識者に聞く

環境保全団体WWFジャパン中間報告──②脱炭素社会、“決め手”は省エネルギー!(後半)

株式会社システム技術研究所所長 槌屋治紀さんに聞く

 この図(29)は、再生可能エネルギーによる月別電力供給の構成事例です太陽光発電50%、風力発電20%、水力+地熱+バイオマスで25%、その他のバックアップが10%となっています。ただし、この図を見ると3~9月が太陽光発電の比率が高いのに対して、9~3月が風力発電の比率が高まっています。 次の図はある3日間の再生可能電力供給パターンをシミュレーションしたものです。24時間が3回繰り返されていますが、赤いところが太陽光発電、これは需要を上回っていますが、上回った部分は蓄電します。緑のところが風力発電、水色のところが水力発電です。水力は午後の1時ごろから立ち上げていって、太陽が沈む頃にピークにします。つまりコントロールパワーとして使っています。いちばん電力不足が心配されるところが分かれば、そこに水力を使う方法がよいでしょう。それを予測する機能までは入れていません。 

紫色は、蓄電池のバッテリーから放電するものです。このような形で電力を供給します。 2050年に、2008年の60%の電力を供給するにはどれくらいの再生可能エネルギーが必要かというと、太陽光発電が2億4,000万kW、風力発電2,879万kW、水力発電2,760万kW、地熱発電482万kW、バイオマス518万kW、これにガス火力発電などのバックアップ電力が10.7%あって、余剰電力が4.6%、バッテリー損失は行き返りで10%取りましたが、トータルのエネルギーの1.5%です。発電力量は、100%に対して106%とし合計量で613,641GWhとなります。 

余剰分をもっと増やしていこうという場合は、太陽光と風力を増やしていけばよいのです。あるいは地熱を増やせばよいのです。この余剰分で電力以外のエネルギーを供給するものとします。

このシナリオが100%可能かどうかについて私自身は現時点でいくつかクリアしなければならない課題も残ると考えています。たとえば、電力を使う鉄鋼業の鉄生産で、風力発電でつくった水素で還元するということに対しては、2050年までにできるかどうか分かりません。2100年にはできると思いますが、あらためて計算したいと思っています。

いずれにしろ、エネルギー文明というのは、地下から化石燃料を掘り出して、CO2を排出し、いつの日か化石燃料を枯渇させるという“狩猟型”から、地上で太陽のエネルギーを受け止め、太陽光発電、太陽熱、バイオマス、風力などを永続的に利用する“耕作文明型”に変わるだろうと思っています。その新しい一歩を日本が踏み出せたらよいと考えています。(2011年8月取材)

※   本講演は、WWFジャパン主催の「省エネルギーシナリオ発表会」における株式会社システム技術研究所所長 槌屋治紀さんの報告を本誌編集部でまとめたものです。文責は当編集部にあります。

「脱炭素社会、“決め手”は省エネルギー!」前半はコチラ↓               
http://csr-magazine.com/2011/09/02/analysts-wwf/
 

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