識者に聞く

ただ“被災者の心に寄り添う”ために。

日本災害救援ボランティアネットワーク 渥美公秀 教授に聞く

関西と東北が連携して支援する「チーム北リアス」

Q.今回の東日本大震災後は、岩手県の野田村を拠点とされていますが、キッカケは?

渥美:2つの理由があります。一つは、震災直後に災害救援のNPOが東京に集結してディスカッションを始め、主要団体の志の高さも知っていましたし、東京を通じて支援に参加させていただく方法もありましたが、(団体が多すぎると)いわば「会議は踊る」というか、自分たちもモミクチャになってしまうなあという気もしました。

一方で、実際に支援が始まった場合、福島県、宮城県と順番に北上しますので、なかなか岩手など北の方まで到達しにくいとも予測できました。そのうえ、岩手県八戸市は1995年の阪神大震災の際に子どもたちを預かっていただいた団体があるなど西宮市との深い関係がありました。そこで、まずお世話になった八戸へ、八戸でより震災が厳しいと聞いた久慈市、さらに野田村へと北から南下しました。3月21日に野田村の被災状況を見た時にはもう絶句して、どこか1ヵ所ならば野田村を拠点にと。

Q. 今回の東日本大震災における災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD)の活動には3つの側面があると伺っています。

渥美:我々が現地で直接に被災者支援をするのに加えて、今回の震災では福島から新潟に避難された皆さんへの避難者支援があります。(新潟地震でお世話になったから)今度は自分たちがお返ししたいと、震災直後に小千谷市では200軒もの方が手を挙げました。民泊といって一般の家庭が被災者の方を泊めるんですが、私が通っていた小千谷市塩谷でも12人の方を受け入れるという話も入ってきました。また、刈羽村では準備する間もなく被災者の方がいらして、布団や日用品も足りない、行政からの支援金の決済も待てません。そこで、我々NVNADに頂いている支援金から費用を送らせていただきました。

3つ目と言いますか基盤の活動として、地元の西宮では学生を中心に募金活動を行っています。(震災を経験した西宮では)100円玉や500円玉はなくて、お札を握りしめたお婆ちゃんが募金箱にお金を入れるのではなく、学生の手を握って泣かれるんですよ。「なぜ、泣いているのかわかる?」と若い学生たちに話をしながら、頂いた大切なお金を、被災地を直接支援する資金に使わせていただいています。

Q. 日本災害ボランティアネットワークは「被災者の心のケア」をテーマに活動されていると伺っています。

渥美:我々が「心の問題をやりたい!」が先ではなくて、自分たちが出来ることを考えていったら、それを世間から「心の問題を扱う」と呼ばれているということだと思います。 

基本の活動は、やはり一人ひとりの方と話すことですね。ガレキ撤去など(目の前の景色が落ち着いていく)作業も非常に大事ですし、個別訪問も大事にしています。以前に学生さんと行って印象的だったのが、被災されたお宅にいた愛犬を「可愛い茶色の犬ですね」といったら、白い犬だと。泥を洗えなかったんですね。そこで一緒に洗わせていただいたら、本当にとても喜んでくださった。そんな、何でもないことを、アチラコチラの家でさせていただく。明日も関西から野田村に20人ぐらいの学生が来るんですが、半分ぐらいの学生たちは既に親しくなった被災者の家があるんです。そうした家のお婆ちゃんも「あの子はちゃんと大学行ってる?」とか「今度いつ来るの?」だと気にしてくださる。それでも十分に絆が出来てきますよね。 

Q.災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD)も参加されている「チーム北リアス」について教えてください。

渥美:我々が東北の被災地に来てみての実感は、まず「遠い」。関西から地理的に遠いというのもありますが、野田村では誰々は八戸や弘前など東北地域内でのつながりの話ばかり、そもそも関西人が東北で特に好かれる存在でもないですし(笑)、我々だけで支援を続けるのは、(被災者の心理的にも)(我々の地理的にも)距離が遠いわけです。 

野田村に入る前にお目にかかった八戸、弘前、久慈の皆さんも支援したいと仰っている、ならば、頻繁に野田村にいらっしゃることが出来る東北地域の皆さんと、時々やってくる我々とで連携しましょうと。しかし、八戸には八戸の皆さんの、弘前には弘前の皆さんのやり方があるので、互いを拘束したり、ましてや批判したりしないで緩やかに連携するネットワーク、そこで考えた名前が「チーム北リアス」です。

弘前大学などのチームオール弘前、八戸工業高等専門学校や八戸市社会福祉協議会などの東北地域の団体、我々日本災害救援ボランテイアネットワーク、京都大学など関西の大学ネットワークに加えて、個人や被災地の皆さんも加盟されています。

◆チーム北リアス、主な加盟団体

・チームオール弘前(弘前大学、弘前市ボランティア支援センター、弘前市社会福祉協議会、動こう津軽)

・八戸工業高等専門学校、八戸工業大学、八戸市社会福祉協議会、八戸市JC

・京都大学、大阪大学、関西学院大学、首都大学東京

・日本災害救援ボランティアネットワーク、大阪大学すずらん、Japan Contemporary Dance Network(JCDN)、
陽だまりIWATE、チームTOMODACHI

 

「チーム北リアス」が開催した野田村での青空市

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