識者に聞く

自転車をもっと暮らしの中に

NPO法人自転車活用推進研究会に聞く

Q6 「自転車活用推進研究会」が考える自転車活用に向けたポイントについてもお聞かせください。
小林 自転車そのものの普及はわが国全体で7,000万台から8,000万台とかなりの数を誇っています。問題はその自転車が中途半端な活用のままだということです。
東京を見ると日本橋から主要な幹線が四方八方に出ています。まず、主要ないくつかの幹線道路に私たちは自転車専用レーンを設けたいと考え、関係機関に働きかけています。道路に白線を引くだけなら、たいした予算は必要ありません。これまで公共投資に毎年数十兆円かけてきたことを思うと、費用対効果は高く、無駄にならない政策だと思います。

超党派の議員さんからなる「自転車活用推進議員連盟」も私たちを後押ししてくれていますが、政局の方が忙しく、自転車や歩行者の政策はどうしても後回しにされがちです。自転車の活用で社会が大きく変わるという実感を育てることが大切だと思っています。

Q7 理事の内海さんは自転車通勤の実践者だそうですね。自転車通勤を長続きさせるポイントがあったら教えてください。
内海 自転車活用推進研究会の先輩に疋田智さんという自転車ツーキリストという言葉の命名で知られる理事がいるのですが、7年前に彼の本を読んだことが自転車通勤を始めるきっかけでした。それまでは自転車で会社に行くということなど考えたこともありませんでした。自転車で通勤してみると、家と会社がつながっているという実感が日増しに高まりました。健康によいだけでなく、精神面でも効果があると思いました。
1か月が経ち、3か月が経ち、1年2年で違和感が全く無くなりました。もちろん、雨の日などは普通の通勤を続けました。『これが男のやせ方だ!』というこの本は私の体験をまとめたものですが、有酸素運動である自転車通勤と無酸素運動であるロープ体操などを始めから半年間で88.4kgから68.3kgまで落ちました。最近は筋肉質の70kg以下をキープしています。
続けるポイントは2つ。無理をしないことと、会社にきっちり届け出ることです。万一の労災の適用の問題もありますから…。

自転車活用推進研究会が自転車メーカー各社と一緒に展示を行った2011年12月のエコプロダクツ展

Q8 4月はわが国では新しい年度がスタートし、学生も社会人も新しいチャレンジを始める時期です。自転車利用の心がまえなどについて、あらためてメッセージをいただけますか。

小林 自転車に無関心だった時代に比べれば、震災後は環境にやさしい自転車に人々の目が向けられています。新入生や新社会人の皆さんに自転車の活用をうながす啓発活動を続けつつ、引き続き自転車の位置づけの必要性を訴えていきます。
問題はハードとソフトの融合です。警察庁は昨年、自転車は車両の一種だというあたりまえの認識を再強調する姿勢に転じました。まず、クルマのドライバーにこの認識を徹底させることが最優先課題です。また、自転車が車道の左側を走るとしても、現状ではクルマの路上駐車があとを絶ちません。どうやってそれを取り締まるのか、数少ない警察官でできるのか頭の痛い問題です。

私は、小学校1年生の入学時に自転車のルールを学ばせてほしいとお願いしてきました。しかし、文部科学省はいまだに重い腰を上げようとしません。子供たちは街の中で生活しながら生き抜く力が試されています。自転車でいかに安全に走れるかは格好の教育だと思うのですが…。

もちろん、自転車レーンの整備や交差点での誘導路面標示など自転車を活用しやすい街づくりと、シンプルで分かりやすい交通ルールの整備が欠かせません。特にルールは、子どもや高齢者、外国人などみんなが守れる常識的なものに変えていく努力を、政治家たちに求めていきたいと思っています。
(2012年4月)

○お問い合わせ
NPO自転車活用推進研究会
〒166-0011 東京都杉並区梅里2-6-3
TEL:080-3918-2932 FAX:03-6316-9170
http://www.cyclists.jp/

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