれませんかとまで言われたので差し上げました。

東京電力は早速対策を取りました。それ以降ピークのデータは一切公表しなくなりました。いつもこうした対策をやってきた結果、いまの福島のような事故につながったと思っています。

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