この町で健やかに暮らし、安心して逝くために在宅療養を考えるこの町シンポジウム [前半]

不安や孤独感を和らげた訪問看護

秋山 訪問看護は、外来の通院を手伝い、自宅にも訪問しながら、ということでしたが、松浦さんいかがでしたか。

松浦 痛み、気持ち悪さ、ちりちりするような不快感、を行くたびに聞いていました。マッサージをしながら、お話を聞くと大体20分くらいで治まりました。身体のつらさもありますが、基本は気持ちの不安や孤独感が症状を悪くしていると思いました。それと同時に薬を飲むとよけいに具合が悪くなるという問題がありました。その不安が強いため、初回は同席して飲んでいただき、20分ほどは一緒にいて具合が悪くならないですねと確認し、これは大丈夫な薬だと体験してもらいました。そうしないとせっかく出ている薬も自分に合わないので飲まないと拒絶されかねません。ご本人はテレビの番組や知り合いの情報に左右され、この薬は飲むと胃が悪くなると仰っていました。できるだけ誤解を解くように関わっていました。

秋山 胃が悪くなるというのはステロイドのことですか。

松浦 ステロイドもそうですが、それ以外の薬についても胃が悪くなるといっていました。ステロイドについては特に不信感が強かったようです。

秋山 川畑先生、癌の患者さんにはステロイドの処方がよく出るのですが、誤解を解く意味での発言はありませんか。

川畑 吉野さんにステロイドを使ったのは2回目の入院のときからです。それ以外の薬でも胃が悪くなるとか、吐き気がするということは仰っていました。外来ですから調整はなかなか難しいところがあります。ステロイドはすごくよく効く薬ですが、副作用もあります。筋力低下とか骨がもろくなるとかありますけども、適切なタイミングのときに適切な量を使うと有効です。この薬の効能は、炎症を和らげたり、食欲を増したり、で使うことが多いのですが、癌は必ず炎症を伴いますので、ステロイドを使うと癌で腫れている状態が治まるという効果もあります。總子さんの場合は食道癌ですから、モノが通りにくくなりますので、ステロイドを投薬したあと、おにぎりを食べたり、かりんとうを食べたりができるようになりました。

初めての嘔吐、そして入院へ

秋山 やがて外来通院をしながら初めての嘔吐があり、そこで入院することになります。この入院についてご家族はいかがでしたか。

吉野 やっと受け入れる病院が見つかって安心しました。

秋山 大学病院には入れないし、厚生年金病院もすぐには受け入れなさそうだということで、祐二さんは密かに他の病院も当たっていたそうですね。ただ、私たちが対応しているのに裏でごそごそやるのもすまないということで、小川さんに話されました。

小川 祐二さんの気持ちはよく理解できました。不安な心境だったと思います。祐二さんの気持ちということで白十字訪問看護ステーションに伝えました。

秋山 私たちとしては、それを聞いても機嫌を損ねることはありませんでした。患者さんと家族の気持ちとしては、どこかにつながっていないと安心できないという問題がクローズアップされています。バックベッドが安心の材料につながるというあたりで、木下先生一言ありましたら。

木下 在宅療養支援診療所などができて、癌難民の受け皿にはなりつつあります。ただ、治療よりもケアが中心のときの選択肢は増えているもののまだまだの状況です。(後半に続きます) (2011年6月)

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◎在宅療養を考えるこの町シンポジウム [後半]
http://csr-magazine.com/2011/07/05/analysts-zaitaku-part2/
 
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「この町シンポジウム」企画運営:NPO法人「白十字在宅ボランティアの会」
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