識者に聞く

環境保全団体WWFジャパン中間報告──②脱炭素社会、“決め手”は省エネルギー!(後半)

株式会社システム技術研究所所長 槌屋治紀さんに聞く

WWFジャパン2050年シナリオ

まず、再生可能な資源からの電力供給があげられます。水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスを利用して、1時間ごとのダイナミックシミュレーションにより電力需要とのバランスをとり、余剰電力、必要な蓄電容量を計算します。やってみますと風力や太陽光は変動しますので、余剰電力が出るケースもあれば不足が出ることもあります。それを揚水発電とバッテリーを組み合わせて、計算します。

エネルギーの最終用途のうち、電力で供給しているのは3割弱です。電力の3倍、他の用途にエネルギーを供給しないといけません。電力以外ですと、太陽熱、バイオマスの利用、ソーラーアシストカーなどがあります。電力以外の部分についても再生可能なエネルギーでまかないます。自動車の屋根に太陽電池を貼ると1年間の走行エネルギーの3割くらいはそれでまかなえます。それがソーラーアシストカーです。さらに再生可能な電力供給の余剰部分から水素を生産して、高温熱需要や電気自動車では長距離を走れませんので燃料電池車に利用します。

日本で再生可能な電力供給の可能性がどれくらいあるか調べてみました。2008年の例で簡単な表をつくると、現状の規模でいうと水力発電が2,000万kWです。太陽光発電は280万kW(現在350万kWになっていると思う)、風力発電が216万kW、バイオマスは10万kW、地熱発電は50万kWです。

それが2050年ではどれくらいの可能性になるでしょうか。

水力発電が2,760万kW、太陽光発電は諸説あるが50,000万kW~100,000万kWくらい。ここでは間をとって70,000万kWにしています。風力発電はこちらも諸説あって5,000万kW~7,000万kW、ポテンシャルからいうともっと大きな数字もあるが、ここでは30,000万kWにしています。バイオマスは1,588万kW、地熱発電は600万kW~1,200万kWあります。地熱はいろいろな規制を外せばかなりやれます。2050年は1,178万kWも可能だと思います。2050年の電力需要が現状の60%になるとしたら、そのうち太陽光発電を50%、風力発電を20%の供給構成にした場合を示しています。太陽光の発電は朝の7時から17時くらいまで、風力は24時間ほとんどフラットですから、特定の時間に強いというものではありません。風力を12カ月で見ると、太陽光は夏に強いのに対して、風力は冬に強いのが分かります。

わが国の電力の送電網を見ると、沖縄以外は全部つながっています。それぞれの電力会社の融通電力網のパイプの太さは限定されていますが、2050年までには日本中が1つの送電網になっていると思われます。沖縄を除く電力会社の月別の電力構成がこの図ですが、これと一日の時刻別電力需要のパターンを与え、24時間のシミュレーションをするとこのようになります。現状のパターンを使っているので、2050年には変わっている可能性があります。

トップへ
TOPへ戻る