識者に聞く

新しい働き方をつくろうよ !

東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合 理事長保坂弘子さんに聞く

男性で20.1%、女性で54.6%。最新の非正規雇用率である(2011年労働力調査)。だが、仕事を分担するワークシェアリングはほとんど進展を見せていない。仕事がもたらす“やりがい、生きがい、働きがい”を自らの手で育て、広げていこうという組織がある。東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合だ。保坂弘子理事長に話をうかがった。

 

Q1 ワーカーズ・コレクティブはどのような目的で生まれ、どのような活動を行っている団体でしょうか。

 

東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合 保坂弘子理事長

保坂 地域で必要なもの、必要なサービスを事業化しようと生まれた働く人の協同組合組織です。東京では、2011年11月末現在で50の組織があり、約600名の仲間が思い思いの事業を立ち上げ、継続しています。

 事業内容は、惣菜・仕出し・弁当・高齢者配食、高齢者・障がい者施設での食事づくり、パン、クッキー等の製造販売業、喫茶など“食”に関連する事業、保育所などの運営、葬儀コーディネート事業、生協業務受託としての配送、店舗運営、施設管理、生協連の生地を使用したイージーオーダーメイドスーツの採寸、さらにリフォーム・布製品製造販売、企画編集、健康体操指導など多岐にわたっています。

 さらに赤ちゃんからお年寄りまで、ハンディを持つ人たちも自分らしく暮らせるよう地域での相互扶助のしくみとしてのワーカーズ・コレクティブも東京に33団体あります。

 Q2 協同組合ということですが、働き方の提案も行っていますよね。そもそもどのような社会背景から生まれたのでしょうか。

保坂 いろいろある生協の一つに「生活クラブ生活協同組合」があります。生活する人自身が問題を解決することが新しい社会をつくる運動になる、という思いの中で1960年代の後半から活発な活動を続けてきました。

1980年代に入り、今後訪れる「全員参加型労働社会」を予測して地域でだれもが働ける仕組み「新しい働き方としてのワーカーズ・コレクティブ」が提案されました。

 ワーカーズ・コレクティブは、①自分たちが住んでいる地域に必要な機能を事業化する ②自分たちで出資・運営し、働く場をつくる ③営利を第一の目的としない、などを原則としています。

東京にワーカーズ・コレクティブが誕生したのは、1982年の神奈川に続き1984年ですが、今では北海道から熊本まで全国の都道府県に組織がつくられています。相互扶助の精神で自立し、相互責任、民主主義、平等、公正という価値を大切しながら、多種多様な活動を展開しています。

Q3 保坂さんはどのような経緯でワーカーズ・コレクティブに関わるようになったのでしょうか。

保坂 子育てに専念した頃、子どもたちに少しでも“安心・安全な食品を”と思い、生活クラブの活動に参加しました。10年くらいして子育ても一段落した頃、生活科学運営㈱が地元の荒川区で有料老人ホームを建設することになり、施設の厨房業務委託をワーカーズ・コレクティブで実現できないかとの提案が生活クラブを通してあり、その説明会などに関わる過程でワーカーズ・コレクティブの活動を理解するようになりました。2003年に、ワーカーズ・コレクティプ「ひぐらし」を立ち上げ6年間代表を務めました。2005年からは東京ワーカーズ・コレクティブの理事を2010年度より理事長を務めています。

有料老人ホームや保育施設への食事サービスなどを事業としているワーカーズ・コレクティプ「ひぐらし」の活動。

2011年末にはお相撲さんも参加して餅つき大会も行われた。

 

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